トイレの壁紙
「落ち着く」…なんだ、
この日めくりカレンダーの紙は?
オレの落ち着く場所をこんな紙に少しばかり占領され、紙には
(どん底に落ちれば落ち着く)
と駄洒落でもない、妙な味のある文字が書かれている。
なんか助けてくれんのかなぁ。みたいな文章だと思いつつ、何枚かめくると、
(考えてばかりじゃ 日が暮れちゃうよ)
なんだこれ、読んでる方がよっぽど時間の無駄遣いだろ。オレの落ち着く世界を紙の文字だけの世界に変えるな!
とか頭の中で文句を言う。
マァこれも楽しいが。
程なく、邪魔な日めくりカレンダー(昨日からママが掛け軸みたいにして便座に座ると目の前に見えるようにフックにぶら下げた物)をどけて本来の無地の「壁紙」をじっとにらむ。
模様に小さなデコボコがあるが……
あっ、見えてきた! やはり安らぎの地、トイレ。人間の生理現象を済ませる所ではあるが、本当の目的は他にある。
オレには楽しみがあるんだ。ウフフとニヤつく。
どれどれ〜今回は生き物を見つけてみようかな。
おぉ、サソリがいる!サソリの尻尾にカニのハサミが挟まって、サソリ痛そう。うわぁ〜、その下でリュウが口を開けて待っている。一飲みだな。
コレは?
あっ、コレ馬じゃない。
ユニコーンだ。上を向いててカッコいいなぁ。
あっ、それはダメ、ダメだよそれ! あっちも、骸骨から始まり、お化けや鬼……ダメ、ダメ。そっちに見えたらダメだ。目をつぶる。1、2、3、はいっ! もう一度、先程の位置から数センチ離れた所の壁紙を見る。
大きな海原に立つ少年。よく見ると、少年はイルカに乗ってヤリみたいなもの持っている。
おぉ、ロマンティックだね〜天の川。確か夏の星座だなぁ。
うん?いけない、生き物じゃないじゃん。そういえば骸骨も……ハハッ、まぁいいや、楽しければ。
かれこれ20分、トイレに座っていると、娘がトイレのドアを叩きながら「まだ〜パパ?」と催促。「あっ、うん、今出る」。「ったく、いつも遅いんだから」と娘が、トイレに入る前に捨てゼリフを吐く。ハイハイ、長くなってごめんなさいね、と声には出さない。
はぁ〜、落ち着いた。さあ、寝ようとベッドライトを消そうとしたら……おぉ〜、またイルカに乗った少年かぁ〜。今度は天井か〜とニヤついた。
娘に感想を持ちかけた。
娘からLINEあり。「おもしろ〜いコレ、パパはイルカに乗った勇者みたいに思われたいんでしょ。」
LINEを返す、「イェースと。」




