Episode008 サイコメトリー II
教授はリサの成績を見つめながら、一瞬だけ表情を曇らせた。
「彼女の成長は喜ばしいが、果たしてそれがエリュ・コーエンの目にどう映るのか・・・・」
教授は心の中でその不安をかみしめた。
一方で、シンの様子にも注意を払わずにはいられなかった。
彼の嫉妬心は日を追うごとに強くなっているように見える。
「シンがこのままの状態でいることは危険だ…」
教授は内心で警鐘を鳴らしつつも、表には出さなかった。
シンは「どうだ」と言わんばかりの表情でリサの方を見ていた。
その顔からは「ふふん」と言う声が聞こえてくるような気がした。
リサは気にした風もなく、自分の右手を真剣に眺めていた。
シンはリサが高得点を取ったことに苛立ちを覚えた。
「所詮は運だろう。俺が本気を出せば、こんな結果では済まない」
と彼は考え、リサを冷たく睨みつけた。
実験が終わり、教授がリサの成果を評価している場面を、シンは遠くから見つめていた。
リサが褒められるたびに、周囲から称賛の声が上がるのが聞こえてきたが、シンの心はそのたびに重くなった。
「またリサか…」シンは拳を強く握りしめた。
彼女が評価されるたびに、自分が後回しにされているような感覚が心を突き刺した。
「俺だって…」シンは心の中で何度も叫びながら、リサの方を鋭く睨みつけた。
彼女が教授と楽しそうに会話をしている姿が、何故か耐え難く感じられた。
リサが教授から高評価を受けるたびに、シンの心は不安定になっていった。「またリサか…」彼は冷たく睨みつけながらも、何も言わずにその場を離れた。内心では、自分の力に対する疑念が徐々に大きくなっていくのを感じていた。
教授はリサの成績を評価しながらも、心の中ではエリュ・コーエンの脅威がちらついていた。
「リサの成長が彼らに目を付けられないことを祈るばかりだ…」
教授はその不安を隠しつつ、授業を続けた。
「所詮は運だろう・・・・」
シンは心の中でそう呟きながらも、再び自分の能力に疑念を抱き始めていた。
教授はリサの成績を評価しながらも、心の中で何かが引っかかっていた。
エリュ・コーエンの動きが気になる。
彼女の成長は喜ばしいが、同時にそれが彼らの目にどう映るかを考えると不安が募る。
「時間がない…」
教授は内心で焦りを感じつつも、それを表には出さなかった。
「それでは今度は役割を入れ替えて練習を続けてください。東上さんはこの紙に書かれた内容を残留思念から読み取る練習をしてください。対象物はこちらです」
教授は石ころ、絵画、食器などをアキに取りに来させた。
アキは席に戻って机に対象物を並べた。
リサは右から順にそれらに触れていき、紙に人の名前や地名、見えた光景などを書き込んでいった。集中力が高まる中、リサの表情は真剣そのものだった。
リサが書き終えた紙を教授のところに持っていくと、教授はその内容を興味深そうに眺めた。
「東上さん、素晴らしい!これで貴方は超能力等級4級と認定します」
教授はリサの成功を認めつつも、エリュ・コーエンの脅威を常に意識していた。
「彼らが動き出す前に、リサや他の生徒たちを早急に鍛え上げなければならない」
と考え、授業の進行に一層力を入れた。
と静かに言った。この言葉が、リサにさらなる決意を与えた。
教室から「おぉ~」というざわめきが起こる。
リサは何を言われたか分からないようにぽけーっとしていたが、リョーコの「リサ!おめでとう」という声に我に返り、「あ、ありがとう」と答えるのが精一杯だった。
「リサ、すごいよ!4級だなんて!」タケルは本当に驚いたように声を上げた。
リサは恥ずかしそうに微笑んだが、その目にはまだ信じられないという気持ちが見え隠れしていた。
「おめでとう」とみんなに祝福され、ようやくリサはいつもの調子を取り戻し「嬉しい!」と涙をこぼした。
リサが昇級した直後、教授は彼女を見つめていた。
「あなたはよくやりました」と言いながらも、心の中では20数年前のサラのことが浮かんでいた。
あの時、自分がもっと慎重にしていれば…教授はその思いを押し殺し、リサを見守る決意を新たにした。
教授はリサに静かに語りかけた。
「サラは、私の過去の過ちだ。私は彼女を守るべきだったが、守れなかった。だからこそ、あなたには同じ過ちを犯させたくない。あなたには未来がある。その未来を支えることが、私の償いなのかもしれない」と。
教授がリサの4級取得を発表すると、他のメンバーたちも教室に集まった。
「リサ、おめでとう!」
と声をかける者もいれば、シンの冷ややかな視線に気づく者もいた。
アキはその場の緊張感を感じ取り、彼らの関係がこれからどう変わるのかに思いを巡らせた。
リサはサイコメトリーの練習を続ける中で、何度も失敗し、その度にアキや教授の助言を受けながら改良を重ねた。
最初は不安が先行していたが、少しずつ感覚が戻ってくるのを感じ、やがて小さな成功が積み重なり、自信を取り戻していった。
シンだけは悔しそうにリサをにらんでいた。彼にとって、自分が一番であることが全てだったからだ。リサが称賛されるのを見て、シンの嫉妬はますます募った。
シンはリサの成功に対して冷笑を浮かべ、
「お前たちが少しばかり成功したところで、俺には敵わない」
と心の中で呟いた。彼にとって、他の誰かが注目を浴びることは耐え難いことだった。
それにしても、等級なんて教授が決めていいのだろうか?
とアキはいぶかしそうな顔をした。
そのことを教授に聞いてみると
「あれ? 言っていませんでしたか? 私は魔法、超能力等級を判断する権利を持ってるんですよ。 と言っても3級までですが」
白々とのたまう教授。しかしこれはすごい事だ。
あの面倒な昇級試験を受けなくて良いのだ。
思えば魔法等級5級を取ったとき、面接、筆記、実技と実に雑多なテストをこなさなければいけなかった。
それを教授に実力を見せるだけで上の等級に上がれるなんて。その時アキは悪い顔をしていた。
「あ、言っておきますが、 あくまで公平と客観性を大切にしますので、 私に胡麻をすろうなんて考えないでくださいね」
何人かがうつむいた。
胡麻をすって楽しようとした連中だ、アキも含めて。
「今日はここまでにしましょう。明日は2年生の授業があるので1年生は授業はお休みです。
寮なり図書室なり演習場で各自自習しておいてください」
忘れそうになるが2、3年生もいるのだ。
教授の言葉に、生徒たちは一斉に教室を出て行った。アキとリサは少し遅れて教室を出た。
「リサ、本当におめでとう」
とアキが言うと、リサは恥ずかしそうに「ありがとう」と答えた。
他の生徒たちが研究室で新しい魔法の技術を練習している間、シンは一人で窓辺に立ち、外の景色を見つめていた。
彼の目は遠くを見つめながらも、何か別のことを考えているようだった。
「シン、どうしたの?一緒に練習しないの?」
アキが声をかけたが、シンはほんの一瞬だけ振り返り、無表情で「いや、今はちょっと・・・・」と答えるだけだった。
アキは不思議に思いながらも、それ以上は追及せずに戻っていった。
シンは再び窓の外に視線を戻し、頭の中で何かを整理するかのように眉をひそめた。
「・・・・これでいいんだ」
と心の中でつぶやきながら、仲間たちから距離を取る自分を自覚していた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「な、俺たちのおごりでリサのお祝いをしないか?」
「「「「賛成!」」」」
タケルの提案にみんな盛り上がる。
シンを除いてだが。なぜ彼はあんな態度を取りたがるのかな。