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たとえばリアルロボットアニメのお約束  作者: アニメだいすき
ACT.2 その出会いは運命だから...
5/8

その出会いは運命だから...(1)


 崩壊したスペースコロニー〝ヘクセンハウス〟を脱出した連邦宇宙軍強襲巡洋艦コモンウェルスは、地球連邦からの分離独立を唱え武装蜂起した(アルメ)-(ブランシェ)の一連の蜂起による混乱を逃れ、中立を宣言したコロニー〝ペデスタル〟を目指している。

 そこでヘクセンハウスで収容した民間人を受け入れてもらうためだ。


 初の実戦を潜り抜けたという艦内はようやく落ち着きを取り戻し、正式に俺の指揮下に入ったリオ(リオネルのリオ、な)は、暇さえあればRAデッキに顔を出すようになっている。


 それはつまり、覚悟を決めた、という線で動いているんだろう。


 もう一人、ラウラの方も、いろいろなものを引きずる様なことはなく、至って普通に振舞っている。元々ガサツ…──(ドス!)……うぅ……。



  *


 ラウラはRAデッキに飛び込むや首を振って周囲を見渡した。

 作業用仮設通路(キャットウォーク)にリオを見つけると、そのしなやかな脚を振って身体の向きを変え、手すりから身を乗り出すようにしてリオの方へと自分の身体を押し出した。艦内は無重力だ。


 リオは作業用仮設通路(キャットウォーク)の上に幾つかの電子機器を広げ、何処かから調達してきたタブレット端末を繋いで何かのチェックをしていた。作業用仮設通路(キャットウォーク)の手すりに手を伸ばして制動を掛けたラウラは、猫を思わせる身のこなしでリオの傍らに降り立つと彼に戦闘糧食(レーション)のチューブを指し出した。

 顔を上げたリオの視線と、ラウラの勝気なそれが絡む。リオは気後れした様子で手を伸ばした。


「食事……ちゃんと取りなさいよ」

「…………」

 しばし、どんな顔をしたらいいのか悩むふうだったリオだったが、それでも〝感じのいい〟声になって応えた。「──ありがとう。……後で食べるよ」


 ラウラは、そうして彼が手に取ったチューブの端を放さなかった。

「…………」

「…………」


 ──どうやら彼女としては、〝喧嘩を売っている〟という意思表明らしい。


 それには〝気付けなかった〟という態のリオが怪訝な表情になって見返すと、ラウラはようやくチューブの端を放し、踵を返してその場を離れていく。

 無重力の作業用仮設通路(キャットウォーク)を流れて行きしな、猫のようにしなやかに振り見やりつつ、次のようなことを言い捨てていくのを忘れない。


「この前あんたに助けられたのは、たまたまなんだからね。自分がまともに訓練を受けてない素人だってこと、(わきま)えなさいよ」


  *


 …──と、まぁ目下の所のラウラと(リオ)との距離感はこんな感じだ。



 なるほど……。

 〝民間人が戦場に立つことに苛立ちを募らせるプロフェッショナルな年上の女性〟……という線の役造りなわけか……。

 1章の後、しつこいくらいに〝生年月日〟──彼女はリオより1ヶ月と2週間、早く生まれている…──の設定にわかりやすく食いついたからなー。


 だが残念ながらそれは成功していないよ。

 どう見ても、〝お姉さんぶりたい幼馴染が背伸びしている〟という感じにしかなってない。

 そもそも凸凹が少ない体形(ほぼ幼児体形)で、顔立ちも幼すぎる。


 どうやら彼女の努力は、何らの実を結んでないようだ。まる。



 それはさておき…──。

 ラウラの姿が消えてから、俺はリオの方へと無重力の作業用仮設通路(キャットウォーク)の上を浮遊していった。

 彼の傍らで手摺に掴まって制動すると、小さく声を掛ける。


「おい…──」

「なんです……」


 リオは作業の手を緩めるでなく面倒そうに応えた。

 その態度に面白くなくなった俺は、本題に入る前にちょっと揶揄ってやることにした──。


「いい雰囲気になってきてるじゃないか……色男」

「…………」 リオは手を止めた。

「何を見てたんですか? 主人公にヘンな対抗意識を燃やす、憐れなモブの一人ですよ、アレじゃ……。おかしなフラグが立たなきゃいいですけどね」

「ほー、そうかね? 大きな声じゃ言えないが、あの戦闘糧食(レーション)な……、わざわざオマエの好みの味、リサーチしてたんだぞあのコ。結構可愛いトコ、あるだろ?」


 俺がそう言うと、リオは慌ててその手のチューブのパッケージに目を遣った。

 ──それはチョコレートケーキ味だった。


 そんな様子にニヤつく俺 (これも〝役割〟だ)に、微かにリオは頬を赤らめた。……コイツも大概中坊並だ。


「……リ、リサーチって、いったい誰にですか?」

「──…俺」


 途端、リオは複雑な表情(かお)になって何度も頷いて電子機器の方に向き直った。

 これで手打ちにすることにした俺はようやく本題に入ることにする。



「で……そろそろ〝アレ〟だろ? いや〝あっち〟の方かも知れんが……」


 リオが面倒そうな目線を再び返して言ってきた。

「……でしょうね」

 露骨に〝腰が引けている〟感じだ。


「〝準備〟はできてるんだろうな?」

「ええ、まぁ……」

 リオは憂鬱な表情(かお)のまま、手元のタブレット端末に視線を落とす。


「なんだどうした? 〝アレ〟の方はともかく〝あっち〟の方は完全に役得じゃないか。え?」

「…………」


 だがもうそれ以上は乗ってこない主人公に、俺は肩を竦めてこの場を退散することにした。


 主人公だけが感じることになる重圧(プレッシャー)だ。

 そんなものを抱える主人公という役割を、俺は羨ましいとは思わない。



  *


 さて、この章では軍艦の艦内を離れ、中立コロニーという〝街〟が舞台となる。

 そこで描かれるテーマは2つ。

 その2つの何れにせよ、街が舞台とあらばそれはつまり〝出会い〟である。


 クリス中尉とリオの言うところの〝アレ〟と〝あっち〟とは──


 〝アレ〟とは好敵手(ライバル)との初手合わせのことを指し……

 〝あっち〟とはヒロインとの馴れ初めのことを言っている。



 好敵手(ライバル)であろうとヒロインであろうと、彼らは一方的に現れて主人公と出会う。

 そう、それは〝運命〟だから。

 そしてこの出会いが物語を動かすのだ。 ……〝運命〟だからね。

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