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処刑台上の詐欺師  作者: 十参乃竜雨
第三章、『それは突然に……』
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関係ない


「1~3班は非戦闘員を安全なところまで誘導。そのほかは各自の判断で攪乱を続けるよう伝達。小毬は直属の部下数名を選抜して私についてきなさい」

「はいです!」

 私の中は非常に乱れていた。アイツが言ったことを素直に信じてしまいそうになる自分と、いつものように軽い口で言ったことと思う自分がいる。

 あいつが勇者?

 じゃあ、ほかの勇者一行はどうなった。

 じゃあ、なんでわざわざこんなことをしているのか。

 いくつもの疑問が頭の中を飛び交う。なんとか、現状を理解することができた思考で人を動かしていく。そんな時だった。

「いや~、盛り上がって……」

「そいつを捕まえて、小毬」

 小毬はジャスティに刃物を突き立て捕まえる。ジャスティは両手をあげて降参する。

「とりあえず、これはどういうこと?」

「これとはなにかな」

「あのバカが元勇者ってことよ」

「間違ってはいないよ」

 私はジャスティの目を見る、間違っていることを言っている人間の目には見えなかった。

「僕は勇者一行にあったことがあってね。話をしたこともある。その中に彼はいた。それが僕と彼の出会いだったね。で、有名な、悪の宰相を倒して以降なかなか会うことができなくてね。それ以降、黒君を除く他の者がどうなったかは残念ながら彼にしか分からない。」

 そして「でも」と言ってつづける。

「あるいくつかの事実で推測することはできるね。彼は何らかの原因で一人になった。いや、なってしまったのほうが正しいかな」

 私は黙ってジャスティのいうことを聞いていた。

「一人になった直後に君と出会ったというのが正しいだろうね、推測だけど」

 あいつと出会ってから長い時間を過ごしているがその間に、昔の知人が訪ねてきたことは一度もなかった。それを考えればもうほかの勇者一行は……。

「じゃあ、次は僕から聞こうかな」

 ジャスティが逆に質問してきた。

「彼の告白を聞いて君はどうするのかな」

 私は一瞬考えた。でもすぐに答えは出てくる。

「どうもしない。アイツは黒っていうことに変わりはない。勇者とか言ってるけど、こっちには関係ない話。これまで通りの関係。何も変わらないよ」

 私は今あの兵器を破壊するために動いている黒がいるであろう場所を見る。人垣で姿は見えないが、そこが騒ぎの中心であることは明らかだ。

「あいつには私のそばで生きて生きて生き抜いてもらうよ。どんなことがあろうとあいつには生きてもらうわ。それがわたし『だけ』を助けたあいつへの復讐だから」

 アイツが早く来て私の家族を助けなかったことに関してはもう割り切っている。時間が解決してくれた。でもそれを嘘でも言葉にしなければ家族、妹たちの死がただの記憶になってしまいそうで怖かった。

 私はただ、家族がいたっていうことをアイツにも共有してほしいのかもしれない。

「だから勇者なんて関係ない」

 私は指にはめている妹の形見をもう片方の手で握りしめる。

 もやもやしていたものが晴れた気持がした。もうやれることは決まっているではないか。

「野暮なこと聞いてしまったかもしれないね」

「その通り、時間の無駄だったわね」

 私は笑いながらそう言った。

「小毬」

「はい、お嬢様」

「私についてきなさい。私も久々に暴れたくなってきたわ」

 少しでも暴れてリスクを分散し、あいつに向かうリスクを少しでも減らすしか、中途半端な力しか持たない私にできることだ。

「あの兵器を起点として、4班は西、5班は北、6班は東、南は非戦闘員の脱出経路として開けておきなさい。小毬の班は私と遊撃で動くわよ」

 あとほかにも事細かな指示を伝える。

「あとそこのアンタは一人部下を与えてあげるから、ありがたく逃げなさい」

「はは、そうさせてもらうよ」

 ジャスティはそういうと私の部下に連れられて去っていく。

「さて、これが終わったらあいつをこってり絞りましょう、小毬」

「拷問器具を無償で貸し出すです」

「それは助かるわ」

 そう小毬と軽口をたたきながら喧噪のなかに突き進む。



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