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ロストクラウン  作者: 柿の木
第四章
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3、大会




 チーム分けから一夜明け、延期の影もなく大会が開幕した。

 朝から初夏らしい晴天、少し暑いがこういう催し事には最適だ。

 長々と続くこの大会は、かつてはユニオンが、今はGDUとガーデニア市議会が全面的にバックアップして開かれる。 

 言わばガーデニアの公式行事だ。

 今日からしばらくは、街を挙げての大騒ぎ。

 盛り上がってんな、と他人事だったのは去年までの話で。

 観戦はともかく参加の意思は皆無だったフィルは、いまいち盛り上がり切れないままチームのメンバーを見回した。

 デザートカンパニーのリンレットとカディ。

 ウェルトットでは英雄扱いのシルト。

 そして、フィルとリーゼ。

 まあ、この面子ならフィルがどんな馬鹿をやっても目立たないけれど。


「……仕組み過ぎだろー」


「え、でも一応バランスは、取れてるよね?」


 レイグが一枚噛んだことは確かだが、それを知らないリンレットは首を傾げる。

 大会は開催期間が決まっているため、割とぎりぎりのスケジュールで試合が回るらしい。

 リンレットとカディは慣れた様子だが、開会式も見ず控室に駆け込んで戦闘準備開始。

 試し撃ちもしていない大会専用カートリッジを叡力銃に嵌めて、フィルは「そうだけど」と言葉を濁した。


「立場だけ見て組み合わせたんでしょうね。優勝とか、出来ちゃいそうですけど」


 顔見知りと組めて、やはり安心したのだろう。

 リラックスした様子のリーゼが、のんびり言った。


「チームになりたかったわけじゃなんだけどね」


「うん。その点は、有難いわ」


「GDUの決定ですから仕方がないですが、足、引っ張らないで下さいよ」


「……へーい」


 シルトとカディは、まあ、昨日からこんな調子だ。



『――決まりました! 試合終了ですっ!』



 ノリノリのラテが、初戦の勝者を告げる。

 どっと湧いた歓声が、控室に反響した。


「もう、ですね。何だか、実感ないまま始まっちゃいました」


「参加してると、いつの間にか始まって、ホントあっという間に終わっちゃうよ?」


 リーゼにそう答えて、リンレットが立ち上がる。

 その手が、ベルトの短刀に落ちた。

 一試合目は、リーゼを抜いた四人だ。

 彼女はそこで思い出したように、ぽんと手を打つ。


「ね、それで、結局リーダーって誰がやるの?」


 チーム分けの発表から何度目かのその問いに、カディがちらとシルトを見遣る。


「誰でも構いませんけど」


「二試合目までには決めないとだもんね。私は、持久力ないし辞退したいなー」


「…同じく、です。当たり前ですけど、ちょっと荷が重いです」


 女性陣が頷き合う。

 試合中狙われることも考えれば、当然かもしれないが。


「普通に考えたら、カディかシルトだろ。他の面子がやられても自力で切り抜けられそーだもんな」


 じゃんけんでもしたら、とフィルが半ば本気で勧めると、カディに「適当過ぎますよ」とばっさり切られた。


「ま、一試合目の結果で考えたらいいんじゃない?」


 酷く冷静な提案をしたシルトは、「役立たずがなっても、面倒なだけだしね」と付け加える。


「……そうですね。口先だけの人間がなっても迷惑ですしね」


 カディが、それに笑みを作って答えた。

 フィルは叡力銃をホルダーに収めて、呟く。


「何だろーな、すげぇ、不安」


「そう? 私は、フィルと出られるから安心だけど」


 リンレットの笑顔に、フィルは肩を落とす。

 せめてもの救いか、リーゼだけは同意を込めて控えめに頷いた。


「…怪我しないように、気を付けて下さいね」


「おー」



 そしてラテの柔らかい声に、呼ばれた。





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