処刑台上の詐欺師
俺は服を着て廊下へと出た。そしてそこにいたのはミュウナちゃんだった。まだ給仕の服を着ていた。とても似合っている。
「黒さん。少し時間よろしいですか」
もちろん俺は全然かまわないと答えた。
「ありがとうございました!」
律儀にも頭を下げてきた。頭が地面に激突するんじゃないかと思う勢いだったな。
「きっと私、黒さんと出会わなければ、今頃生きていないと思います」
俺は利用しようとしただけだ。彼女に利用価値があっただけだ。褒められるような理由などありはしない。
「だから、ありがとうございました」
だから礼なんて言わないでくれ。
「たまたまだ。俺の物にする価値があっただけだ」
俺は強めの言葉吐いていた。俺は何に怒っているのだろうか。
でも、何かにおびえていた少女はもうおらず、まっすぐに俺に目を向けていた。
「でも私は生きてます」
そして俺と手を両手で包んできた。とても暖かい小さな手だった。
「こうやって、だれかと接することだってできます。それを与えた、いや私に気づかせてくれたのは誰でもない、あなたです」
まっすぐな目立った。まったくどいつもこいつもまっずぐに俺を見てきやがって……。
「あのその、余計なこと言ったかもしれませんが、忘れてしまってください。私はこれで」
自分の言ったことに恥ずかしくなったのか顔を赤くして小走りで去っていく。
俺はゆっくりと歩き、そのあとを追っていく。
食堂に戻ってきた時だった。
「あんたミュウナちゃんが走ってきたけど変なことしたんじゃないでしょうね!」
「いえ!黒さんは何も悪く……」
「お嬢様、この馬鹿は今すぐ死罪にするです。もしくはちょん切るです」
「あらあら、何をちょん切るのかしらぁ、手伝いましょうか」
「むしろ風穴を開けたらどうだろうか」
「……ハム」
会話の中身は置いとくとして、どいつもこいつも俺に簡単に騙されやがって。
まったく仕方のないやつらだ。
「ミュウナは我所有物だからな。あんなことやこんなことまでしてやっ、ヅぁああああ!」
俺は飛んできた火をのけぞって回避する。変な声が出てしまったぞおい。
「さて火葬希望者もいるわけだし、今から処刑執行ね!」
このデカメロンめが、こうなったら揉みに揉んでこの世に素晴らしきものを持って生まれたことを実感させてやろう。
「お嬢様、お手伝いいたしますです」
このチビには教育が執拗だ。しっかりといろんな教育をしてやろうではないか。
「あらあらあらあら、切り刻んでもいいですかねぇ」
雲雀さんさっきからあなた怖いですよ。
「まて、リーア、そいつは私が丁重に葬り去ろう」
この堅物騎士め。まぁ堅物な分陥落させた後とのギャップがたまらんだろう。
「……ハムまだ?」
ハム頼んでやるからハムから一旦離れろココア。
なら、どいつもこいつもだまし続けてやろうではないか。それで俺は自分の望みをかなえてやろうではないか。
味方をも騙す最低なペテン師になってやろうではないか。
死んだ奴らのために。
目の前の『今』を生きている奴等のために。