悪夢
ここは薄暗い湿った地下室。
そこに五人の男女が立っていた。その首にはそれぞれ縄が掛けられていた。異様な光景。
そして、その五人の表情も様々だ。
これからの自分に起こる事を考え泣く顔。
自分の不甲斐なさに落ち込む顔。
自分をこの状況陥れた者に怒る顔。
これからのことに何かを諦めた顔。
今の状況を理解できずに戸惑う顔。
五者五様だった。でも、これから五人がされることに変わりはない。
「いや、いやあぁぁぁああー、死にたくないぃ、死にたくないよぉおおお、誰か助けないさいよ。なんで私がこんな目に、わるいことなんか、悪いことなんかしてないのに、なんでこんな目にあわなきゃなんないのよ、しにたくない、まだ、まだ、しなくやあ、いけない、ことあるのに、きかなくちゃいけない返事が、あるのに、いやぁぁぁぁぁっぁあああ」
恐怖が彼女を襲う。
「ごめん、ごめん、何度言っても許されることじゃないね、僕のせいでこんなことになってしまって。こんな目に会うのは僕だけでよかったのに……」
自分を責める女。
「あのクソやろおおお、私たちがどれだけ、どれだけ、人の為に、くそ、アンナヤツラノタメニ、私たちは、私たちは頑張って来たっていうのか。クソくそおおおおおぉおおおお」
慟哭を上げる女。
「…………これが天が与えた試練にしては残酷すぎるな。こんな死に方をするとはな」
諦めの声を上げる男。
「……おい、何の悪い冗談だよ。俺たちは、こんな目にあう犯罪者とはまるっきり反対の」
状況に混乱する男。
様子は違えどもこれから向かう道は皆一緒だった。間もなく彼らの足元がなくなり、皆落ちる。天井からつるされた縄が彼らの首を引っ張る。落下の勢いで首の骨が折れる。それは決定事項。そして、その先はただの暗闇だけが待っている。
もしこの場に赤の他人がいたら思うかもしれない。この者達はなぜこの場にいるだろうか。でもいくら考えようともこの者達は救われない。
これから数秒後には、落ちて行く。せめて苦しまずにと思うしかない。