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一閃確殺流の極意

 






「うーん。イマイチわからないですね…」


 これまでオーラに限り並々ならぬ才能を発揮してきた僕だけど、これには参った。

 感覚が全く掴めない。


「オーラを外に出すのではなく、広げるイメージだ」

「そうは言いましても…」


 今教わっているのはアルバートが修めている流派である一閃確殺流の基礎。

 基礎であり奥義でもあるらしいけど……

 出来なきゃ基礎も奥義も意味がない。


「ジーク。お前は自身のオーラを認識できているか?」

「え……恐らく。ですが文字通り感覚のこと。他の人と比べようもないので、確信はありません」

「これを感じるか?」


 そう言うと、アルバートは無手を僕の前に突き立てた。


「ぎゃああああっ!?」


 胸を貫かれた!!


 …え?何に?


 アルバートは何も持っていない……


「どうやら、感覚はあるらしいな。だが…これは…」

「はぁっはぁっはあぁ……一体…何、を?」


 痛みはない。

 あったのは、胸を剣で貫かれた感覚のみ。


 僕は息も絶え絶えに問う。

 そしてアルバートが口を開く前に、それは現れた。


「ジークっ!?大丈夫!?」


 無傷の僕を抱きしめてアルバートから引き離したのはリベラ。

 そして僕の無事を確認した後、鬼の形相でアルバートへと向き直る。


「む…」

「アルバート様?言いましたわよね?ええ。私はきちんとお伝えしました」

「いや…これは…」


 怯えるアルバート。

 普段であれば僕が大喜びするシチュエーションだけれど、今回は助け舟を出す。

 今は知りたい気持ちの方が強いから。


「母様。大丈夫です。さっきのは、腹の底から声を出す鍛錬だったのです。

 心配をかけて申し訳ありません。

 僕はこの通り元気ですので、また何かあったら助けて下さい」


 最後の言葉はアルバートへも向けた言葉。

 あまり扱きが厳しいと、いつでもリベラを召喚するぞと。


「…そう。ジークがそう言うのであれば、今回は引き下がります。わかっていますね?アルバート様?」

「じゅ、重々承知している」


 アルバートは母様が苦手。


 理由は単純。


 アルバートは人の話を聞かないが、リベラは僕のことになるとそれ以上に頑なだからだ。

 剣聖を前にしても、さらに圧力を強めて前へ出る。

 その胆力が僕にあればと、無いものねだりをしてしまうくらいに『母』は強い。


 リベラが去っていくと、質問の続き。


「それで?何をしたのですか?」


 あの感覚は間違いなく刺されたもの。

 ただ、痛みだけがなく。


「単純だ。外に広げたオーラを剣の形にして、ジークのオーラを貫いたまで」

「僕のオーラを?」

「そうだ。オーラは使っていなくても身体の中にあるもの。それを貫いたのだ。

 理由は・・・」


 僕が自分のオーラを感知出来ているか試した。

 そう。

 理由はわかるんだけど、一言あってもよくない?


「感知出来てたでしょう?」

「ああ。しかし、感知し過ぎている」

「し過ぎ……悪いことなのでしょうか?」


 僕は、オーラに敏感なのかな?


「正直、わからん。ここまで過敏な反応は初めてだからな。しかし、オーラの扱いが子供のそれではないジークが切っ掛けさえ掴めないのだ。

 それが枷になっている可能性は十分にある」


 と言われても、もうどうしようもない。


 恐らくだけど、僕は身体の中の異物(オーラ)に誰よりも早く気付いてしまった。

 それは、前世にない感覚だったから。


「もしかしたら、生まれた時から身体の中に当たり前に感じていた(ある)ものを外へ広げる行動を、脳内(こころのなか)で自然と抑止しているのかも……わからないですけど」


 心臓の鼓動を意識して止めたり早めたりするのが出来ないのと同じで、無意識化で外には出せないものと脳が捉えているのかも。


 オーラを問題なく射出出来るのは、手を切れば血が出るように、穴があるから出来る、と。


「おい…その口ぶりだと、お前は……赤子の時からオーラに気づいていたのか?」


 しまった!


「まあ、いい」


 いいんだ……言い訳しなくて済むならそれはそれで有難いけど。


「兎に角、ジークは身体の外へ伸ばせるように修行しろ」

「わかりました。因みに、他の人達はどれくらいでこれを?」

「ん。五年くらい…だな」


 無理じゃん!

 そもそも、無理じゃん!












 前提のおかしな修行を続けて数ヶ月。

 今日は待ちに待った日。


「お帰りなさいませ。貴方様」

「お帰りなさいませ。カーバイン様」


 普段貴族家には、『おかえり』や『ただいま』の挨拶はない。

 けれど、遠い旅の終わりでは話は別。


「ただいま帰還した。皆、元気そうで何よりだ」


 二人の愛する妻に迎えられたカーバインは、一人一人と言葉を交わす。

 それが終わると旅の汚れを落とし、晩餐が始まる。




「ジーク。やれるだけのことはした。後は報せを待つだけだ」


 宴も酣(えんもたけなわ)

 盛り上がる家人達を他所に、カーバインが報せを齎してくれた。


「在庫は捌けましたか?」

「ああ。持って行った分は全部配った」

「え…他の貴族家の方全員とお会いできたのですか?」


 カーバインへ預けた紅茶のサンプルは、貴族名鑑に記されている家名の数と同等。

 しかも会うだけでは渡せない。

 話をして、どう言うものか伝えないと意味がないからだ。


 それを…全部?

 その労力を想像すると、俄には信じられなかった。


「まさか。偶々、王族の方が一つ受け取ってくださったから、それならと王族の皆様へ一つずつ献上させていただいたのだ」

「凄いですね。王族に知古の方が居られるなんて」

「そんな知り合いはいない。お前の所為だ」


 僕の…?


「まあ、それはどうでもいい。問題ないだろう?」

「どうでもよくはありませんが、聞いたところで碌な話ではないでしょうから。

 問題はないどころか、王族の誰か一人にでも紅茶を気に入っていただけたのなら……」

「なら?」


 もし、そんなことになったら……


「今の製造では生産が間に合わなくなるでしょうね」

「マジか…」

「ええ。一大産業となるでしょう」


 そうなれば、最早町の景気とかの次元ではない。

 何処か大きな所から、必ず報復される。

 その心配をしなくてはならない。


 前世でも今世でも、出る杭は打たれるものだから。










「どうですか?」


 やって来たのは、新たに建てた紅茶工場。

 唯一ここの仕事を把握しているおば…お姉さんへ進捗状況を聞いた。


「今の所は問題ないね。簡単な作業だから当たり前っちゃ当たり前だけど」

「そうですか、機密は保持出来そうですか?」

「それは最初に伝えてあるよ。それにこれだけの給金を貰ってるんだ。恩も感じているだろうし、金じゃ誰も口を割らないだろうね」


 組織を狙うなら末端から。

 ここで働く人には少なからずそうした危険が伴う。

 まだ売れ始めたばかりだけど、防衛は始めていかないと手遅れになるからね。


「今年の売り上げ次第ですが、来年には皆さんにここから近い所へ引っ越してもらうことになるかもしれません。

 勿論、家はこちらで用意しますので、そういった心配は無用です」

「引越し?別にみんな家は町中だから、今のままでも…」

「皆さんとそのご家族の安全の為です。勿論『もしもの為』という程度なので、ご安心を」


 脅し過ぎてもダメだ。

 適度に気を配る程度に。


 工場を見渡すと、作業をしている人が五人確認出来た。

 これまでは全ての工程をこのお、お姉さん一人に任せていたけど、これからは分業制。


 生産効率が上がり、品質の差も減るだろう。


 ここからが、正念場だ。


 頑張れ。

 領主様(カーバイン)



 え?僕?

 僕はまだ子供ですから……

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