Episode003.日本渡航II
時は経ち、ロバートは日本でエリュ・コーエンについての調査を続けていた。
彼はこの組織がサラの死にどのように関わっているのか、その全貌を掴むために、夜遅くまで研究室にこもり、資料を読み漁っていた。
「この力で、サラの無念を晴らすことができるかもしれない……」
そう信じることで、彼は自身の研究を正当化してきた。
教授はゆっくりと調査、研究をすることができた。
も飲まなくなった。その代わりパイプたばことコーヒーをこよなく愛するようになっていた。
◇◇◇◇◇◇
能力の段階には魔法等級、超能力等級というものがあるのだが、ロバート研究室では単純な魔法、超能力を教えることはないので1級とか2級の資格を取るものはいなかった。
その代わりミスティック・シナジー等級を取得して卒業していくのだった。
それから20年間、警察や自衛隊の要請を受けて、月に1度くらいの割合で研究所の皆は出動することになった。
最初はただの逃亡者だったロバートだが、時間が経つにつれて、彼は日本での新しい生活に徐々に馴染んでいった。
研究所での日々は、彼にとって再生の場となった。
ミスティック・シナジーの研究に没頭するうちに、彼は少しずつ自信を取り戻していった。
1年目、彼はまだサラの死の記憶に苦しんでいた。
研究に集中しようとするものの、夜になると悪夢にうなされる日々が続いた。
それでも、彼は研究に没頭することで、少しずつ過去の傷を癒していった。
そして魔法サイド、超能力サイドとの確執。
人間関係に苦しむ教授であった。
5年目の春、ロバートはついにミスティック・シナジーに関する初の研究論文を発表した。
その瞬間、彼の心には再び希望の光が差し込んだ。
長年の苦悩が少しずつ溶けていくのを感じ、彼は初めてサラの死の悲しみから解放されるかもしれないと思った。
また、アメリカからやってきたエドウィン・バーンズ教授との友情と理解。
彼のみがミスティック・シナジーへ理解を示してくれた。
彼は自分が指導者としての役割を果たしていることを実感し、少しずつ自信を取り戻していった。
10年目、ロバートは研究所の柱となり、生徒たちからも信頼される存在となった。
彼の研究は多くの成果を生み出し、ミスティック・シナジーの理論は世界的にも注目を集めるようになっていた。
しかし、彼はまだ心の奥底にある不安を完全には消し去ることができなかった。
サラの死の真相を追い求める思いは、依然として彼を苦しめていた。
いつも上手くいくわけではない、ある日突入した敵の拠点で教授は手傷を負ってしまった。深い傷ではなかった物の、教授は生徒達に担がれてなんとか脱出することに成功する。
15年目、研究所の生徒たちは次々と警察や自衛隊の特殊部隊に就職し、彼の教えを実践に生かしていた。
ロバートは誇りを感じると同時に、彼らが危険な任務に就くことに対する責任感も強く感じていた。
「彼らを危険に晒しているのは自分だ」
という思いが、彼の胸を重くした。
ある日、敵の本拠地に潜入した教授と生徒達はそれが発覚して、緊急脱出を行う羽目になった。
20年目、ロバートはすでに「教授」としての地位を確立し、研究所は彼の研究成果の一つとなっていた。
しかし、彼はまだ満足していなかった。
彼の目標は、ミスティック・シナジーの理論をさらに進化させ、サラの死の真相を突き止めることだった。
彼は心の中で、未だにサラとの約束を果たせていないと感じていた。
卒業生は主に警察、自衛隊の特殊部隊に就職するものが多かった。
ロバートの研究は日々進展していたが、その度に彼はサラの死の謎に一歩近づいている感覚を得た。
彼は新しい実験結果を見つめ、そこに隠されたエリュ・コーエンの影を感じ取った。
「これは…サラを救うための手がかりかもしれない…」
そして、アキ、タケル、リサ、スージー等の強力なメンバーがそろって入ってきたのが今年のことである。
「今年は期待できるかも知れませんね」
教授はほくそ笑んでいた。
今年、新たに入ってきたアキ、ワタル、リサ、スージーの4人は、単なる生徒ではなかった。
彼らはそれぞれ、エリュ・コーエンとの戦いに関連する運命を持っていた。
ロバートは、彼らを導くことで、サラの死の真相に迫る鍵を見つけるかもしれないと感じていた。
ロバートは日本での新生活に順応しつつも、常にエリュ・コーエンの動きを警戒していた。
彼が研究所で講義を行う際にも、どこかで彼らが再び姿を現すのではないかという不安が頭を離れなかった。
ロバートは研究所の静寂の中でエリュ・コーエンに関する報告書を再度読み返していた。
彼らの影がどこに潜んでいるのか、どんな時に再び姿を現すのか、彼は常に警戒を怠らないよう自分に言い聞かせていた。
「この場所でさえ、安全ではないかもしれない・・・・」
その思考の中、ふと時計を見て講義の時間が迫っていることに気づいた。
「今は目の前の仕事に集中しよう・・・・」ロバートは自分を落ち着かせるように呟き、教室へと向かった。