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処刑台上の詐欺師  作者: 十参乃竜雨
第三章、『それは突然に……』
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感情が発露した人形


「さてさて、どんどんお前と俺の距離が近づいて行ってるんだがな。さぁ、どうするんだ?」

「クッ、こうなったらいけ」

 魔法兵器の周りにいる者たちを黒の元へと差し向けた。精鋭中の精鋭であろうか、ほかの兵士と違い、帯びている空気が違っていた。

「この者たちはほかの兵士とは違う。私と意思を同じくする者たち。かの国に復讐しようとする者たち。妻、娘、両親、恋人、大切に思うものを無残に殺された者達だぁ!ほかの兵士と一緒にするなよ!」

「笑わせるな」

 その瞬間、その兵士たちが一斉に飛びかかる。そのどの目も黒を仇を見るような目をしていた。しかし、黒は動ずることはなかった。

 兵士の刃は黒に届くことはなかった。

 むしろ勢いよく遠ざけられた。その持ち主の体ごと。

「復讐?そんな薄っぺらい物を志にしている者が、この我に勝てるとでも思うのか」

 その言葉に兵士たちが殺気だす。中に感情に任せて飛び出す者がいたが何かによって遠くへ投げ飛ばされる。

「…………そうそう、ハムは薄切りより厚切りにかぎる」

 そこにココアが黒のそばに現れた。

「あのココアさん。せっかくの空気をぶち壊さないでくれるかな」

「?」

 ココアは首をかしげて困った顔をする。それを見た黒はため息をついた。

「それじゃあ、ココア。あの復讐にとらわれた亡者どもをこの舞台から退場させるんだ」

「…………ん、了解」

 そういうと黒は前進し始めた。



 自分のことをよく知らない。覚えているのはご飯の後に白い粉を毎回飲んでいたこと。

 銀の髪の毛が延々に伸びていたこと。今はそうじゃないけど、一日経つ頃には腕の長さほど伸びていた。今みたいに髪は短くなかった。

 あと、自分と似た人が何人かいた。でも動かなくなると大人たちがどっかに持っていく。

 気が付くといつも一人ぼっちだった。

 でも大人たちはほめた。成功品だと。今でもなんでほめられたのか分からない。

 でも普通の刃物では切れない私の髪はいい商品になると言ってた。

 しかし、大人たちが喧嘩を始めた。自分が原因らしい。

 銀の髪はとても素晴らしいものらしい。髪を巡って大人たちが喧嘩をした。

 大人の人たちが減っていった。少なくなると大人たちは反省した。

 もう争わないように、私を処分するといった。

 大人たちは私を丸太に括り付けて、穴の中に私を放り込んだ。

 そこは真っ暗だった。そして、土が降ってきた。

 大人たちがなんでそんなことをするのかわからなかった。

 でもそれはすぐにやんだ。で、穴から引っ張り出された。

 そこにいたのは大人たちではなく、黒と雲雀といつもべたべたしてくるリーアだった。

 黒は言った。

『俺の物になれ』

 何のことをいっているのかわからなかった。すると、黒は笑いながら頭を掻いて言った。

『外の世界へこい。外は面白いぞ。こことは違って、面白いものがいっぱいある。おいしいものだっていっぱい食べれるしな』

 食べ物の話をしたので、おなかが減ってきた。なので私は『おなかすいた』と言った。

 それを聞いた黒は笑って何かを差し出してきた。

 黒い物体だった。食べ物と思えす困った。

 すると雲雀がその黒い物体を切って、渡してきた。

 中は外みたいに黒くはなかった。茶色だった。

 なんとなく食べれそうだったので食べてみた。

 その瞬間口の中に味が広がった。とてもおいしかった。

 いつも食べていたものが味のないものだとこのときわかった。

 とにかく幸せになった。

 それはハムというものだった。

 黒がついてきたらいくらでも食べさせてくれるというので、ついていくことにした。

 そしたら、面白いことがたくさんだった。いろんなことを覚えた。

 ほかには食事の後、黒が言う『薬』を飲むようになった。

 飲むようになって髪が伸びなくなって、その代わりに体が大きくなるようになった。

 黒はそれが『普通』といった。

 でも、その『薬』はハムが百個あっても買えないものだってわかってた。

 黒がどうしてそんなにしてくれるのかわからなかった。

 でもこれだけは分かる。

 面白いこと、楽しいこと、おいしいものを教えてくれたみんなを笑顔にしたい。

 そのために何をすればいいのかわからない。

 できるのは私の髪で編んだ縄を使って、黒たちを守ること。

 難しいことがわからない私のできるだた一つのこと。

 一生懸命に頑張るだけ。



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