Episode006 ミスティック・シナジー特訓
夏の暑さが肌を刺すような日差しが降り注ぐ中、アキたちは研究室の裏手にある特訓場でロバート教授の厳しい指導を受けていた。ミスティック・シナジー――それは魔法と超能力を融合させた高度な技術体系であり、使い手にとっては計り知れない力を手に入れることを意味していた。しかし、その力を得るためには、相当な鍛錬が必要だった。
「ミスティック・シナジーは魔法と超能力、両方の等級が4級以上の者だけに伝授します。」教授の声は鋭く、空気を切り裂くように響いた。「魔法を操れる者は、早い発動をイメージしてください。超能力者の方は、より強大な威力を持つイメージを頭に刻み込むことです。」
教授の指導は容赦なく、生徒たちを徹底的に追い込んでいた。彼の表情は鬼のように険しく、その厳しさが生徒たちの体力と精神を限界まで試していた。
アキは、ストーンウォールとロックレインを使いこなすために、地面に手を置き、何度も魔力を注ぎ込んだ。だが、巨大な岩の壁を瞬時に立ち上げることや、無数の岩を空から降らせることは、並大抵の集中力では実現できない。
タケルは、自らの肉体を強化し、さらにコンクリートの壁を作り出す能力を鍛えていた。汗が滝のように流れ、筋肉が悲鳴を上げる中で、彼は己の限界を超えようとしていた。
「アキ、どうしました?もうバテたんですか?」教授は冷徹な声で問いかける。「タケル、もっと集中しなさい。肉体と魔法の融合が不十分です。」
一方、リサはフラッシュとサイコメトリー、そしてノーマライズの技を駆使しようとしていた。だが、瞬間的な閃光で敵の目をくらませるには、さらに速さが求められた。
「スージー、威力増加をイメージして。」教授はスージーに対して厳しく指導する。「ミサ、スピードをもっと意識しなさい。あなたのファイアボールはまだ遅すぎます。」
スージーとミサはそれぞれファイアボールとパイロキネシスに取り組んでいた。彼女たちの額には汗が浮かび、疲労が色濃く見えたが、それでも教授の指導に応えようと必死だった。
「カズ、もっと鉄砲水をイメージして!」教授の声がカズの耳に突き刺さる。
カズはウォーターショットを使いこなすため、何度も試行錯誤を繰り返していた。しかし、思うように威力が出ず、教授の厳しい指摘が続く。彼の手から放たれる水の弾丸は、まだ本物の鉄砲水とは程遠かった。
リョーコは、魔力感知と遠隔透視の技術に集中していたが、遠くの敵を正確に見抜くにはまだ不安定な部分が多かった。
「リョーコ、もっと魔力に集中しなさい。遠隔透視がぶれているわ。」教授は冷静ながらも厳しく指摘する。
そしてジムは、サイコキネシスと大技のテレポーテーションに取り組んでいた。だが、思うようにテレポートできず、焦りが募る。テレポーテーションは一瞬の油断が命取りになる技であり、ジムはその難しさに苦戦していた。
「ジム、焦るな。もっと落ち着いて・・・・サイコキネシスとの連携が肝心です。」教授はジムの肩に手を置き、冷静さを取り戻すよう促した。
全員がバテバテだった。しかし、鬼と化した教授の指導は厳しく、生徒たちに簡単に音を上げさせる余裕を与えなかった。次々と課題が与えられ、休む間もなく次の挑戦が待ち受けていた。
「そら、これに成功したらミスティック・シナジー4級ですよ。」教授は飴と鞭を巧みに使い分け、生徒たちを鼓舞した。
特訓が続く中、アキたちは次第に成長の兆しを見せ始めた。アキのストーンウォールはかつてないほど堅固になり、ロックレインの威力も増してきた。タケルの肉体強化とコンクリートウォールの連携もスムーズになり、リサのフラッシュとサイコメトリーは瞬時に発動するようになった。
スージーとミサのファイアボールも見違えるほど強力になり、リョーコの遠隔透視は遠くの細かな情報をも捉えられるようになった。カズのウォーターショットも、ついに鉄砲水に匹敵する威力を発揮し始めた。
「よし、いい感じだ!その調子で続けて・・・・」教授は満足そうに笑みを浮かべながら、さらに生徒たちを追い込んでいく。
そして、ついに全員が目標を達成した瞬間、教授は深い満足感を漂わせながら言った。
「おめでとうございます。皆さん、ミスティック・シナジー4級に合格と認めます。」教授の言葉に、疲れ切った生徒たちは喜びと安堵の表情を浮かべた。
特訓は3日間に及び、全員が限界を超えて挑んできた。最後には、全員がゼリーのようにへなへなと座り込んでしまった。
「教授が怖いと思ったのは久しぶりです・・・・」カズが疲れ果てた声で呟く。
「鬼や、鬼がいてはる・・・・」タケルが苦笑しながら関西弁でぼやいた。
教授は一瞬、微笑みを浮かべてから、生徒たちに最後の言葉を投げかけた。「それから、一般人相手にミスティック・シナジーを使ってはいけませんよ。くれぐれも言っておきます。」
その言葉に、生徒たちは力なく頷いた。厳しい特訓の果てに手にした力は、彼らの中で一つの達成感をもたらしたが、それ以上に、責任の重さも感じさせたのだった。
アキたちは、これからの戦いに向けて新たな決意を胸に秘めながら、静かにその場を後にした。