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学ぶことがない?休めば良いじゃないか

 






「で、あるからして」


 あれから数ヶ月、今日の授業も暇だ。

 学園の三年間は計算と文字の授業が大半を占める。

 それらが生きていく上で必要だからだ。

 その他にも授業はあるけど、僕にとってはどれも履修済みで退屈なものばかり。


 どうやら本当に僕とリベラを引き離すためだけの入学だったようだ。


「今日の授業はここまで。明日はテストがあります。皆さん頑張って下さい」


 漸く終わった……そして、待ちに待ったテストは明日だ!


 僕がここまで心待ちにしているのは、なにもこのクラスに相応しいと証明するためだけではない。

 テストの成績が良いと、自習の権利を得られるからだ。


「これで自由になれる…」


 もし、男爵領にいたままなら、鍛錬の時間だった。

 もし、男爵領にいたままなら、紅茶開発も出来た。


 そう。僕は偶然にも転生してまで得た貴重な時間を無駄にしていることが許せなかったのだ。


「ジーク?どうしたの?」

「え、いや。何でもないよ」

「そう。明日は楽しみね」


 この子は隣の席の物怖じしない子。

 僕の実力(せいせき)がどんなものか、僕よりも楽しみにしている稀有な存在。


「じゃあ、また明日」

「うん!バイバイ!」


 無邪気な笑顔で手を振ってくる。

 前世の小学生の頃の僕なら惚れていること間違いなし。

 そのくらいには可愛いし愛嬌もある。

 でも、今世の僕は目が肥えているので何も感じない。

 いや、庇護欲は掻き立てられるけど、それもテレスとは比べ物にならないくらいには低い。


 この世界の人はオーラの影響で丈夫な身体を持っている。

 つまり肌も綺麗だし、髪も傷んでいない。

 それどころか、人種の多様性の影響だろう。見た目の良い人が多いと思う。

 特に王侯貴族はそれが顕著に現れている。


 この子を10とするなら、同い年のあの王女様は50はあり、テレスは百億はあるだろう。


「今日の晩御飯はなんだろうな」


 そんなどうでもいいことより、今日の学食だ。

 といっても、多額の寄付をしている貴族の子弟には、部屋まで食事が運ばれてくるサービス付き。

 これもトラブル回避のためでもあるんだろうけどね。


 僕は夕食を心待ちにして、寮の一人部屋へと戻るのであった。









 テスト当日。

 テストは全部で5教科あり、算数(計算)、国語(読み書き)、社会(国内情勢と歴史)、技術(建築や石切)、選択教科の体育(剣術)と家庭科(裁縫、調理)がある。

 技術は年内二回しか授業がなく、この前行った石切体験の授業がテストそのものだから、実質四教科分のテストを本日受けることとなる。


 怪我のリスクのある体育と、お腹を壊す可能性のある家庭科が最後。


 僕が選択したのは家庭科。

 裁縫は得意でも苦手でもないけど、調理は前世からの趣味だからね。


 そして最後のテスト。


「ジークくん…それは何?」


 使える食材は決まっている。

 今回の材料を見た時、僕の作る料理は決まっていた。


「凄い…黄色のボールみたい…」

「見て!赤い血で絵が描いてあるよ!」


 クラスメイト女の子達が、僕が調理したものを見て興奮している。


「ジ、ジークリンドさん。これは一体…?」


 先生も驚いている。

 どうやらこの国ではあまり馴染みのない料理みたいだね。


「これは『オムライス』という料理になります」


 そう。僕が作ったのは、オムライス。

 卵とトマトが見えたから、すぐに「これだ」って思っちゃうよね。


 僕は前世でも自給自足に近い生活をしていた。

 だから、単純な物や野生味溢れる料理は割と得意だったりもする。


 この国ではまだお米を見たことがなく、使ったのは雑穀。

 だから正確にはオムレツなんだけど、気持ちはオムライスだからそう伝えてしまった。


「雑穀と刻み野菜をトマトソースで炒め、出来上がったものを焼いた溶き卵で包み完成です」


 胡椒は高級品の為、ここにはなかった。

 代わりに塩とバターで味に深みを与えた。


「さ、採点します」


 事前に聞いていた説明だと、片付けを含む調理の手際、それと味を半々に採点すると聞いている。


 かくして、僕は家庭科でも満点が確定するのであった。












「凄いね!満点はジークだけみたいよ!」


 活発少女ことカトリーナが、校内に張り出された試験結果を伝えてくる。

 僕はまだ見てないけど、見る必要もなくなったね。


「そう。じゃあ、これで次のテストまで休めるね」

「え……授業に出てこないの…?」

「そうだよ。必要ないからね」


 それでも寮からは出ない。

 住むところもないから……


「…そう。何をするの?やっぱり、遊びまくるの?」


 まだ立ち話を続けるのか……


「修行やまだ経験していないことを探すよ」

「…凄いね。敵わないよ」


 ごめんね。遊び盛りの君達とは感覚が違うんだよ。

 僕もそう出来たなら良かったけど、こればかりはね。


「じゃあ、先生に休学届を出さないとならないから。また次の学期で会おう」

「バイバイ」


 学園の一年間は三学期に分けることが出来る。

 それぞれ四ヶ月で区切られ、その中には一ヶ月間の長期休暇も含まれる。


 長期休暇を得るためには期末テストで規定以上の結果を出さなくてはならない。所謂赤点だね。


 赤点を取っても休みが少なくなるというだけで、留年というものは存在しない。

 次の生徒が入ってくるからそのスペースもなく、資格というものはないけど、身に付かなければその人個人の問題として捉えられる。


 職員室に着くと、担任へ休学の申請を行う。


「そうですか。わかりました。確かに、貴方から学ぶことはあれど、貴方に学ぶことはないですものね」

「いえ。ここにも学びはありますが、ここは何でも揃っている王都です。他のことも学びたいので、その為の休学にします」


 学ぶことは確かにあった。

 この国の人々の暮らし。

 それを実体験で聞けるのだから、それは収穫だった。

 家庭科で見せてもらった数々の郷土料理もその一つだ。


 許可を得たので、僕は寮へ戻り、準備を整えて学園の外へ向かうことに。












「凄い…ここが王都…」


 王都へは何度も足を運んでいる。

 しかし、平民が暮らすここにはまだ来たことがなかった。


「一体、ここに何万の人々が暮らしているのだろう…」


 この日のために学園生活を我慢してきたと言っても過言ではない。

 事実モチベーションを保つ為にも、休日に外へ出掛けたりもしてこなかったのだから。


 明日から長期休暇ではあるけれど、僕に男爵領へ帰るつもりは初めからなかった。

 手紙でその旨を伝えたところ……

『次の休みには必ず帰れ。じゃないと、リベラを抑えられない。わかったな?』

 と、返事があった。


「帰るのもタダじゃないんだけどね…」


 移動には金がかかる。

 それも、前世とは比べものにならない程に。


「走って帰ろうかな…いや、でも。それがバレたら……」


 待て待て。今は王都観光が最重要事項。

 全ての雑事を忘れ、景色を堪能する。


 大通りから二つ筋の離れた通りだけど、まるで歩行者天国のように人で溢れかえっている。


 道の両端には露店や店が立ち並び、とても活気に溢れていた。


「建物は男爵領と変わらないね」


 殆どが木造建築で、少数ではあるけど、煉瓦と漆喰で造られた建物も見られる。

 男爵領との違いは、その圧倒的な物量。


 兎に角、人も物も多いのだ。


「…残念だけど、貴族街の方が僕の好みかな」


 ここはまるで海外の市場のよう。

 貴族街は北欧の綺麗で穏やかな街並みといった感じ。


 同じ都会でも、二種類の都会を楽しめるのはお得だね。


「さて。次は、大聖堂とギルドだね」


 次に向かうは観光名所でもある大聖堂。

 そして、異世界あるあるの冒険者組合だ。








「え?見学時間外だから、入れない?」


 大聖堂はとても大きく、見応えのある外観をしていた。

 地球のそれと全く遜色なく、どうやって作ったのか不思議である。


 しかし、内覧は出来なかった。

 有名なステンドグラスを拝みたかったけど、それはまたの機会に。


「次は遂に冒険者組合。カーバイン達の故郷の様なもので、僕はあまり興味がなかったけど……

『ものは試しだ。王都にいる間に、顔くらい出してみたらどうだ?』

 と言われれば、食わず嫌いもどうかなと行ってみることにした。







「ここはガキの来るとこじゃねぇ。帰りな」


 ギルドに入ると、そこは僕の想像通りの場所だった。

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