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処刑台上の詐欺師  作者: 十参乃竜雨
第三章、『それは突然に……』
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私の正義

「貴様のためにやったのではない。調子に乗るな」

 私は憎たらしい男にそう吐きかけておいた。そうでも言わないとこの男はいつまでも調子に乗る。

 私は自分のマスターであるジャスティの意に反し、この場に躍り出てきた。

 決して褒められるような行為ではなかろう。

 しかし、私は私の正義を貫くために自分の意志でこの場に出てきた。

 この処刑に疑問を抱きマスターに詰め寄ったとき、最後にマスターは言った。

『自分の信じる道を信じる通りにやってみるといいよ』

 その言葉の真意を私の取るに足らない知識では読み取ることはできない。

 だから、私は言葉をそのまま受け取らせてもらう。

 無実の少女が、なにも悪いことなどしていない少女が処刑されてはならないとする私が信じる正義を貫くために。そして、それを貫くために私は槍を構える。

「いやー、マイエンジェルは助けに来てくれると信じていたよ。これはきっと心が通じ合っているんだね。これは今夜同じ枕でねるしか」

「じゃあ、私の宿屋のゴミ捨て場にでも来てもらいたい。たっぷり可愛がってやる」

「おお、あのジュリアちゃんが誘ってくれた!今夜が楽しみで……っておい、ちょっと待てゴミ捨て場って、確実にそれは別の意味での可愛がりだよね。絶対痛いほうだよねそれ」

 戦闘の高揚感からか、私は滅多に叩かない軽口を叩いてしまった。

 この男はいつなんどきであろうとも変わらない。それが面白おかしく思ってしまったからかもしれない。

 人はなかなか変わらない。それは私にも当てはまることだ。

「……ジュリアちゃんはいつ見ても変わんないね」

 私は目の前の男が今この時に何を言っているんだと思った。命のやり取りの場なのだ。それも、圧倒的不利なこの状況において慌てることなく軽口を叩いている。

「……貴様もな」

 黙ったままも尺なので返答をした。

 しかし、不思議なのは今回の件だ。

 マスターはいつもとは逆の立場でいる。いつもならだれかを守る立場だ。

 なにか考えてのようであるが、私にはわからない。

 だから私は自分の信じる思いをこの槍へのせる。

 人を救おうとした者が生まれ持った物だけで裁かれるなどあってはならない。

「もう一度言うが、勘違いはするな、私はお前のために来たのではない」

「わかっているよ。自分のためだろ」

 今まで私を茶化していた声色はいっさい消え去っていた。

「共同戦線を張ろう。袂をわかった者同士でも戦う理由が一緒であれば、一緒に戦った方が効率がいい。そうは思わないかな?ジュリアちゃん」

 今目の前の男はまっすぐと私の目を見てくる。その吸い込まれそうな目に戸惑うことなく見据える。もう何回か見てきた目だ。

 嘘は言っていない。しかし、何を考えているのかは全然見えてこない。

「どうかな?」

 目の前の男もマスターも何を考えているかわからない。私には行けない次元に二人はいるのだろう。しかし、私は迷わない。

 私の槍のひと振りで失う命を救うことができるのであれば、喜んで私は槍をふろう。

 私は声で返答することが癪だったので、頭を縦に振り答える。

 私の正義に応えるために。



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