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第6話 王子、宣言する!

 「この世界を救う鍵は――愚民、お前の生活改善だ」


 居酒屋で8杯目のハイボールを片手に、アルフレッド・ヴァレンシュタインはくだを巻いた。



————————


 留守番中、アルフレッドは「元の世界に帰るための鍵」すなわち、解決すべき問題を1人考えていた。


 キッチンのシンクには、食器がうず高く積まれている。部屋の片隅には麦の服の山、棚の上には未開封の請求書が散乱。部屋の床はなんだかジャリジャリ、テーブルには無数のコップの跡がついていた。

 一晩泊まらせてもらった部屋とはいえ、清潔とは言い難い。


 そんな部屋をゾッとしながら見渡して、異世界の王子は深く頷いた。


「…この荒れた空間こそ、次元の歪みの象徴に違いない。この歪みを正さねば、我は元の世界へ帰還できぬ。よって、愚民の生活を立て直すことこそ、我が最優先の使命となる!」


————————



「いや、なんでそうなるの!?」

と話しについていけない麦が素っ頓狂な声を上げる。


アルフレッドは、今日学んだばかりの、いくつかの異世界転生物語における共通点を、大真面目な顔で麦に伝えた。


「…あなたはこの世界の問題を解決するために召喚されたから、ここで問題解決をしないと、元の世界に戻れないって言ってるのね…。いや、まあ確かに言われてみたら、確かにそれっぽいんだけど…」

 

 だけど、それは間違っている、と麦は言えなかった。


 あなたのお兄さんのクロード第一王子が、王としての責任感を持てたら、物語は進んで、あなたは元の世界に帰れるんだよ、だから待っているしかないの。

 とは、言えなかった。


「余の使命は、あまりに乱れた貴様の生活を立て直すことなのだ!分かったか!」


 ひーん、耳が痛い。だが乱れた生活は事実。

 麦の生活を変えたとしても、アルフレッドが帰れるとは思っていないが、家で何かさせておく分には、彼の気が紛れていいかもしれない、など麦が思案していると、アルフレッドは残りのハイボールを飲み干し、テーブルにダンっと置いた。


「まずは食物の調達からだな。出るぞ!」


「勝手に仕切らないでよ!」


 とギャイギャイしながらも会計。




 安い店だとたかをくくって沢山飲み食いしたせいで、レシートを見た麦は一瞬固まった。


「…明日からはもやし生活かな」

 ボソリ、悲痛なつぶやきは誰にも届かなかった。

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