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たとえばリアルロボットアニメのお約束  作者: アニメだいすき
ACT.3 歯車は回り始めて...
10/16

歯車は回り始めて...(2)


 ……さて、引き続き、相討ちとなって双方大破した機動兵器(RA)から脱出したラウラと、敵パイロットのシーンの続きである…──。


 たまたま先の戦闘で破壊・放棄され難破していた宇宙戦艦の残骸に逃げ込むこととなったラウラであったが、同じく逃げ込んできた敵パイロットとの間で0G下での銃撃戦となる。

 そして、技量・経験・身体能力のすべてに優る相手に翻弄されながらも、難破船の中で、まだ気密と動力を維持していると思しきブロックを見つけるラウラ。

(しかし謎の組織の武装蜂起の直後に、なんで主力艦クラスの宇宙船が放棄されるのだろうか……。考えてはいけないところだな 。……まる)


 一縷の望みに賭けて、銃撃を躱しながらエアロックのハッチを解除したラウラが飛び込むと…──、


「え…⁉ ……うそ……なんで? どうして……?」


 ──…ハッチの中は……()()〝謎空間〟が、広がっていた。



  *


 背後から声を掛けられた。

「──…私が用意してもらったの ……あなたと話がしたかったから」


 振り返ったラウラの視線の先には敵のパイロットスーツがあって、ラウラが飛び込んできたハッチを潜って、この〝謎空間〟に入ってくるところだった。


 パイロットスーツ (小柄で女性と思える)はラウラの前に流れてくると、もどかしそうに自分のヘルメットを外して頭を振った。

 そうすると長めの髪がスルリと流れ落ちて、それから小さく整った造形の貌の周りに広がった。


 ──ペデスタルの、あの商業施設で見覚えた顔……。

 あの暗い髪色(ブルネット)の、メレディスと共にいた美しい貌の少女だった。


  *


 〝謎空間〟──ここは、〝この物語〟の中で自分の役割りを理解して(わかって)いる登場人物だけが入れる場所だ。

 彼らは、ホンネをぶちまけたいとき、しばしばココを利用する…──。



 少女の屈託のない──作中世界でカメラが回っているときとは随分と印象の違う…──笑顔で、ラウラを見上げている。

 え? こんなに明るいんだ、このコ……。


 その少女の目が、ラウラにもヘルメットを取れば? と小首を傾げるように告げていた。

 ラウラは、目の前の少女の勢いに負けて、ヘルメットを外した。


「え、と……なんで──」 言いしな、ラウラはこの少女の名前を知らないことに気付く。「──…〝あなた〟が……ここ(謎空間)に?」


「ミレイアよ…──ミレイア・ダナ」


 暗い髪色(ブルネット)の少女はにっこりと笑って──そうすると、パッと画面が華やいだようだった…──右手を差し出してきた。

 何なの? このコ ……ぜんぜん〝感じ良い〟じゃない。


「──リオネルの口が堅くてさー、ぜんっぜん進展の方、教えてくれないの。だから、直接あなたに訊きに来ちゃった♡」


 笑顔が素敵な美少女と戸惑ったふうな表情のラウラとの対比(コントラスト)…──。

 リオネル……? 

 え?

 …──いったい、どういう関係……?


 とりあえず差し出された右手を握ると、ラウラは目の前の屈託のない顔に訊いた。

「えー…と…──〝進展〟……?」

「ミレイア──」

 少女は自分のファーストネームをもう一度念押しして頷いて見せると、意味あり気な視線でラウラを見返した。

「もちろん、あなたとリオネルのよ」

「ごめんなさい。話がよく見えないのだけれど……?」


 素で怪訝な表情かおとなったラウラを、少女──ミレイアがしげしげと見やる。

「ふーん……」 それからミレイアは面白がるふうに笑った。「…──ホントに進展してないのね」


 その言い方にラウラは、さすがに〝ちょっと面白くないかも〟と、軽くむくれてみせたのだが、ミレイアの方はまったく動じることなく問いを重ねてきた。


「じゃ、プレゼントは受け取ってない?」

「プレゼント……?」

 そんなもの、ラウラには心当たりはまったくなかった。

 それがそのまま表情(かお)に出ると、ミレイアが目敏く反応してくる。


「あーのむっつりヘタレ、ほんとにもー…──」

「──あ、あの…… リオ…ネルとは、よく会う間柄、なの?」

 思わずミレイアを遮るように問い質してしまったラウラに、ミレイアは面白がるように笑って問い返す。

「気になる?」

「……ぇ? べ、べつ…にぃ…──」


「…──会ってるわよ、よく〝ここ(謎空間)〟で」

「……え?」

「最近の話題は〝女心〟とか〝女の子が贈られて喜ぶ物〟、とか」

「…………」


 ミレイアは〝謎空間〟の床?の上に座ると、笑顔のままにラウラにも(かたわ)らに座るよう手振りで示した。



  *


「……つまりね」

 ミレイアは隣に座ったラウラに顔を寄せると、とっておきの話でも始めるように人差し指をラウラに向けて口を開いた。「──…今回の話の主題(テーマ)は、ズバリ…〝ヒロイン〟」


「…………」

 ラウラが、その単語を耳にした途端に露骨に表情(かお)を顰めてみせる。

「いい反応(リアクション)ね──あなたのそういうところ、好きよ」


 何とも言うことがない様子でいるラウラに、ミレイアは構わず続ける。

「あなた、がんばってるわ。がんばってるけど、時間がもうないみたいなの」


 そのミレイアに、ラウラが怪訝に訊き返す。

「時間がない…って、まだ物語は序盤なんじゃ…──」

「──〝視聴率〟よ。この場合は〝PV(ページビュー)〟ね」

「P…V…──それじゃ、〝打ち切り〟ってこと?」


 ミレイアが、真面目な表情で応じた。

「その可能性は、大いにあるわ」

 気圧されるようにラウラも、さもありなん、というふうに何度か頷いた。


「──というわけで、もろもろがんばってるところ申し訳ないんだけれど、ヒロイン像を整理して、テコ入れしよう、ってわけ」

「なんか自己破産後の債務の整理みたいね……」


「ま、そんなとこ──

 それじゃ……まずはヒロインに求められてる役割(イメージ)と、これまでの物語の中でのあなたの足跡とを照らし合わせるところから始めましょう。


 モーリーン・マードックの著作『ヒロインの旅』を参考にするわ。


 この文献(ほん)では、ヒロインの成長を10段階に分けて説明してるの──


1.女性性からの分離

 ──母親や女として期待される役割を拒否する。


 あなたの場合は、地球連邦政府の実力者の娘、つまり〝良家の子女〟に生れながら、その家を飛び出している。……絵に描いたような流れね。



2.男性性との自己同一視と仲間集め

 ──決められた役割とは別の道を選ぶ。男性主導の組織や役割に対する戦いを決意する。


 そして軍に入隊した。それも機動兵器(RA)パイロットとして最前線勤務。



3.試練の道:怪物やドラゴンとの遭遇

 ──ヒロインは試練に遭い、

  自らの選択に反対する人々や妨害者 (怪物やドラゴンなど)と出会う。


 あなたの場合、艦に乗り込んできたお姉さんと……()ということかしら?」



 愉しそうに指折り数えて語り始めたミレイアに、これは長くなりそうだと想うラウラであった。

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