Episode007 サイコメトリー I
こんにちは。@manacho03です。
やっとブックマークがつきました。どなたか存じませんがありがとうございます。
やる気200%、これからも頑張ります。
教授の話を真剣に聞いていた。彼女は以前、アキに「ほんの少ししかサイコメトリーを使えない」と打ち明けていた。それが彼女のコンプレックスだった。
小さい頃は得意だったが、ある出来事で使えなくなったという。
今日の授業は、彼女にとってその傷を癒すための重要な機会だった。
「サイコメトリーは希少な才能だよ。もっと自信を持って、ね?」とアキがなぐさめる。
涙を手で拭いながらリサは「アキって優しいのね」とふっと笑う。
そんな彼女がサイコメトリーの授業にかける意気込みは相当なものがあるのだろう。
実はリサは実験室で教授に個人授業を受けていた。
リサは実験室で、教授から渡された古いペンダントに手をかざした。
普段ならば、手に触れた瞬間に持ち主の記憶や感情がフラッシュバックのように溢れ出すはずだった。
しかし、今回は何も起こらない。
リサは眉をひそめ、もう一度集中を試みたが、依然としてペンダントはただの冷たい金属でしかなかった。
「どうして・・・・」リサは焦りを感じ、手に汗がにじむのを感じた。「こんなはずじゃない・・・・」
彼女は深呼吸して再度挑戦するが、やはり結果は同じだった。心の中で何かが壊れたような感覚に襲われ、リサはそっとペンダントを机に置いた。
「最近、どうかしてる…」リサは不安げに自分の手を見つめながら、実験室を後にした。
リサはペンダントを机に置いた後、静かに実験室の片隅に座り込んだ。
失敗の重さが心にのしかかり、彼女は涙を堪えながら、静かに瞳を閉じた。
「これからどうすればいいのだろう…」
彼女の心に浮かんだその言葉は、ただ虚しく実験室に響いた。
リサは実験室を出る前に、一度立ち止まり、手のひらをじっと見つめた。
失敗の感覚がまだ鮮明に残っており、その重さが心にのしかかる。
彼女は静かに深呼吸をし、涙をこらえながら「次こそは」と自分に言い聞かせたが、その言葉にはどこか自信が欠けていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「こればっかりは持って生まれた才能に左右されます。 他にも才能に左右される超能力はありますが、パイロキネシスと並んで後天的に取得するのは難しいとされています」
リサの顔が輝く。
「しかし、私はある程度なら才能なく生まれてきた人でも努力次第では取得できるのではないかと思っています」
リサの顔が曇った。
「それでは実習を開始します。 このカードを二人一組になってお互いに相手に見せずに当てっこしてください」
教授はファイルからカードのようなものを出して、何枚かをセットにして配り始めた。「二人一組になったらじゃんけんをして負けた人が取りに来てください」
と10組のカードの山を教壇に置いた。
配られたのは、いわゆるESPカードと呼ばれるカード一式だ。
表に 丸・ 四角・ 十字 ・ 星・波の5種類の模様が描かれ裏からは絶対に見えないようになっている。裏模様はランダムになっていて覚えたり出来ないようになっている。
「このESPカードは、サイコメトリーの基礎を理解するための重要なツールです」
と教授は説明を続けた。
「カードに触れることで、あなたたちはその裏に隠された記憶や感情を感じ取ることができるはずです。 この訓練を繰り返すことで、感受性が高まり、より強力なサイコメトリー能力を身につけることができるでしょう。」
教授は続ける
「皆さん、手元にカードは届きましたか? それではじゃんけんで勝った人が実験者です。 負けた人はカードをランダムに1枚抜いて、相手に表の模様が見えないようにかざしてください。
勝った人はその模様を透視するつもりでよく見てください。 そして頭に浮かんだ模様を言ってください。 負けた人は正解かどうかを記録してください」
カードを右手で振りかざして教授は言った。
「その時に相手に影響を与えないように、正解かどうかとか言わないでください。 また記録を読まれないようにしてください。
本来この実習は透視能力を測ったりするものですが、サイコメトリーの練習にも必須ですから。 では始めてください」
アキはリサと組む事になった。じゃんけんに負けたのでカードをリサに模様が解らないようにかざす。
リサは教授の言葉に真剣な表情で頷いたが、内心では焦りと不安が渦巻いていた。
「私にできるのだろうか・・・・」
彼女は心の中で自問しながら、かつての失敗がフラッシュバックのように蘇ってきた。
震える手でカードに触れた瞬間、心臓が一瞬止まったように感じた。
最初は波だった。
リサは目をつぶり、ゆっくりとカードに手を伸ばした。
指先がカードの冷たい表面に触れると、彼女の心に緊張が走った。
「この感覚…確かに何かが見える…」彼女は心の中でそう呟きながら、模様を感じ取ろうと集中した。
真剣にカードを眺めていたリサは「波」と口にする。正解だ。
次は丸、彼女は見事正解を答えていく。
その後、十字、四角、また丸という風に進んでいき、リサの正解率は40パーセントを超えていた。
研究室のあちらこちらで悲喜こもごもの声が上がる。
教授は生徒たちがカードを使ってサイコメトリーの訓練を進めるのを見守りながら、心の中で考えていた。
「この技術が完成すれば、エリュ・コーエンに対抗するための強力な武器となるはずだ。リサの才能はその鍵を握っている…」
「平均正解率24%ですか。なかなか良い成績ですね。
これは透視系の基礎練習になります。 東上さんには退屈だったかも知れませんね」
教授は優しそうな目でリサを見つめ、そう言う。
リサは恥ずかしそうに顔を赤く染めて小さくなっている。
「では、これからが本番です。 今度はカードを5枚ずつ机の上に模様を伏せて並べて、見るのではなく目をつぶって指で触れて当ててください」
みんな目をつぶって右手でカードを触り、神妙な顔つきで思い思いの模様を口にしていた。
リサは今度は驚異の正解率75%を記録した。
「リサ、すごいよ!73.5%だよ」
アキがはげますと彼女は今度は嬉しそうに「うん」と答える。
他の組は平均15%だったと言うからリサのすごさがよく分かると言うものだ。
「東上さんは73.5%ですか。素晴らしいですね。持って生まれた才能というのはすごいですね」
研究室にざわめきが起こる。
「他に何か見えませんでしたか?」
と、教授が聞くと」
「色んな人の顔が・・・・ぼんやりとですけど」
と、リサ。
「それがサイコメトリーですね。 過去にそのカードに触れた人の顔が見えたのでしょう。
他に何か見えた方はいらっしゃいませんか?」
シンはカードに触れると、心の中で焦りが募っていた。
「どうしよう…これじゃ本当に何も見えない…」
だが、彼は顔に出さず、ゆっくりと目を閉じた。
「見えているふりをするしかない…」
リサや他の生徒たちが見守る中、シンはゆっくりとカードを伏せた。
「・・・人物が見えた。男性だ。青いシャツを着ている。」
シンは自信ありげに言ったが、心の中では動揺が収まらなかった。
「嘘がバレないようにしなければ…」
教授が確認すると、その言葉に反応はなかったが、リサが疑わしげな視線をシンに送っていた。
「本当に見えたの?」
リサは言わなかったが、その目がすべてを物語っていた。
シンは視線を避け、「もちろん」と平然を装った。
授業が終わる頃、教授は静かに生徒たちに向かって言った。
「今日の実習で学んだことをしっかりと身につけてください。今後、皆さんの力が必要になる時が来るでしょう。」