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ロバート教授の不思議な授業(改)  作者: @manacho03
恋人殺しの汚名と日本渡航
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Episode004 ロバート研究室 I

 ここは"事象改変研究所"の一室。

 銀色に輝くエーテルリアクターが静かに動作音を立てている。

 壁には研究成果のポスターや古い写真が所狭しと貼られている。


 ロバートは講義を始める前に、エリュ・コーエンのことを思い返した。

「彼らの動向を探りながら、この研究を進めることができるだろうか・・・・」

 彼は一瞬迷いを見せたが、生徒たちの顔を見て決意を新たにした。

「彼らを導くことで、この脅威に対抗する力を得るのだ」


教授は微笑みながら黒板に向かい、チョークを手に取った。「さて、皆さん、今日は魔法と超能力の基本的な違いについて話しましょう」

「さて、皆さん」

 と教授が口を開く。

生徒たちは緊張と期待が入り混じった表情で、教授の一挙手一投足をじっと見つめていた。

 誰かが椅子を引く音が静寂を破り、数人が小さな息を呑んだ。

 教室の外からは、かすかな風の音と遠くで話し声が聞こえてくるが、この場所はまるで別世界のように感じられた。

さらに、精神操作に対する防御手法の研究成果も掲示されていた。

「精神シールドの構築」というタイトルの下には、実験に使用された脳波データや、被験者のインタビューが記録されている。 精神攻撃に対する新たな防御手段として期待されている研究だ


 ロバート教授は生徒達に背を向けて黒板に「魔法=超能力?」と書き、厳かに宣言した。

「結論から言うと、そもそも魔法と超能力は同じルーツを持ちます」

 

 ここは”事象改変研究所”通称”事改研”の1研究室。

 普通の高校で言うところの”教室”だ。


 生徒は男女併せて30人ほど。

 男子20人、女子10人ほどだろうか。

 その教室で講師のロバート教授は生徒達に背を向けて黒板に「魔法=超能力?」と書いてそう宣言した。


 今日は事改研に入学して初めての講義、というかオリエンテーションだ。


 新入生の中に彼はいた。

 彼の名前は一文字昭博(アキ)

 魔法と超能力を解析、研究しているこの特殊な高校に進学した。

 ここには魔法使い、超能力者の素質がある者達が集って研さんを積んでいる。


 アキ自身少しなら魔法を使うことが出来る。

 唯一の取りえ。


 成績は上位で入学することが出来たけど、アキは超能力を使えない。

 それが当たり前だと自分に言い聞かせてきた。

 幼い頃から、周りの友達が超能力を駆使しているのを見ては、劣等感と嫉妬心が胸に渦巻いていた。

 特に、家族の期待に応えられないことが辛かった。

 父が「お前も兄さんのように超能力を使えるようになれたら…」と何度も言うたびに、胸が痛んだ。


 教授の言葉は、アキの心に希望の光を灯した。

 彼の「魔法と超能力は同じルーツを持つ」という言葉が、アキの中に新たな可能性を感じさせた。教授の元で学べば、自分も変われるかもしれないと期待が膨らんだ。

 

 学会でもそういう考え方は異端とされている。

「魔法も超能力もそのルーツを古代魔術に求めることができます」

「でも、教授。魔法と超能力を両方使える人はいないんじゃありませんか?」

 隣の席の男子が手を上げて質問した。


 教授は微笑みながら、一瞬考えるように目を閉じた。

「確かに、そう思うのも無理はありません。でもね、実際には、古代の魔術師たちが使っていた呪文と、現代の超能力には驚くほど多くの共通点があるんです。

 例えば、エネルギーの流れを操る魔法と、念動力には共通する原理があります。」

 教授は黒板に図を描きながら説明した。「これを理解すれば、両方を使いこなすことも可能なのです。」


 ロバートは講義の中で、「魔法と超能力の統合」を強調した。

 彼の研究がエリュ・コーエンに対抗するための鍵であることを、彼は確信していた。

「彼らが再び動き出す前に、この力を完成させなければならない」

 と、心の中で固く誓った。


「じゃあ、教授」と別の生徒が手を上げる。

「私たちも両方を使いこなすことができるんですか?」


「その通りです」と教授は頷いた。「これを理解すれば、両方を使いこなすことも夢ではないのです」教授は教室を見渡しながら、ゆっくりと話を続けた。


「さまざまな魔術体系が存在しましたが、20世紀初頭に超能力というものが出てきました」

 教授は黒板に背を向けて生徒達の方を見回してそう言った。


「それは古代からの魔法手段のアプローチで取り組もうとした魔法師達。 そして実は魔術を近代科学的観点から取り組もうとしたのが超能力者の走りです。

 魔法も超能力もそれ以前から存在していたわけですが、超能力が先に研究対象として初めて注目された、と言うことです」


 教授は続けた。

[魔法は威力で、超能力は発現スピードで優れています。だからこそ、歴史的に両者は対立してきました。しかし、この対立を乗り越えれば、新たな可能性が開かれるのです。」

 教授は一息ついてから続けた。

「そして、21世紀になって公に研究が開始されたわけです。 わが校のような教育機関も出来たのです。

 そしてさっき言ったように、この二つは対立構造にあります。 だからこの学校の中でも魔法術者と超能力者の間には反目しあう空気があります。

 ですのでこの二つを同時に論ずるのはタブー視されているのが現状です。 しかし、その状況で私はあえて言います。 魔法と超能力は同じ物だ、と」


 教室(研究室)がざわつく。

 中学まで魔法と超能力は別物で相対するものだと教えてこられたからだ。

 それに高校でもこんなことを断言する教授はいないだろう。

 

 事象改変研究所では、大学のように各講師がそれぞれ研究室を持っていて、それぞれのテーマで研究、生徒の指導をしている。

 この教授は変わり者が多い事改研の中でも特に変わった持論とテーマで研究していることで有名だった。

 教授の研究室に配属が決まったとき、少しがっかりしたのと反対にワクワクしたのを覚えている。


 なぜがっかりしたかというと、各教授の指導次第で魔法等級や超能力等級が決まる傾向にあるからだ。

 そしてその等級が進学、就職率に影響してくる。


 魔法も超能力もその実力によって1級から5級まで分類されている。

 アキは現在魔法等級5級。

 1級ともなると進学先も就職先も選び放題だと言われている。


 教授の研究室からはまだ1級の卒業生が出ていないらしい。

 それなのに、なぜワクワクしたかというと、等級が上がらないと進学・就職率が悪くなりそうな物だが、なぜか教授の生徒は大学、企業とりわけ軍からラブコールを受けやすいとのうわさもあるからだ。


 アキはせめて2級を取りたいと思っていた。

 教授のクラスでは難しいかもしれないな。

 それにしても教授の元で3年間勉強したらどうなるのか楽しみでもある。


 ぼーっと考え事をしていると、教授の声が響いてきた。


「だから、私は魔法と超能力の融合を目指しています。 皆さんの等級も高くはならないでしょうが魔法と超能力の両方を会得していると何かと良いことがありますよ」


 ニコッと笑う教授。

 年の頃なら50代半ばというところか。

 優しそうな面差しと理知的に光る目。 中肉中背で少し背は高い。


 ボタンダウンのワイシャツと紺のブレザー、グレーのズボンにウイングチップの靴と言う典型的なアイビールックだ。

 それに丸めがねをかけた教授はいかにも学究の徒という感じだ。


 魔法と超能力の両方を修める?そんなことは無理だろうと思う。


「皆さんが今考えられているように私の考えは異端です。

 等級も1級は無理でしょう。 もし、皆さんの中で1級を目指したい、クラスを変更したいと思う方がいるのなら隣の準備室まで来てください。

 最大限希望を適うように計らいましょう。 ただし、このホームルームが終わるまでが期限です」


 ホームルームが終了するまで30分ほどある。

「では、私は準備室で待っています」

 そう言うと教授は教室を出て行った。

 教授が教室を出て行くと、教室はざわつき始めた。

 アキはどうしようかと迷った。周りの生徒たちが次々と席を立ち、クラス替えを希望して準備室へ向かう様子を見て、胸が締め付けられるような思いがした。


 準備室へ向かう生徒たちを見送りながら、アキの心は葛藤かっとうしていた。

 本当にこのクラスでいいのか?

 しかし、教授の言葉が彼の心に響いた。

「これも一つの挑戦だ」と自分に言い聞かせ、アキは決意を固めた。

 教授の元で学ぶことで、自分に何ができるか試してみたいと思ったのだ。


 生徒たちには基本的に教授を選択をする権利はないけれども、教授の推薦があればそれも可能だ。


 そうこうする内にガタガタと席を立つ生徒が出てきた。

 クラス替えを希望する者達だろう。

 教室に残ったのは約3分の1くらい。 10人ほどだろうか。

 意外なことにそのうち女子が半数を占めている。


 ずいぶん迷ったが、アキも残ることに決めた。

 教室の外の廊下には行列が出来ている。


「あ~あ、ほとんど行っちゃったよぉ。 普通の授業受けるならわざわざ事改研に入学したりしないよな」

 前の席の生徒がそうこぼす。


 見ると学究の徒と言うより体育会系という言葉がぴったりしそうながたいのいい男子生徒だった。 いかつい中にも茶目っ気のありそうな好感を持てる感じの男だ。

 よく見るとなかなかのイケメンだ。


「そうよねぇ、せっかく名物教授のクラスになれたのに他に移るなんて馬鹿みたい」

 少し離れた席で活発そうな美少女と言える女子生徒がそれに賛同する。


「せっかくだから残った変わり者同士で集まろうぜ」

 体育会系男子がそう言うとわらわらと残った10人が集まった。

 アキもそちらに移動する。



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