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半分ゾンビな俺のゾンビ殲滅伝記  作者: 紫亜 靡生
第二章〜拠点・スーパーマーケット〜
8/8

Viewpoint of the 優〜過去と発端〜

すいません。私用で更新が約1ヶ月ぶりです。本当に申し訳ありません。


これから再び定期的に更新できるよう頑張ります。

私の名前は土代(つちしろ) (ゆう)

木暮第三中学校の3年生だ。

周りからは容姿端麗、成績優秀そしてテニス部のエースで関東大会にも行ったことがあるということでみんなを私を持ち上げる。

正直言って恥ずかしいけどみんなが褒めてくれるのでうれしくもある。


今日7月20日で私の学校は終業式で、明日から夏休みに入る。


夏休みと言っても私達3年は受験勉強で忙しくなり、友達にも会えなくなるのでとても寂しい気持ちになった。


そんな気持ちで通学路を歩いていると最悪なヤツにあった。


相坂 恭弥………。私の2こ上の幼馴染にあたる人だ。けど、こんなヤツが幼馴染なんてホント最悪!


あいつもこっちの顔を見ると凄く嫌そうな顔をしていた。


ふざけるな、嫌なのは私の方だ。と私はあいつを睨みつけていた。

そして、


「…………ッチ」


という舌打ちをして私はその場を後にした。アイツと関わる時間が勿体無い。いや、むしろ時間が可哀想だ。


……私はさっきのアイツを見て昔の「きょうにい」の事を思い出しながら登校していた。


きょうにぃは私が5歳の頃にここに引っ越して来た時、家も近く母親同士すぐに仲良くなって子供の私達もよく遊ぶようになっていた。


最初は近所にいる優しいお兄ちゃんという印象しかなかった。


けど私が小学校1年生のある事件がきっかけできょうにぃに対する気持ちが変わった。


それは私が下校途中に近所の神社にこっそり遊びに行った時だ。

その時のわたしはただ、1人でこんな所を探検したら冒険みたいで楽しそうだと思ったからだ。


私が神社の周りをウロウロとしていたら突然野犬が襲って来た。


私は突然の事でビックリして倒れたからぶつからなかったけど、そのせいで腰を打ってしまいそこから動けなかった。

犬がとても怖かったのを今でも覚えている。


犬は私に向かってとても大きな声で吠えていて私はもう泣く事ぐらいしか出来なかった。


その時だった、誰か私の前に出て来てくれたのは。

私はその人が王子様のように見えた。


ランドセルを背負って私の前に手を広げて立っていた人は近所にいる優しいお兄ちゃん(きょうにぃ)だった。


きょうにぃは私の前に立っていて私は倒れていたので顔は見えなかったけどしっかりと頭は犬の方向に向けていた。


私はこれからどうなるのかとビクビクして見ていたけどきょうにぃは急に四つん這いになり、犬のように唸り、吠え始めた。


「ゔーーっ!ガウッ‼︎ガウッ‼︎‼︎」


「ガウッ‼︎ガウッ‼︎‼︎」


二人はしばらくの間唸っていてそれから数分後、犬がじりじりと後退し始めた。

そこをすかさずきょうにぃは前に出て、どんどん威嚇していった。


そしてとうとう犬が


「ガウーガウー…クーン、クーン。」


と、耳をたらしてどこかへ走り去ってしまった。


しっかりと犬が居なくなったところできょうにぃが私を見るため、後ろを振り向いた。


「ゆう、だいじょうぶ?」


彼のその声をきいたとたんに


「…っ!……うわぁぁーーん‼︎怖がっだよーきょうにぃーーー‼︎」


と言って泣き出してしまった。

きょうにぃは凄くあたふたして、私の頭に手をぽんと乗せて、泣き止むまで撫でてくれた。


私が泣き止んで落ち着いた後、私は立とうとしたけど腰を打ってしまったためうまく立なかった。


するときょうにぃが


「ほらっ、よいしょっと!」


「あっ!きょうにぃちょっと!」


きょうにぃは私の事をおんぶしたのだった。


「時間おそくなったから早く帰ろう。おばさん心配してるよ。」


「う、うん。」


私は顔が赤くなっていた。胸もドキドキしていた。


(おかしいな、なんでこんなドキドキするんだろう?前もこんなふうにおんぶしてくれたことはあるのに。)


その時の私はただひたすら自分の胸の中のモヤモヤに困惑していた。


こんがらがる頭の中でふとある疑問が浮かんだ。


「ねぇ、きょうにぃ。」


「んー?なにゆう。」


「どうしてわたしがここにいることがわかったの?」


その時は1年生と3年生は時間割のコマ数が違くて1年生は4時間で帰れたが、3年生は5時間目まであったのだった。


「あーそれはね、今日は給食を屋上で食べる日だったんだ。それでゆうがいつもの道から帰ってなかったのが見えたからあれ?って思って5時間目の町たんけんでここをのぞいたんだよ。」


私達が通っていた小学校ではたまに屋上を開放してそこで椅子を持ってきて給食を食べるというイベントがあった。

その日はたまたま3年生が屋上で食べる日だったらしい。


「それでも、よくここだとわかったね?」


「まあ、おれも前にここに来てかあさんや先生におこられたことあるから…。こっちの方向ならゆうもたぶん行ったのかなーって…。」


「きょうにぃもここにきたことあるんだね。」


「うん。そのあとすんごいおこられたぞ。ゆうもかくごしとけよー。」


ニヤリと笑ってきょうにぃが言った。


「それはいやだー!いやー!いやー!」


「うわっ、あばれるな!落ちちゃうだろ?」


「あう…。ごめんなさい。」


「まあそれにね…。」


「それに?」


私が聞き返すと、きょうにぃはニカッと笑ってこう言った。


「ゆうのことは大体わかるよ!だっておれらいつもいっしょだしさ。」


その笑顔を、その言葉を聞いた時、その頃の私は今のモヤモヤの正体に気付いた。


(そっか、わたし。きょうにぃのこと……すき……なんだ。)





それは私の初恋だった。





その日はきょうにぃが私を家まで送ってくれた時には本来帰る時間を2時間も遅れ親にこっぴどく怒られた。


きょうにぃに至っては町探検を途中で抜け、先生を困らせたことで駆けつけた先生ときょうにぃのお母さんの2人に怒られていた。


私達は正座をしてそれぞれ怒られていた。

するときょうにぃと目が合いニッと笑ってきた。

私はそれにドキッとしたが、


「恭弥!何笑ってんの⁈」


「あでっ‼︎」


きょうにぃはパンっと頭を叩かれていた。

私はそれを見て笑ってしまい結局2人揃って割り増しで怒られてしまっ

た。





それからの私はきょうにぃにべったりだった。

学校に行くのも一緒。もちろん帰りも一緒。

休み時間も学年が違う教室にドカドカ入り込んで行って


「きょうにぃ!一緒にあーそぼっ!」


と大声で言って遊びに誘っていた。


最初は「1年生が3年生の教室に入って来るなんて何事だ。」と思われていたらしいが、何十回も行っているうちに「相坂の幼馴染がまた来たよ。」という認識に変わっていったんだそうだ。


おかげできょうにぃは随分といじられていたらしい。


私が遊びに誘いに来ると決まって左の眉を上げていた。きょうにぃが困った時にでる癖のようなものだ。

(そんな顔が見たさに、きょうにぃのクラスに行っていたのも、ちょっとだけあった。)


でもどんな日だろうときょうにぃは私と一緒に遊んでくれた。

ある時は2人で。ある時はきょうにぃのクラスメイトと。ある時は私の同級生と。



そんな優しくて頼もしいきょうにぃが私は大好きだった。


でも、きょうにぃが中学生に上がったら一緒に遊べる機会がぐんっと減ってしまった。


たまにお母さん同士が一緒に会うこともあり、お母さんに付いていってもきょうにぃはいなくて


「ごめんね、今日も恭弥同級生の友達と一緒に遊んでるからって来ないの。」


…いつもそうだった。


その度私は不機嫌になっていじけてしまっていた。


「私がきょうにぃと一緒の学年だったら。」と何度も思った。


けど実際そんな急に年をとるわけでも無かった。だから私は早く中学生になりたかった。

たった1年でもいいからきょうにぃと一緒に同じ学校に通いたかった。


ただそれだけ、ただそれだけだった。


私にとってはとても長い2年が過ぎ、とうとう私は中学生になった。


始業式が終わり昼頃、私は3年生のクラスがある校舎にやってきた。


そこで、メガネをかけたいかにも真面目そうな人を見つけて声を掛けた。


「あの、すみません。」


「あら?ここは1年生の校舎じゃないよ。1年生はあっちの…」


そう言って丁寧に指を指して教えてくれたのだがもちろん私は知っていて


「あの、人を探しているんですけれども…。」


「あっ、そうなんだ。ごめんね、それで誰かな?」


「きょう……相坂恭弥さんはいらっしゃいますか?」


「………⁈」


「…?あのどうかしましたか?」


「えっ?あ、相坂君?えっと…ちょっと分からないかなー…。」


きょうにいの名前を出したら眼鏡の先輩は明らかに狼狽し始めた。


私が不思議がっていると、奥の教室から誰かが出てきた。


「あっ。」


出てきた人を見て私は思わずそう呟いた。



その人は……きょうにぃだった。




ゆっくりとこっちに向かって来ていて、こっちには気づいていみたいだった。


「きょうにぃ!」


「あっ!ちょっと待って!」


眼鏡の先輩がなぜか止めようとしたが私はきょうにぃに久しぶりに会えたのが嬉しくて駆け出していた。


きょうにぃの目の前にやって来て、彼の手を掴んだ。


「なっ⁉︎」


きょうにぃは目を大きく開いて私の事を見ていた。


「ひさしぶり!元気だった!これからはやっと一緒に学校行けるね!あっ、私のクラスはね……」


「……お前誰?」


「え?」


私はその言葉にビックリしてその場で凍りついた。


きょうにぃは目をそらし、私に掴まれた手を離して再びこう言った。


「……わるい。俺はお前を知らない。人違いだろ?」


そんな、私にとって信じられない言葉がどんどんきょうにぃの口から出てきた。


私は混乱する頭の中で必死に言葉を発していた。


「あ……え……わ、私だよ?優だよ?土代優……。家が近所で……お母さん同士が仲良くて………小学生の時に………いつも遊んで……た。」


周りの人から視線が自分達に集まっているのを感じたが私はそんなことどうでもよかった。


「……だからさ、知らないんだよお前のこと。俺には幼馴染なんていないんだよ。分かったらさっさと帰れ。」


そう言って彼はその場を立ち去った。


私はしばらく呆然としていた。

その後の記憶は何もない。

気付いたら自分の家のベットに寝転がっていた。



自分の顔を拭ったら濡れていた。


私は泣いていた事にその時にやっと気づいた。



それほど私の感情は麻痺していた。


ただ私の頭の中にあるのは昼間の会話のみ。


「……お前誰?」


何で?


「……わるい。俺はお前を知らない。人違いだろ。」


何で?


「……だからさ、知らないんだよお前のこと。俺には幼馴染なんていないんだよ。分かったらさっさと帰れ。」


何で⁈


再び涙が溢れたが思考は止まらない。


私がその時に知りたかったのはなんできょうにぃがあんな事を言ったのか。


それ以外はどうでも良かった。


(どうして?なんで?きょうにぃが私を忘れた?私の事を?あんなに一緒に遊んでたのに?あんなに一緒に小学校行ってたのに?私の事を犬から守ってくれたのに?私の事が分かるって言ってくれたのに?私と一緒に手を繋いでたのに?私と一緒にご飯食べてたのに?私と一緒にお風呂入った事あるのに?私と一緒に旅行、行ったのに?私と一緒に同じお布団で寝てたのに?なんでなの?ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ?)


私はずっと‘‘ナンデ”という言葉が頭の中でぐるぐる回っていた。




どんくらい時間が経ったかは分からない。




けど私の頭の中に答えが浮かんだ。


「なんだ、簡単だよ。」


そう、簡単なんだ。


「アレがきょうにぃじゃないんだ。きょうにぃとは違うもう一つの別の性格なんだ。アレがきょうにぃを抑えつけているんだ。だから私の事を思い出せない。そっかそういうことか。」


そう、そうに違いない。


「だったら私は…。きょうにぃに私の事をアピール続ければいいんだ。私がいっぱいアピールすればきょうにぃもきっとアレの抑えを振り切ってもと通りになる。

ふふっ、簡単だよ。」


けど、私はアレに話しかけるなんてまっぴらだった。


あいつのあの態度を見ていると腹がたって殴りたくなってしまう。

…けどそんな事したら中にいるきょうにぃに嫌われてしまう。何よりきょうにぃの顔が傷ついちゃう。


だから私はアレに接触せずにアピールをする事にした。


その方法は……。



「女子テニス部新人戦優勝。土代優さん。あなたは上記の通り優秀な成績をおさめましたので、ここに賞します。」


それから2ヶ月後私はテニス部に所属し、先日の大会で優勝した。


そう、ただひたすら目立てばいい。私の事をアレの中にいる「きょうにぃ」に見せつければいい。


それが私の出した答えだ。


私はアレを見つけ、きょうにぃに戻ってないか観察したがそんな様子も無く、目が合うとすぐそっぽを向かれた。


私はそれが悔しくて、舞台裏で歯ぎしりし、持っていた賞状を握りつぶしてしまった。




その後も生徒会の副会長に立候補して当選したり、定期テストの学年ランキングでTOP10入りを果たしたりして私のことは学校のほとんどの人から知れ渡っていた。


………ただ。


アレは……きょうにぃの皮を被っている偽物は私になんて見向きもしなかった。


私はただそれが、悔しくて悔しくて……。


「……ーい……うちゃん」


「……おー……てば」


「ゆうちゃん!」


私は肩を叩かれて、意識がこっちに戻ってきた。

周りを見てみるとそこはもう学校の昇降口だった。


そして肩を叩いた人を確認した。


「なんだ……。まきちゃんか。」


「むーっ!何ってなによーもー。こっちはずっと声かけてんのにー!」


「あはは……ごめんね。」


彼女は2年と3年で私と同じクラスの佐藤(さとう) 麻紀(まき)ちゃん。


私の親友だ。



「何か考え事?すんごい顔してたよ。」


「えっ!やだ、どんな顔だった。」


とっさに自分の顔を触ってしまう。


「んー……なんかねー、人でも殺しそうな顔かなー?」


「えっ……。うそ、それってめちゃくちゃ酷い顔じゃん!」


「だからすんごい顔って言ったじゃん。」


まきちゃんはケラケラ笑ってそういった。


すると少し真面目な顔になり


「でも大丈夫?なんかあったの?」


「んー……ちょっとね。ある人の事を考えてたの。」


「なに、その人の事を考えると『殺したい』って顔に出ちゃうような人なの?」


「ち、違うよ!」


私は慌てて否定した。


「私ねその人の事大好きなの。でも今はその人は遠くに行っちゃって会えなくてね…。だからその理由を作った人を許せないなって思ったから顔に出たのかもね。」


「へー。そうなんだ。ゆうちゃんも大変だね。でも理由を作った人は殺しちゃダメだよ。」


……そんなわけにはいかないよまきちゃん。


「うん…。そうだね。……あっ、もうそろそろ教室行こ!今日は終業式だから早めに教室に行かないと。」


「あっ!ちょっ、ちょっと待ってよー!ゆうちゃんってばー!」



ダッテアレガキエナイトキョウニィハモドッテコナインダモン。





終業式が終わり、先生から学校の成績を貰って私はまきちゃんと一緒に下校していた。


「あーあ、どうしよー。成績あんま良くなかったよー。」


「大丈夫だよ。まだ途中経過だし、これから頑張れば。」


まきちゃんは自分の成績のせいでややテンションが下がっているみたいだった。


「ゆうちゃんは成績良いからそんな事言えるの!いいなー、頭良くて。私にもその頭を分けてよー。」


そう言って彼女は私の頭を掴んでグラクラと揺らした。


「きゃっ!ちょ……ちょっとやめてよ…やめて………ちょっと!まきちゃん!」


「むー。そんなに大声出さなくて良いじゃんかー。あっ私はこっちだからバイバーイ!夏休みいっぱい遊ぼーね!」


「うん‼︎バイバーイ!」


それから家に着き、お母さんが作ってくれたオムライスを食べて私はさっそく勉強机に向かった。

受験生たるもの毎日の勉強は欠かせないのだ!……なんちゃって。


それからしっかりと3時間、英数国をやって私は休憩がてらリビングに降りて行った。


冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注ぎ飲み干す。

麦茶はとっても冷たくて美味しく、乾いた私の喉を潤してくれた。


時刻は夕方の5時過ぎ、お母さんは夕飯の準備を始めていた。


今日の夕飯は何かなー?とかそんな事考えながらソファーにどかっと座り込んだ。


「優、休憩は30分だけだからねー」


「分かってるよー。」


リモコンでテレビのチャンネルを適当変えながら私はそう答えた。


受験生の学年になってから、家で勉強する時は最低1時間以上勉強し、最高で30分休憩できるというルールがある。


正直言ってこのルールは面倒だが、守らないとお母さんに色々お小言を言われるため私はしっかりと守っているというわけだ。


今は貴重な休憩時間。だが時間帯が時間帯なため面白いテレビ番組はやってなく、どのチャンネルもニュースばかりだ。


『最近、相次いで発生している誘拐事件。被害にあったと思われる被害者は老若男女様々で被害者同士の接点も見られず、事件解決は難航している模様です。』


どこのニュース番組も最近起こっている誘拐事件の事をやっていた。

誘拐されたと思われる人は10人いるらしい。


「物騒ねー。優も気をつけなさいよ。」


「大丈夫だよ、お母さん。これから夏休みだよー?」


「でも……。塾から帰ってくる時とか暗いでしょ?だからしっかりと友達と一緒に帰るのよ?」


「もー、お母さんは心配性だなー」


「でもねー。10人も攫われているのよ?それも現場に証拠なんて全く無いのよ?これはプロの仕業ね。」


「………お母さん、ふざけてる?」


「あら?ばれちゃった?」


「当たり前でしょ!それに何がプロよ。今の日本でそんな物騒なプロなんて居ないわよ。」


「それもそうねー。でも気をつけないとだめよ優?これは大真面目ね」


「はーい。」


そんな感じのいつも通りの会話をしてから私は夕飯が出来るまでの1時間ちょっとの間、勉強を始めた。





それから数日後、私はその事件が身近でも起きたことを知る。





「えっ?行方不明?」


「ええ。恭弥君、ここ何日か全然家に戻ってきてないのよ。捜索願いを出したらしいのだけれどもまだ見つからないんだって。

もしかしたら誘拐の可能性もあるらしいわよ。」


「………へぇ。」


「あら?あまり興味無さそうね。あなた昔は恭弥君のこと『きょうにぃ』って呼んでてベッタリだったのに。」


「‼︎‼︎違う‼︎」


私はお母さんのその発言についカッとなって怒鳴ってしまった。


「ち、違うってなによ?」


お母さんは私が急に怒鳴ったりしたので驚いているようだった。


「……きょうにぃはいなくなったから。アレはきょうにぃじゃなくなったから………。」


「よくわからないけど、とりあえず恭弥君の安否が分かりしだい伝えるわね。」


私はすっかり気分が落ち込み返事をする気力が失せていた。


アレがいるのはきょうにぃの体だ。


アレが居ない。つまりきょうにぃが居ない。


ざまあみろと思う反面辛い、寂しいと思う自分もいる。


私は自分の感情がいまいちわからなくなり頭の中が混乱してしまっていた。





それからは受験生ということもあり、塾の夏期講習や少ないながらまきちゃんや他のクラスメイトと共に遊んだりして忙しい夏休みを送って行った。


その一方、アレ(きょうにぃ)はまだ行方不明のままだった。


そして最近、変な噂が流れてきた。


ここからそう遠くない隣の市になにやら人を食べる人間がいるらしいと。


ネットから流れたその噂はすぐに広まり、塾でも話題になっていた。


私は最初は全く気にもしていなかった。


そう、あんな……地獄みたいな事が起こらなければ。



8月17日午後7時過ぎ、その日私は塾が休みだったので久々に家族と一緒に食事が出来る事になっていた。


塾がある日はもっぱらお母さんが作ってくれる弁当を持って行っていたからだ。


「優、食器並べてちょうだい。お父さんも料理運ぶの手伝って。」


「「はーい。」」


そんなふうにして夕飯の準備をしていたらなにやら外が騒がしくなっていた。


「なんだ?こんな時間に騒いで…」


お父さんが不愉快そうに窓を開け、ベランダに出た。


するとすぐに大慌てでリビングに戻ってきた。


「たっ大変だ!外に人がたくさんいるぞ‼︎」


「なんですって⁈またなんでそんなことが…」


私は慌てて、ベランダに飛び出して庭を突っ切り外の様子を伺った。


するとそこには悲鳴を上げながら移動をしているたくさんの群衆があった。


「あっ、あのすみません…。これは一体何が起こっているんですか⁈」


私は近くに居た人を呼び止め事情を聞いてみた。


するとその人は


「市の境界線にある山から何やら変な連中がやって来て暴動を起こしているらしいよ!ここら一体はみんな市役所へ避難するだよ!お嬢ちゃんも早く必要な物持ってここを出な‼︎」


「はっ、はい!」


私はすぐにリビングに駆け込み、さっきの話を伝えた。


「よっ、よし!なら必要な物を持って避難するぞ!2人共、車に荷物を詰め込みなさい!」


「ちょっと何言ってるのよお父さん‼︎こんな状況で車なんて出せるわけないでしょ!」


「あっ、あぁそれもそうか…。ならとにかく自分で着替え等必要最低限の物を詰め込み玄関で待機!3人全員揃ったらここを出発しよう。」


お父さんの号令の下、私たちは準備を始めた。


私は2階の自分の部屋に駆け込み、すぐに大きめなバックに3日分の着替えと下着を詰め込んだ。


そしてスマホとスマホの充電器も詰め込み、他にいる物はないかと辺りを見回した。


すると机に小さい頃のきょうにぃと私の2ショット写真があった。


その写真を手に取り数秒考えてからバックに詰め込み、私は玄関に向かった。


「よし、みんな大丈夫だな。」


「う、うん。」


「あ、あなた…大丈夫かしら?」


「なーに、ここの市役所はでかいしこれだけの人数でもなんとかなるだろう。それに暴動も警察がすぐ止めてくれるはずさ。俺達はただ数日家を空けるだけ、そう考えよう。」


「!そ、そうよね。」



お父さんのその励ましの声で私とお母さんは少しだけ元気が出た。


「よし、それじゃ行くぞ!」


そう言ってお父さんは玄関の扉を開けた。



次回も優視点の物語です。





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