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たとえばリアルロボットアニメのお約束  作者: アニメだいすき
ACT.4 この宇宙を駆け抜けて...
13/16

この宇宙を駆け抜けて...(1)


 ラウラ・コンテスティ少尉によってもたらされた奇妙な手土産……連邦軍の戦艦の中で死んでいた(アルメ)-(ブランシェ)の将校と思しき人物の所持していた機密文書は、リオネル(リオ)らの母艦コモンウェルスの置かれた状況を一変させた。


 (ラウラ)に直接それを手渡されたフェリシア・コンテスティ特務大尉相当監査官は、古めかしい様式の紙媒体の書面に目を通すや、妹を始めとする救助活動の関係者全員に箝口令を敷き、自らは艦長公室へと消えた。


 80分程の協議が終わると、艦長はフェリシアと副長を伴って艦橋に戻り、月の周回軌道に針路を取るよう命じた。


 敵の次なる作戦目標が判明したのだ。


 (くだん)の機密文書によれば、(アルメ)-(ブランシェ)とそれに呼応した連邦軍内の一部勢力は、宇宙軍月鎮守府の置かれた月面都市〝マルヤム〟に対する大質量兵器の投入……〝コロニー落とし〟を画策しているという。

 ──…質量弾として用いられるコロニーは、リオらの暮らしていた、あの〝ヘクセンハウス〟であった……。


 各ラグランジュ点に点在するコロニーへの防衛出動で艦隊は出払っており、加えて月面への質量兵器による直接攻撃など予想だにしていなかった連邦宇宙軍は、組織的な防衛作戦を取ることができないでいる。

 フェリシア・コンテスティ特務大尉相当官並びにコモンウェルス艦長の連名による報告を受けた総軍司令部であったが、その指示はいっそ簡潔だった。出撃中の各艦隊・戦隊が各個に判断・対応せよ、とのものが現場に送られてきただけである。


 そんな命令に従いコモンウェルスは、近隣に展開する友軍艦艇との連絡を密にしつつ〝ヘクセンハウス〟との接触を急ぐ。


 ──途中、地球圏の巨大企業体(コングロマリット)カンバーバッチ()インターナショナル()〟の所有するドック補給船〝フォート・ヴィクトリア〟と接触(ランデブー)し、補給・補充が行われることとなった。



  *


 ──…〝謎空間〟にて。


「中尉ー……これまた随分と慌ただしい展開になりましたねー」

「まー、これはアレだな……」


 側らの少年──リオネル(リオ)・アズナヴールの、その棒読みの台詞に、俺──クリストファー・レイノルズも気のない声音で返した


「…………」

 そんな俺にリオは、もう既に知っている答えを確認するように訊き返してくる。「──…やっぱアレですか……?」

「そう……アレ…──〝最終回〟。

 だからそれっぽくやたらスケールのデカい話になってるんだろ? 畳み切れなくなった部分は残して【第1部・完】、てとこなんじゃないか」


「…………」

 理解はしなければならないが納得はし難い、というふうな表情の彼に、俺は面倒そうに声を上げる。

「仕方ないの!こういうのはっ。新規に読んでくださる方を開拓できないのは、(ひとえ)に作者の力不足……オマエの所為(せい)じゃない」


 打たれ弱い主人公の心が折れるよりも前に、俺は何とか話題を変えてやる。(ほとんど条件反射だ。)

「それよりリオ…──オマエ、前回のラストでラウラに何やってんだ」


「……何って…──何です……?」

 リオはわざとらしく訊き返してきた。

 この期に及んでこんな気の抜けたふうを装ってみせるとは……。

 だったら俺は、と、()()()()に放り込んでやった。


「オマエの〝プレゼント〟な、あれじゃ()()に〝フラグ〟だろーが」


 途端にリオが、バツの悪くなったふうの、何とも言えない表情(かお)となる。

「な、なんで知ってるんです?」


 俺は、いよいよめんどくさそうな表情(かお)になって、艦内のハンガーデッキに配置されている人間の誰もが知る、周知の事実を教えてやる。


「知ってるも何も……人目は気にしてるが、軍服のスカーフを崩してあれで留めたりしてみて鏡の前で笑顔作ったりしてるぞ、当人が。ありゃ、もー、相当に舞い上がってる」


「…………」

 リオの方はいよいよ情けない表情(かお)となった。

 まぁ、少し溜飲が下がった俺は、真面目な表情になって部下でもある主人公に言う。

(……しかし昭和や平成初期の作品か?という演出だな、コレ。)



「ま、あれはあれで年齢相応に可愛いは可愛いがね……オマエ、ちゃんと責任は取れよ」

「責任て……」

「しっかり生きて話を終えろ。俺はあのコに泣かれるのはごめんだからな」


 慌てたふうに顔の朱くなったリオにそう言うと、俺は〝謎空間〟を後にして、補給と補充のため〝フォート・ヴィクトリア〟に接舷し(にわ)かに忙しくなった艦内(コモンウェルス)へと戻った。



  *


 1時間程の後──。


 強襲巡洋艦コモンウェルスがドック補給船フォート・ヴィクトリアとのドッキングを終えると、リオは艦長とフェリシア、それにクリス中尉と共に、ドック補給船の船長室へと赴くこととなった。

 そして(リオ)は、そこである特別な機体(RA)に乗ることを求められることとなる。


 RA-X13〝ディース・パテル〟

 新設計の大型のフレームにジェネレータを2機搭載した重RAで、全方位的にピーキーに仕上げられたその機体特性から、搭乗者には〝特別な適正〟が必要とのことであった。


 つまり〝国家の子供ナショナル・チルドレン〟のために建造された機体ということであり、リオの素性について調べが付いた上での指名、ということだ……。




 フォート・ヴィクトリアの船長室は、軍艦のコモンウェルスの艦長公室よりも造りが広いくらいだった。

 室内には9人──リオ、フェリシア、その秘書、コモンウェルス艦長、同副長、〝(クリス)〟……フォート・ヴィクトリア側から船長、副長、そして新型試作RAの専任技術士官。


 先に状況の確認は終わり、次に試作RAについての説明が始まる。

 開発の経緯や想定される運用、要求機能の概要といったものはともかく、細かなスペック(仕様)については座中のほとんどの人間にとって実は関係がない。実際、理解できないからだ。(……かく言う俺も、理解したことは〝すっげー機体〟だということくらいだ。)


 とは言え、次の一点については座中に明確に共有されている……。


 この〝すっげー機体〟は強化されたパイロット……即ち〝国家の子供ナショナル・チルドレン〟にしか扱えない。

 そして、リオネル・アズナヴールは〝国家の子供ナショナル・チルドレン〟である。



「……いつから、僕の素性を?」

 技術士官が最後の言葉を締め括ってから程なく、リオが口を開いた。

 そのリオの問いに、俺は目を伏せる。


 ──そりゃオマエ……、あんだけ派手に活躍してみせたら、目立ってしようがなかろーが……。


 とは言え、室内が重苦しい空気に包まれる中、リオのその問いに真面目に応えたのはフェリシアだった。


「情報部を甘く見ないで」

 フェリシアのその言の間に隣に座る秘書が神妙な面持ちで会釈した。(そうか……コイツ情報部附きだったのか)

「そもそも貴方達〝国家の子供ナショナル・チルドレン〟は当局によって完全に追跡・観察されている。逃げ(おお)せることなんてできやしないわ」


「──僕は……『パン屋の1ダース(ベイカーズダズン)』、〝規格外品〟だと思ってましたが」


 暗い声音のリオに対し、フェリシアは淡々と言う。


「貴方の開発者(お父様)は、カンバーバッチ・ケミカルによる〝国家の子供ナショナル・チルドレン〟の非合法な製造が当局から摘発を受ける前に、そうなることを予め見越して貴方を廃棄という体裁で手元に置いた。

 でもそれは、貴方が当該のロットの中で最も優れた個体だったから──〝兵器〟としての可能性に最も溢れた、ね。

 だからお父様は、連邦当局と取引をなさった……」

「取引?」

「当局は貴方の存在を秘匿し、お父様が自由に貴方を育成するのを黙認する。ただし、所在は常に追っているし、その成果については定期的に報告を受けていた。

 そして有事が発生すれば、貴方の〝所有権〟は当局に移る……そういう取り決め。

 貴方の命運は、実は貴方の与り知らないところで決められていた。……接収か、破却か…──」


「破却……」

 リオの意識が過去に跳び、脳裏に甦った〝あの日〟の情景に何か合点がいった、というふうな声を上げた。

「──それで……家が……吹き飛んで…… 破却に失敗したってわけか……」


 リオは、乾いた声で笑い始めた。



 ──…非道(ひど)い話だ。人権も何もあったもんじゃない……。



 ひとしきり笑った後で、リオは抑揚のなくなった声でフェリシアに質す。

「それで、今度は僕に、このゴツイRAに乗れ、と……」


 フィリシアは、(にべ)なく答えた。

現状(いま)は稼働できるRAは1機でも欲しい、という艦長とクリス中尉の進言は正しいと判断した」


 俺は、再び視線を下ろす。


「随分と勝手ですね……」

 孤独なリオが呟くように言う。

 フィリシアは腕を組み直して応じた。

「勘違いしないように。貴方は選べる立場にないわ。

 どの道、このまま手をこまねいていればヘクセンハウスがマルヤムを直撃する。多くの市民が死ぬわね」


 ──…なるほど。リオの性格を考えれば、これで〝チェックメイト〟か……。大人は汚い。


 案の定、リオは投げ遣りな溜息を吐き、フィリシアを向いた。


「ひとつ……訊いておきたいことがあります」

 フィリシアが目で先を促がすと、リオは複雑な表情(かお)でこう訊いた。

「ラウラは、このことは……?」


 訊かれたフィリシアは、きっぱりと答えた。

「彼女は知らない。知らせるつもりもないわ」


 それでリオは、最後にもう一度息を吐くと、黙って肯いて返した。

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