【大成side】
いつも淡々としている幼馴染の、あいつ。子どものころからよく遊んでいて、空気みたいな存在だった。
社会人になっても(オレはプロギターリスト目指すフリーターなんだけど)、家に変身する建築戦隊で、一緒に悪と戦ってきた。
あの時、オレはあいつにいら立っていた。苦明寺でのあいつと、商店街長との練習試合。今まで負けなしだったあいつが、負けてしまった。得意技の班長攻撃があっさりとかわされた。
いつになく、ヤバいくらいに落ち込んでいたあいつ。でも他の人には違いがわからないのだろうか、誰もあいつを気にしない。
「苦明寺探検しようぜー」
オレはあいつを散歩に誘ったが、あいつは動こうとしない。下を向いたまま、ずっと黙っている。建築戦隊のリーダである、あいつが落ち込んだままでは、みんなも困る。
オレはだんだんイライラしてきた。もうおそってやりたかった。・・・・おそう?何で?
大丈夫だ、次は勝てばいい・・・てぎゅっと・・・・・。
いや、何でそんなことを思うんだオレ、男同士じゃないか。そういうことは女とするものだろ。
女・・・今までオレは、何度か女と付き合う寸前までになったけれど、本当に付き合うまでにはならない。何故か躊躇してしまう。
あいつは、女とか興味なさそう、というかオレの他に友達いるのか?見た事はない。
オレはあいつを強引に連れだした。初めてくる街にわくわくするオレ、ずっと黙ったままのあいつ。いくら話しかけても、返答もない。
ああ、もう、おそってやる!!
そしてカッとなったオレは、鍵を握っていた。
「建築戦隊 二階建てアパートショージコーポ 家賃二万 敷礼二か月分ジャー」
変身していた・・・・。
「何をするんだ」
あいつは驚いて、オレを見上げた。どうして、変身してしまったのだろう。自分でも驚くばかりだ。
「いつまでも落ち込んでいて、うぜーんだよ。負けたって、また練習して強くなればいいんだよ。かかってこい」
後には引けない。落ち込んでいるから優しくしたいのに、何で挑発しているんだオレ。
ていうかこれで今日の変身3度目・・・。
「そんな・・・ここで」
あいつは動こうとしない。
「・・・かかって来ないなら、オレは建築戦隊を辞める」
何を口走っているだオレは・・・・。どうして思っている事の反対を言っているんだ。
「建築戦隊 庭付き一戸建て3000万ジャー」
あいつの新技ができた。
オレは技を食らったから、当然、痛い。でも嬉しい。
変身を解いて、あいつに駆け寄る。あいつも変身を解いてくれた。思わず抱き着こうとしたが、
「暑いよ」
とかわされてしまった。夏だし、仕方がない。
オレもあいつも戦いで息が上がっている。地面にどかっと座り込んだ。
何故だろう、あの時のことを思い出すと、今でも恥ずかしい。
それが毛明寺商店街に見られていたとは、更に恥ずかしい。
「毛明寺の戦いって何?」
と周りに突っ込まれ、答えに詰まった。
いつまでもあいつとは、一緒にいたい。でもきっといつまでも、って訳にはいかないんだろうな・・・。




