苺の実る頃
その日、二人の少年たちはいかにも落ち着かぬ様子でそわそわとしていた。何故なら今日、少年たちはジャムイチゴを森の奥へ採りに行く予定なのだ。ごく普通の農村の子供である彼らにとって、ジャムイチゴを採りに行くのは楽しみとすべきことなのである。普段の手伝いとはわけが違う。ジャムのように甘いイチゴは貴重品なのだ。カブやキャベツも大事な作物だが、イチゴと同列ではないということなのだろう。
しばらくして待ち合わせ場所に二人の少年たちよりも年長の青年がやってきた。
「おお、お前ら先に来てたのか」
「マークさん、遅いですよ。僕たち、結構待っていたんですからね」と、少々軽そうに見えるマークという青年に、黒髪で小柄な方の少年が声をかけた。
「うちは母さんがものすごく楽しみにしているんですよ。父さんのために果実酒を作りたいって」
するともう一人の少年がいかにも食べ盛りといった風にこう答えた。
「ニルスの家は果実酒を作るの? 僕はね、母さんにパンケーキを焼いてもらって、イチゴを添えて食べる予定なんだ」
ニルスと呼ばれた少年に比べると、もう一人の少年は明るく朗らかな感じだ。また、ふっくらとした頬が子供らしくかわいらしい。二人とも年の頃は十一歳かそこらぐらいといったところか。
「オルトの家はおばさんが料理上手だからいいね。うらやましいよ。でも、オルトってば前から思っていたけど食いしん坊さんだよね」
「ええっ!? 僕、食いしん坊なの? でも、そうだとしてもきっと家の父さんほどじゃないよ」
食いしん坊呼ばわりされて、オルト少年は少し心外だといった風情である。
「そりゃ、当たり前だろう? オルトの親父さんは体格が良くて、昔ご領主様のところに兵士として仕えていたくらいなんだからさ。今だって村一番の大男だしな。身体が必要としてるだけの話だろ?」
マーク青年に否定されてオルトは向きになって反論する。
「違うよ。爺ちゃんが言っているんだよ。あいつは食いしん坊だって。そもそも父さんが兵士になったのは食いしん坊が原因だって話だし」
「なんだ、そりゃ?」
「なんでも父さんは子供の頃から体格が良くて、マークさんくらいの年の頃に街へ買出し行ったときに、兵士に勧誘されたらしいんだけどさ。そもそも最初は兵士なんかやる気は無いって断ったらしいんだ。長男だから家を継がないといけないし、爺ちゃんたちにも反対されるからってね。でもある日、家に兵士隊の偉い人が来たんだって、それで『兵士になったら毎日腹いっぱい喰わせてやる』って言われたんだってさ。そしたら父さんの態度がころっと変わったんだって爺ちゃんが……」
「ええっ、そんなことで兵士になっちゃうの?」と、ニルス少年は驚いた様子である。
一方、マーク青年の方は納得がいかない様子で、しきりに頭をひねっている。
しかし、オルト少年はそういった性格なのか、あくまでもマイペースなのであった。
「そんな事より、早くイチゴを採りに行こうよ。日が暮れちゃうよ」と、彼はこの調子だった。
二人の少年は彼らよりも五、六歳は年長に見えるマーク青年に先導され、森の奥へと入っていった。いつも燃し木を採りに来ている森の入り口付近よりもずっと奥へと進んでいく。そのいつもとは違う行動に、まだまだ子供の部分が残っている少年たちは胸をどきどきさせていた。ちょっとした冒険気分とでもいうのであろうか、目をキラキラと輝かせている。
「オルト、見てよ、あれ。あの青い鳥。すっごく綺麗な羽だね」
木の上に一羽の小鳥が止まっているのを指差してニルス少年が言うと、
「いいなぁ。あの羽、欲しいなぁ」とオルトが答えた。
オルトの同意を受けて、「すごくいいよね。あの綺麗な羽をアクセサリーにして母さんにあげたら喜ぶだろうなぁ」と、ニルスは頷いた。しかし残念なことに贈る相手が母親なのが、まだまだ子供といった風で微笑ましい。
二人の少年たちがイチゴ採りに行くという本来の目的を忘れて別の方向へ行きかかっていた頃、マークは後ろについてきていたはずの二人との距離がだいぶ離れてしまったことに気がついて少し焦っていた。
「ちくしょう、あのガキどもめ」と、思わず汚い言葉が口をつく。
マークは仕方なく、樫やミズナラなどの木々の間の狭い道を戻った。
少し戻るとのんびりと歩く少年たちの姿がマークの目に入る。ほっと安心するのと同時に苛立ちを感じたのか、マークは怒った。
「お前ら、ちゃんとついて来いよ! 離れたら危ねぇだろう」
「だってマークさんてば、歩くの早いんだもん」と、オルト少年は相変わらず、のんびりしたことを言っている。
「何言ってやがる。どうせ余所見してたんだろう? やれ『かわいい兎がいた』だとか、『綺麗な蝶々がいた』だとか、そんなんじゃねぇのか」
マークの予想が当たらずしも遠からずだったためか、少年たちは押し黙ってしまった。
「……やっぱり。まあ、そんなもんだよな。昔の俺もそんなもんだったから人のことあんまり言えないけどよ。一応、弓だとか武器を持ってきちゃあいるけど、お前らまだ子供で身体が出来てないんだからな。大人みたいにはいかないんだぞ。大体、お前らだけでイノシシだの、熊だの、噂の森の奥に出るって言う一つ目の狼の怪物だのと戦えねぇだろう? 大人だってきついんだからな」
マークに叱られて二人の少年は思うところがあったらしく口々に反省の言葉を発した。すると青年は機嫌を直したらしく「分かればいいんだ。今度はちゃんとついて来いよ。俺のとっておきの場所に連れて行ってやるからさ」と、物分りのよいところを見せて、再び森の奥へと歩き出した。
少年たちはきちんと反省したらしく、今度はマーク青年の後を一所懸命についていく。しかし成長期真っ盛りの青年と、これから成長期に入る少年たちとでは、足の長さや体力の違いが歴然としていてどうにもならないもののようだ。体格の良いオルトの方はまだ元気があるようだが、身体の小さいニルス少年の方はすっかりへばってしまっている。
「マークさん、ちょっと休憩させてください」
すでに疲れが限界なのか、ニルスがそう訴えた。
「あと少しだからがんばれよ。着いたら休ませてやるから」と、事も無げにマークは答える。
「えっ!? 後ちょっとなの? 僕、がんばるよ。だからニルスもがんばろうよ。イチゴが待ってるよ」
そう言ってオルトはニルスを励ますと、イチゴを入れるための籠を背負いなおした。ニルスは何か言いたそうな目でオルトを見つめてから、一息呼吸を入れて、再び歩き出した。
しばらく無言で歩き続けると木々がまばらになって下草が増えてきた。出発前に比べてだいぶ日が高くなってきているからか、少し日差しがまぶしい。
「着いたぞ、ニルス。大丈夫か」
よく見れば周りの大きな木々の間にジャムイチゴの木が群生しており、そこかしこに赤いイチゴの粒があった。
イチゴを目にしてから瞬く間に元気を取り戻したオルトは、早速茂みからイチゴを摘んで頬張った。
「甘ーい。美味しいよ、ニルスもちょっと食べてごらんよ」
「僕はまだいいよ。オルトは本当に元気だね」
ニルスの方はオルトと違ってすっかりバテてしまったようだ。ニルス少年は地面に座り込んでしまっている。それを見てマークは革で出来た水筒袋を差し出してニルスに飲むように勧めた。
「飲めよ。少し落ち着くぞ」
「ありがとう、マークさん。でも自分もちゃんと水筒を持ってきたから大丈夫です」
そう言うとニルスは自分の水筒を籠から取り出して一口飲んだ。
一方、オルトはジャムイチゴにすっかり夢中になっていた。彼は次から次へとイチゴを摘んでは口にしている。大変元気な少年はイチゴに芋虫がついていたなどと騒いでいるのだった。
「おーい、オルト。全部喰うんじゃないぞォ」
「マークさんてば、ひどいや。いくらなんでもこんなに沢山生っているのを全部とか無理だよ。そこまで食いしん坊じゃないし!」
マークの冗談にオルトが答えると、一同は和やかな笑いに包まれた。
「しかし、オルトは本当に元気だな。やっぱりあの親父さんに似ているからか? といっても親父さんを超える武勇伝の持ち主になるのは無理があるけどな」
真面目にイチゴを摘み出したオルトを見つめながらマークが呟いた。
「確かにオルトのお父さんはすごい人ですよね。この辺りに住んでる子供にとっては英雄みたいなものだし」と、ニルスが受けあう。
「八年前、隣のエイヴォン村の近くに竜がでて大騒ぎになったのを、兵士隊の隊長として退治してきたっていうんだからな。かっこいいよなぁ」
十六、七歳ぐらいの年齢であろうマーク青年の八年前だと今のオルトたちより少し幼いだろう。しかしそういった武勇伝や英雄譚などに強い憧れを抱く年齢ではある。マークは竜退治を想像したのか少し興奮気味である。
「小型の竜だったとは聞いてますけど、それでも竜だからすごいですよね」と、ニルスが相槌を打つ。
「野犬一匹倒すのだって結構大変だしな。それを仲間と一緒とはいえ竜退治だもんなぁ。……っと、感心している場合じゃねえや。俺らもイチゴ採んねぇと日が暮れちまう」
「そうですね。がんばりましょう」
ニルスとマークは顔を見合わせてにやりと笑うと、それぞれイチゴの茂みに向かっていった。
「今日はいっぱいイチゴが採れましたね。これなら小さな樽で果実酒を作るくらいは十分にあるし、母さんも喜んでくれそうだ。来てよかったです」
そういってニルスは行きよりもだいぶ重くなった籠を背負いなおした。あの後、一所懸命にイチゴ摘みに励んだ成果がでて沢山のイチゴを採ることができた。イチゴが沢山採れたため、他の二人もホクホク顔である。籠が重くなって森の中の狭い道は歩きにくいけれども、心はあくまでも軽いのだろう。皆の表情は明るかった。
一行がミズナラの森の中を村へと向かって歩いていると、突然大きな鳥の羽ばたきが聞こえた。それを聞いてマークの表情が険しくなる。オルトとニルスの二人も緊張しているようだ。
「何か近づいてくるよ。マークさん」とオルトがいつになく硬い表情でいう。
木々の間からがさがさと音を立てて何かが近づいてくる。
一同が近づいて来る何かに身構えていると「おーい」と、呼びかける声が聞こえてきた。
しばらくして三人の前に姿を現したのは一人の娘であった。長い黒髪を後ろで一本の三つ編みにしており、青いチュニックにぴたりとしたズボンをはいたその姿はなかなかに勇ましい。
「マークじゃないの。イチゴ採りをしてきたのね。甘い香りがするわ」
「ああ、こいつら連れてけって頼まれてな。メリルこそ何してたんだ? こんな奥まで来て薪拾いはないだろうし」
メリルという名前で呼ばれた娘はマークとほぼ同年代くらいに見える。村の知っている人間だったということで、一行の表情はずいぶんと落ち着いたものになっていた。
「私はいつもの薬草採りよ。十分採れたから、もう村に戻るつもりなんだけどね」と、マークの質問にメリルは答えた。薬草採りはこの娘にとって日常茶飯事らしい。
「こんにちは、メリルさん。この間は妹がお世話になりました」と、今度はニルスが挨拶した。
「いずれは村の賢女になるのだもの。風邪を引いた人の面倒を見るなんて当たり前のことをしただけよ。元気になってよかったわ」
メリルはニルスに向かって優しげに微笑んだ。彼女は今の村の賢女に気にいられて次の賢女になるべく修行しているのだ。賢女とは村長と役割の異なった村の女性の指導者的存在である。賢女にとって村人の健康は気にかけてしかるべきことなのであった。
「それよりも一緒に帰っていいかしら? 犬たちと一緒だけより心強いし。ヒュー、ジョーおいで」
そういってから彼女が口笛を吹くと、二匹の犬が茂みを掻き分けて寄ってきた。
「ああ、犬と一緒だったんですね。確かに女の人一人じゃ危ないですよね。もちろん一緒に帰りましょう」と、オルトが頷く。
なんだかオルトの口調が妙である。頬も少し赤いようだ。若い女性を前にして照れているのであろうか。よく見るとメリルはかなり綺麗な娘である。長い髪には艶があり、綺麗に弧を描いた眉、切れ長で黒目がちの目をしている。男装していてもその女性らしさは隠せるものではなかった。
そんなオルトを見て思うところがあるのか、マークの顔が微妙ににやけている。面白いからかうネタが出来た、そんな顔であった。一方、ニルスの方はマークと違ってオルトの変化にあまり気がついてはいない様子であった。彼は根が真面目な子であるからだろうか。
村の辻まで来てメリルにお裾分けのイチゴを少し渡してから別れると、マークは楽しそうにオルトをからかい始めた。
「ふーん、オルトはメリルみたいなのが好みなんだな」
「なっ、いきなり何を言うんですか? マークさん」
純情な少年は真っ赤になってしまい、声が上ずっている。
「態度がバレバレなんだよ。しかし、メリルとはなぁ。俺の一コ上だぞ。お前って年上好きなのか?」
完全にマークは楽しんでいる。
焦りながらオルトは「からかわないでよ。年上とか関係ないでしょう? 男はみんな綺麗な人に弱いんだし」と反論する。
「確かにメリルさんって美人だし。オルトがポーッとなっても仕方ないような気がするけど……。でも、結構意外だったかなぁ」と、言ったニルスの発言はオルトをかばっているようでいてそうでもない。
「面食いも食いしん坊みたいに似るもんなのか? オルトのお袋さんも美人だよな。親父さん、どうやってあんな美人を捕まえたんだ。うらやましいぜ」
「え? うちの父さんと母さんは、母さんの実家のパン屋に父さんが買い物しに来て知りあったんだって聞いてるけど……」
オルトの何気ない一言に驚いてニルスが聞き返した。
「ええっ? おじさんってその頃兵舎にいたんじゃないの。兵舎で食事が出るんじゃないの」
「もちろん食事付きだよ。僕もそう思って父さんに聞いたら、兵舎の食事って量だけはあるけど味はイマイチなんだってさ。だからみんな休みの日に間食にする干し果物だとかを買いに街に出たりするんだって。支給のはまずいからってね」と、ちょっとばかり訳知り顔でオルトが答えた。
「ふーん。それで街のパン屋の看板娘と知りあったってわけか」
「うん。母さんがいうには、父さんがしょっちゅうパンを買いに来るんで兵士ってよっぽどお腹の減る仕事なんだなと思ってたんだって」
「その実、お袋さん目当てだったわけだな」とマーク。
「そう、だから父さんが花束持って『結婚を前提につきあってくれ』って言ってきたとき、びっくりしたんだってさ」
オルトの話を聞いて少し考え込んでからニルスが質問した。
「じゃあ、おばさんっておじさんのこと全然意識してなかったんじゃないの? なんで結婚できたんだろう」
確かにそうだとニルスの意見にマークも同意した。するとオルトはこう言った。
「なんかね。母さん曰く、大男の父さんが真っ赤になってプロポーズしてくるのを見て、なんかカワイイと思っちゃったんだって」
それを聞いてしばらく微妙な感じの沈黙が続いた。
沈黙が破られたと思えば「……そんなんで結婚しちゃうんだ、女の人って」と、ニルスは訳が分からないといった様子である。
はじめにオルトの両親の馴れ初めを聞きたがったマークも微妙といった感じの顔つきである。
「聞いたのはいいけど全然参考になんねぇな」と愚痴をこぼす。
愚痴をもらしたマーク青年に対して、聞き捨てならない事を聞いたとばかりにニルスが切り出した。
「マークさんは参考にする必要なんてないでしょう? ミランダさんと仲良いじゃないですか」
それを受けて誤解を解くべくマークは反論した。少し焦っているようにも見える。
「おい、何言ってやがる。あいつは幼馴染の腐れ縁ってやつでそんな仲じゃねぇぞ」
「え、そうなの? てっきり僕、マークさんはミランダさんと結婚するんだと思ってた」と、オルトはとぼけている。よく分からないがこれは先ほどまでの反撃なのであろうか。
「バカ野郎。俺の人生、勝手に決めるんじゃねぇよ。そもそもニルス、お前の方こそ気になる子はいないのかよ」
矛先が自分に向いてしまい戸惑うニルス。二人からどうなんだと詰め寄られてしまい、少々気の毒な感じもする。
ニルスはマークとオルトの二人の顔を見渡すと、ふっとため息をついてこういった。
「そんな子いないよ。女の子に興味を持つもなにも僕の家って鍛冶屋でしょ? 僕はそのうち村を出て、他所の親方の下で修行しないといけないんだし。一人前になるまでそんなこと考えられないよ」
ニルスの話を聞いて二人は真面目な表情をみせる。オルトもマークも農家の生まれであり、鍛冶屋の息子のニルスとは立場は違うがニルスの言っていることは十分に分かった。農家の人間は比較的に早く結婚を考えるし実際に結婚も早いが、修行に時間のかかる職人はそうではないのだ。そして、いずれニルスとは長いこと会えなくなってしまう。彼が修行を終えるまで、そうそう村に帰ってこられるものではないのも分かるのだった。
変なことを聞いてしまった、と謝る二人にニルスは言った。
「謝るようなことじゃないよ。謝られちゃったら僕も気まずいし」
「そうか……っと俺、早く帰らねぇといけないんだった。じゃあ、ここでな。納屋の修理をするんだった」
そう言って少々わざとらしいがマークは足早に去っていった。気まずさに耐えられなかったのであろう。
ニルスと二人きりになってしまったオルトは少し考え込むような表情を見せてから、いつになく真面目に話をきりだした。
「ねぇ、ニルス。徒弟に行くのっていつ頃になりそうなの?」
「うーん、あと一年くらいは先だと思う。普通十二、三歳くらいで徒弟になるんだとは聞いているけど。僕の成長次第かな。早くに徒弟になるのもいいけどあまり小さいうちからだと身体を壊したりするらしいから」
「そっか……」
しばし二人の間に沈黙が流れる。
「……あのさ、秋になったらまた森に行ってキノコ採りに行ったり、栗拾いしよう。また、マークさんに案内してもらってさ。それから……、それからさ、奉公に行っても手紙くれよな。僕、字下手くそだけどちゃんと返事書くから。あと……、あとさ……来年も一緒にイチゴ採りにいけたらいいな」
オルトはそういうと家の方向に向かって駆け出した。恥ずかしいのであろう、顔が赤い。一瞬だけ立ち止まりくるりと振り返ると、「じゃあな」といって走り去ろうとする。
「ありがとう」と、ニルスが叫ぶと、「友達だからな」といって今度こそ本当に走り去ってしまった。
オルトが去ってしまった後、ニルスは自分に言い聞かせるように、もう一度ありがとうとつぶやくのだった。