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ロバート教授の不思議な授業(改)  作者: @manacho03
教授の過去とエリュ・コーエン
16/24

Episode016 エリュ・コーエン I

 気がつくとどこかの倉庫街だ。

「あれ?僕たち研究室にいたはずだよね」

アキが言うと

「教授が転移魔法を使ったのよ。 そうですよね?」

 とスージーが問いただすように言う。


「はい、その通りです。ミス・スージー、いい勘をしてますね」

 教授は続ける。

「ここは第3埠頭の倉庫街です。 ここにエリュ・コーエンの拠点の一つがあります。 そこを襲おうというわけです。 あくまでも授業の一環ですのでなるだけ殺さないように気をつけてくださいね」


 アキたちは慌てて物陰に隠れる。

 気づけば見張りらしき若い男が立っている倉庫がある。あれがそうか。


 教授の指揮の下、アキたちはツーマンセルでその倉庫を取り巻いた。中から音が漏れてきていた。

「サイコメトラーは潰した。これで証拠は残らない・・・・」

「次は研究室襲撃の件だが・・・・」

 やたら物騒な会話が聞こえる。


「サイコメトラーってリサの事じゃない?」

 テレパシーでみんなに聞いてみた。

「えぇ、そうね。奴らがリサの能力を使えなくしたのね」

 スージーが答えた。

「許せない」

 リサが万感の思いを込めてつぶやく。


 薄暗い倉庫内の空気は重く、かすかな埃の匂いが漂っていた。

 アキたちは物陰に身を潜めながら、いつ突入の合図がかかるかと緊張していた。

 周囲の静寂が彼らの心拍を一層早めていく。


 夜の倉庫街は静寂に包まれ、アキたちは教授の指示に従い、慎重に足を進めていた。

冷たい空気が肌を刺し、周囲には暗闇が広がり、緊張感が漂っていた。

「これが本当に授業の一環なのか・・・・」

アキは心の中で疑念を抱きつつも、今はその疑念を抱えたまま行動を続けるしかなかった。


 タケルが先頭に立ち、

「コンクリート・ロック!」

 と呟いた。すると、地面が低く唸りを上げ、堅固なコンクリートの壁が敵の逃げ道を封鎖した。

 リサは右手を掲げ、教授の指示に従って「フラッシュ!」と叫ぶと、まばゆい光が倉庫内を照らし、敵の見張りたちは目を押さえてその場に崩れ落ちた。


「突入!」

 教授の声が静寂を破り、アキとタケルが一斉に動き出した。

 タケルは肉体強化ミスティック・シナジーを発動し、一瞬で敵の間合いに入り込むと、強烈な右回し蹴りで一人の敵を壁際に吹き飛ばした。

 続いてアキも「ロック・レイン!」と叫び、無数の石つぶてを雨のように降らせてもう一人の敵を攻撃した。


 一人の敵が拳銃を取り出そうとしたその瞬間、ミサが即座にファイアボールを発動し、銃を弾き飛ばした。

 「ナイス、ミサ!」

 アキが叫び、さらにもう一人の敵に向かって突進した。

 その敵はアキの勢いに圧倒され、その場に倒れ込んだ。

 タケルは最後の敵にタックルを仕掛け、彼を地面に叩きつけた。


「どうしてこんな力が・・・・」

 制圧された敵の一人が弱々しく呟く声を、アキは耳に捉えた。

 その声に聞き覚えがあると感じたアキは、その男の顔をじっと見つめた。

「待ってください、降参します・・・・!」

 男が懇願するように言ったが、アキは警戒を緩めなかった。


 アキは男の顔に見覚えがないことに気付き、教授に視線を送った。

 教授は冷静に近づき、「変身魔法を使っているようです」と告げた後、「ノーマライズ!」と呪文を唱えた。

 すると、男の顔がみるみる変化し、その正体が明らかになった。

 そこに現れたのは、ブライアンだった。


「ブライアン!」

 スージーが驚愕の声を上げ、

 「どうしてあなたがここに?」

 と問い詰めた。しかし、ブライアンはただ目を閉じたまま、何も答えようとしなかった。

 その表情には、深い苦悩と決意が浮かんでいた。


「全てはエリュ・コーエンの計画の一部です、お嬢様・・・・」

 ブライアンはようやく重い口を開き、スージーに向けて言葉を絞り出した。

 その声には、どこか諦めのような響きが混ざっていた。


「何を隠しているの? 本当のことを教えて、ブライアン・・・・ 」

 スージーの声には焦燥感が滲んでいた。

 しかし、ブライアンは再び沈黙を守り、目を閉じたまま答えなかった。


「お嬢様、今ここで全てをお話しすることはできません・・・・」

 ブライアンは苦しげに顔をゆがめながらも、何とか言葉を絞り出した。

「ですが、これはあなた方を守るために必要なことです・・・・どうかご理解ください。」


 スージーはその言葉に戸惑いと怒りを感じながらも、彼の誠実さを信じたいと思った。

「でも、ブライアン・・・・あなたが本当に私たちを裏切ったわけではないのよね・・・・?」

 彼女は最後の望みをかけて問いかけた。


 ブライアンは深く息を吐き、

「お嬢様、私は決してあなたを裏切ってはいません・・・・しかし、全ての真実をお話しするにはまだ時期が早すぎます・・・・」

 と静かに答えた。


 教授はそのやり取りを黙って見守りながらも、冷静に状況を判断していた。

「今はここから撤退するのが最善です。皆さん、準備を整えてください」

 教授の冷静な指示に従い、アキたちは速やかに撤退の準備を始めた。


 スージーは最後にもう一度ブライアンを見つめ、「私は必ず真実を知る・・・・」と小さく誓いを立てた。

 そして、仲間たちと共にその場を後にした。

 彼らが去った後、ブライアンは孤独にその場に立ち尽くし、やがて深い溜息をつきながら闇の中に消えていった。


 倉庫街の闇が再び静寂を取り戻す中で、ブライアンは一人その場に残り、彼が抱える苦悩と戦っていた。

「お嬢様を守るために・・・・」

 彼はそう自分に言い聞かせ、エリュ・コーエンの計画が進行していることを思い知らされた。


 スージーたちが撤退を完了し、倉庫街を後にしたその瞬間、ブライアンは静かに目を閉じ、過去の記憶を思い返していた。

 彼がエリュ・コーエンに関与するようになった経緯、そしてスージーとの出会いと別れ。

そのすべてが彼の心に深く刻まれていた。


「全てはお嬢様のために・・・・」

 ブライアンは自分にそう言い聞かせ、覚悟を新たにした。

 彼の心には、エリュ・コーエンの計画を遂行することでスージーを守るという使命感があった。

 しかし、その計画がどれだけ危険であるかを知っている彼は、心の中で葛藤を抱えていた。


「これでいいのか・・・・本当にこれで・・・・」

 ブライアンは自問自答しながらも、彼が選んだ道を進むしかなかった。


 その頃、スージーたちは撤退中の車内で沈黙を守っていた。

 誰もがブライアンとの再会に動揺しており、彼の言葉に込められた真意を探ろうとしていた。

 しかし、スージーだけはその沈黙を破り、教授に問いかけた。


「教授、ブライアンが言っていたこと・・・・本当に彼が私たちを裏切っていないと信じていいのですか?」

 彼女の声には不安が滲んでいた。


 教授は一瞬考え込んだ後、静かに答えた。

 「今は彼を信じるしかありません、スージー。 ただ、これからは一層の警戒が必要です。 エリュ・コーエンが何を計画しているのか、我々はまだ完全に把握できていません」


 その言葉に、スージーは何かを感じ取ったが、これ以上の追及は控えた。

 彼女はブライアンがかつての忠実な部下であり、友人であったことを思い出しながら、彼が自分たちを裏切ることはないと信じたいと思っていた。


 車内に再び沈黙が訪れ、その中でスージーは自分の決意を新たにした。

「私は必ず真実を突き止める・・・・そして、ブライアンがなぜエリュ・コーエンに加担しているのか、その理由を知るのよ」


 その決意を胸に、スージーは窓の外を見つめ、遠ざかる倉庫街の影をいつまでも眺めていた。


 ブライアンが闇に消えた後、アキたちは再び教授の指示に従って撤退の準備を進めていた。

 だが、スージーの心には、ブライアンの言葉が重くのしかかっていた。

「エリュ・コーエンの計画・・・・一体何が起きているの・・・・」

 彼女は考えを巡らせたが、答えは見つからなかった。


「スージー、行きましょう」

 リサが優しく声をかけ、彼女の肩に手を置いた。

 リサの手の温もりが、スージーを現実に引き戻した。

「そうね・・・・でも、ブライアンが言っていたこと・・・・私たちはもっと知るべきよ」

スージーはリサを見つめ、強い決意を込めて言った。


 その後、彼らは教授の指示に従い、安全な場所へと移動した。

 道中、スージーは頭の中で次々と疑問が湧き上がるのを感じた。

 ブライアンが語った「守るための嘘」・・・・その背後に隠された真実は何なのか。

 彼が何を知っていて、何を隠しているのか。

 答えを知るにはまだ遠い道のりが必要だと感じた。


 到着したのは、郊外にある古びた洋館だった。

 教授が手配したこの場所は、彼らがしばらくの間、身を隠すのに最適だった。

 アキたちは緊張を少し解きながら、館内に足を踏み入れた。

 古い木製の床が足音に反応して軋む音が響いた。


「ここがしばらくの間、私たちの拠点になります」

 と教授は静かに言った。

 「エリュ・コーエンがどのような計画を進めているのかを調査するために、情報を集める必要があります。 それぞれの役割を決めましょう。」


 教授の言葉に、アキたちは静かにうなずいた。

 彼らはそれぞれの思いを胸に、次なる行動を考え始めた。

 スージーは特に、ブライアンとの再会が何を意味するのか、そしてエリュ・コーエンの計画が何を目的としているのかを突き止めることに集中していた。


「教授、僕たちはどうすればいいのでしょうか?」

 アキが問いかけた。


 教授は少し考え込んだ後、落ち着いた声で答えた。

「まずは、エリュ・コーエンに関連する情報を集めることです。 彼らの動向を探り、その計画が何であるのかを突き止めることが最優先です。 ブライアンの話によれば、私たちが関与すべきでない事態が進行しているようですから・・・・」


 スージーは教授の言葉を聞きながら、ふと一人考え込んだ。

「ブライアン・・・・あなたは一体何を隠しているの? そして、私たちを守るために、どんな犠牲を払おうとしているの・・・・」

 その疑念が、彼女の心をさらに重くさせた。


 翌朝、アキたちは再び集まり、各々の役割を確認し合った。

 アキとタケルは、街に出てエリュ・コーエンに関する手がかりを探すことになった。

 リサとミサは、館内で情報を整理し、教授の助けを借りて作戦を立てることになった。

スージーは、ブライアンの言葉に潜む意味を探るため、一人で資料を調べ始めた。

「エリュ・コーエン・・・・一体何を企んでいるの?」

 彼女は焦燥感を抑えながら、書棚から古い本を取り出した。

 ページをめくる音が静かな部屋に響く中、スージーは一つの真実に近づいていることを感じた。


 その時、館のドアが重々しく音を立てて開かれた。

 アキが勢いよく飛び込んできた。

「見つけた!エリュ・コーエンの手がかりだ!」

 彼の顔には明らかな興奮が浮かんでいた。


「何を見つけたの?」

 スージーが問いかけると、アキは息を切らしながら答えた。

「奴らが次に動く場所、それが分かったんだ・・・・」

 その言葉に、スージーと他の仲間たちは一斉にアキに注目した。


「教授、これを見てください!」

 アキは小さな地図を広げ、その上に印をつけた。

 「ここです、奴らが次に狙う場所はここに違いありません・・・・」


 教授はその地図を見つめ、険しい表情で考え込んだ。

 「急がなければ・・・・」

 彼の声には、緊張と決意が込められていた。

 スージーもその地図を見ながら、自分が今しなければならないことが何かを理解した。

「準備を整えましょう。 次は私たちが仕掛ける番です」

 教授の言葉に全員がうなずき、それぞれの準備に取り掛かった。

 倉庫街での戦いは終わったが、彼らの戦いはまだ始まったばかりだった。


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