過去の戦争2
帝国本陣
「バカかお前は!!」
ガタイのいい老騎士が青年を怒鳴り付けている
「っせえわジジイ少しは黙るって事をしらない...」
老騎士の拳が青年の脳天に直撃する
「いってえ!」
「お前はそれでも騎士か!。敵を目前にして逃走とは、お前に誇りはないのか!!」
「ないわそんなの。だいいちお前が勝手に俺を騎士団に紹介したんだろうが」
「俺はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ!」
「誰もお前を親だなんて思ってないが?」
どこまでも眠そうな目をこする青年に、老騎士は真面目に説教をしていたが、これ以上は無意味だと感じたのか、深いため息を吐く
「続きは帰ってからだ。今は戦線に戻れ」
「はいはい。分かりましたよ」
青年は老騎士の話を流して、テントを出ていこうとし、入り口で駆け込んで来た兵士とすれ違って躓く
「第二防衛線が突破されました!。残りは第三防衛線のみです」
兵士は、慌てた様子で老騎士に状況を報告する
「何だと!?。つい数分前に第一防衛線が突破されたばかりだろう!」
「それが、前線の天候が悪く奇襲部隊に気づくことが出来なかったために、大きな損害が出ています」
「くっ」
老騎士は後ろにあるテーブルから水晶玉を取ると、それに向かって叫ぶ
「総員に告げる。至急第一防衛線に帰還せよ!」
老騎士は剣を取ると、テントの入り口に向かって歩きだす
「いいのか爺さん?。来る前に腰がどうとかって言ってたろ」
「今はそれどころではない!。このままでは軍が壊滅するのも時間の問題だ。陛下のためならば、この命惜しくもないわ!」
「ったく。分かった、爺さんは残れ。俺がやる」
「はあ?」
「何だよ。不満かよ。爺さんなら分かるだろ」
「.....仕方ないか。頼んだ」
「はいはーい」
「死ぬなよ」
「誰仕込みの戦闘技術だよ。自分の技術も信じられないようじゃ、俺より早くしぬぜ?.....あっ、ごめん確実に俺より先に死ぬか」
「お前ええええええ!」
老騎士が剣を抜いて、青年に飛びかかろうとするのを、周りの兵士が必死に止めにかかる
「おお怖い怖い。そんじゃ、行ってくるわ」
青年がテントを出ていくと、老騎士は剣を地面に置き、椅子に座る
「相変わらず減らず口ですね」
兵士が老騎士に話しかける
「はははっ!。全くだな」
老騎士は豪快に笑う
「昔からちっとも変わっとらん」
「にしても、孤児院暮らしの子どもが騎士になるなんて、初めに聞いたときは驚きましたよ」
「しかしどうだ。立派なもんだろう」
「はい。流石は団長です」
「そうだろう。当然のことだが、もっと誉めてくれても構わんぞ。ワハハハハハハ」
テントからは老騎士の豪快な笑い声が響く
第一防衛戦線
「一人も通すな!!我々で食い止めるんだ!」
兵士達は敵の奇襲部隊からの攻撃に必死で抵抗しているが、戦況は押されるばかりである
「よう、皆の衆。生きてるかー?」
「ルキアさん!!」
「皆、ルキアさんが来たぞ!。我々の反撃はここからだ!」
「まあまあ、そんな期待するなって」
ルキアと呼ばれた青年は首をならすと、持っていた大剣を鞘から抜く
「さあ行くぞ。総員、俺に続け!」




