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六 モグラ、幽鬼退治に駆り出される⑦

 そして、約束の午後。


 焔幽と香蘭、そして夏飛は事件関係者に詳しい話を聞きに行った。


「何度も同じ話をさせて申し訳ございませんが」


 そう前置きして夏飛が話を切り出す。皇帝自らが出向いているので、みんな真剣に細かいところまで思い出そうと必死になってくれた。その結果、いくつかの共通点が浮かびあがってきた。


『たしかに女という印象を受けました。いえ、顔ではなく身体つきでしょうか』

『すらりとしていて腰が細い』


 幽鬼は女性らしい身体つきをしていたようだ。寿安の証言と一致しているし、やはり四件とも同じ幽鬼の仕業なのかもしれない。


「最後は四件目の被害者から話を聞きます」


 夏飛の言葉に焔幽も香蘭も驚いた。


「昏睡していた方ですよね。意識が戻ったのですか?」

「えぇ、今朝。やっと目覚めて、体調も問題はないようです」


 焔幽もホッとしている。


「なにか新しい証言が聞けるかもしれぬな」


 そんな期待をしながら、彼の室を訪ねた。被害者の宦官はまだ伏せっていたが、皇帝本人が来たと慌てて身体を起こそうとする。


「いや、そのままで。気にするな」


 焔幽は彼の身体を押し戻す。


「無事でよかった。手短かに済ませるから、少しだけ話を聞かせてくれるか?」


 彼はうなずき話し出す。


 やはり彼も幽鬼は女だと感じたようだ。さらに彼の証言はこれまでのものより具体的で詳細だった。


「髪が長く、緩いウェーブがかかっていました。指がほっそりと綺麗で。それと……」


 彼はゴクリと喉を鳴らす。


「夜の闇に瞳が赤く光っていましたね」

「赤い瞳……瑞国では見かけませんね」


 夏飛の言葉に香蘭が答える。


「幽鬼だからじゃないでしょうか。だって爪も短剣のように鋭かったわけでしょう。化物になっているわけですから生前の特徴とは異なるのかも」

「たしかに」


 そのときだった。グッと低くうなるような声がすぐそこでした。


 一瞬、証言してくれた宦官の体調が悪化したのかと心配したが、声の主は彼ではない。


「陛下!」


 夏飛が叫ぶ。


 焔幽がえづきをこらえるように両手で自分の口元を覆っていた。顔も唇も色を失っている。彼の身体はそのままぐらりと地面に倒れかけ、夏飛と香蘭で慌てて支えた。


次章、解決編です。

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