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ロストクラウン  作者: 柿の木
第七章
174/175

27、表舞台の幕引き




GARDENIA NEWS 1170.8.1



アルカーナ議長引退か


 先日退院をしてから沈黙を守ったままのアルカーナ議長の動きが、側近らへの取材で明らかになってきた。

 首都のみならずガーデニアも巻き込んだ議長暗殺未遂事件。

 充分な捜査が行われないまま、事件当時首都に滞在していた砂海案内人が犯人として拘束されたことから、事件は当初より混迷を極めた。

 更に、懸命な治療の末奇跡的に回復した議長自身の口から、「偶然と不幸が重なって起こった事故であった」と説明がなされ、未だに疑惑や批難が集まる事態となっている。

 このコメント以降、議長は沈黙したまま先日退院。

 議会から説明を求められたが、体調に不安が残るとして召集には応じていない。

 

 我々は通信による取材を試みて来たが、「事件についてはコメント出来ない」と前置きをされた上で議長側近が近況を語ってくれた。

 アルカーナ議長は順調に回復しており、今後の展望も少しずつ周囲に明かしていると言う。

 推し進めて来た政策はすでに盤石なものとして先が見えており、議長は自ら指揮を執る必要はないと考えているそうだ。

 近く新しい議長を推薦、自身は議長職を退くと言う。

 側近らによると、これは議長が高齢を理由にかねてより考えていたことであり、今回の「事故」とは関係がないそうだ。

 議長の意向は非公式ながら議会にも伝えられており、反発を強めていた議員たちも、議長の退任そして後任の選出を見守る構えである。

 

 この一件に関して王室は、「事件は収拾している。国民は悪戯に騒がぬよう、冷静に過ごして欲しい」と異例のコメント。

 議長の引退を以て、暗殺未遂事件は幕引きとされる形だ。

 納得の出来る経緯説明がなされるまで、我々は取材を進めていく所存である。



GDU 統治機関より脱却の動き


 春にもお伝えしたが、GDU独立の動きが強まっている。

 かつてはユニオンとして、ガーデニアを実質統治していたGDU。

 しかし粛清以後、市議会に管理される形で統治機関の一部として再編されている。

 だが議長の暗殺未遂事件を契機に、ガーデニア市議会との溝が深まり、今後国王の承認を得て以前の姿を取り戻す意向のようである。

 GDUは事件に関して、「不当に拘束された砂海案内人の解放そして名誉の回復がなされれば、それ以上事件に干渉する権限は持たない」としている。

 市議会そして首都公安と対立する形で砂海案内人の解放を求めたGDUは、本分を弁え今後を静観する構えだ。

 ガーデニア市民からもGDUの意向は概ね支持されており、特にユニオン時代を知る人からは「やっとあるべき姿に戻る」という声も上がっているようだ。

 昨今の砂海案内業の低迷を、GDU独立が覆すことが期待される。

 この回帰が、砂海案内業界にとって光明であることを願いたい。


 さて議長の退院より前に、今回不幸にも「犯人」として事件に巻き込まれた砂海案内人と僅かに話す機会を得られた。

 彼の近況については言及を避けるが、ガーデニアが彼の解放のため動いていたことについては「とても感謝しています」とコメントを預かっている。

 拘束中に、解放を求める運動が起こっていると聞いていたそうだが、まさか本当だとは思っていなかったようだ。

 事件の真相は明らかにされていないが、彼がガーデニアに帰って来たことは、我々の意志が掴み取った代えがたい成果であると言えるだろう。

 権威を恐れず真実を求め声を上げた多くの人に代わって、彼に一言だけ。


 おかえり、砂海案内人。

 

 




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