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偽物令嬢は踊らない。  作者: ゆす
第一章 寸劇『第三王女の告白』
8/20

深紅いドレスの女性

 本当の手詰まりである。

 一体どこで間違えたのだろうか?

 もう、逆転の機会は無いのかと、絶望しかけたそのとき。


「あなたたち、嫌がる女性を連れて、どこに行くつもりですか?」


 聞き覚えのある女性の声が聞こえた。

 振り返ると、目元を白い仮面で隠した女性が立っていた。


 風に緩やかになびく長い髪は太陽のような金色。

 深紅あかい薔薇のようなドレスを着て、優雅かつ上品な立ち姿だった。


「そこをどけ!」

 先頭の男が、問答無用とばかりに女性に襲い掛かった。

 おそらく、その体重差は二倍以上。


 だが、深紅あかいドレスの女性は動じることなく呟いた。

「無粋な人」


 レースの装飾の付いた扇子を振ると、突風が生じて屈強な男を吹き飛ばした。


 その様子を見てリリカは行動を開始した。


 リリカは、無抵抗な少女を装っていたが、その前髪の隙間から覗き見える瞳は、冷静に逆転の機会を探していたのだった。


 突風に吹き飛ばされて転倒した仲間の姿を見て、屈強な男たちに動揺が生じた。


 リリカは、その隙を付いて男の腕から抜け出した。

 コマのように回転して、男の膝裏を蹴り飛ばした。

 思いがけない反撃に男は片膝を付いた。


 リリカの回転は止まらない。

 さらに加速した回し蹴りを男の側頭部に叩き込んだ。


 あっと言う間の出来事だった。

 蹴られた男は地面に倒れこんだまま、ぴくりとも動かない。


 リリカが次に襲い掛かったのは、私を抱えたもう一人の男である。

 女性ひとりを片手で抱えているために、リリカの襲撃速度に対応できない。


 リリカは、男の無防備なわき腹に、肘打ちをぶち込んだ。

 小柄な女性の打撃だが、リリカの速度に全体重を固い肘の一点に乗せた一撃である。

 その男は、うめき声をあげて崩れ落ちた。


 私は、腕の力がゆるんだ隙をついて抜け出した。

 リリカと一緒に、距離をとる。

 すると、男たちの周囲を取り囲むように光の円が発生した。


 深紅あかいドレスの女性の魔術である。

「さぁ、お仕置きの時間よ」


 男たちが、我先に逃げ出す素振りを見せたが、すでに遅い。

 まるで襲撃者たちを断罪するかように扇子を振り下ろすと、光の円の中に眩い電撃が発生した。


 そして、光が消えた後には、イオン化して金臭い空気の香りと、気を失った男たちが倒れていた。


--


 私とリリカは、深紅あかいドレスの女性に駆け寄った。


「助けていただき、ありがとうございました。ロベリア様」

 二人そろって頭を下げると、その女性は微笑んだ。


「危ないところだったわね。でも、間に合ってよかったわ」


「でも、どうしてロベリア様が舞踏会の会場にいるのですか?」


 ロベリア様は、この国に三人しかいない、希少かつ貴重な魔法使いである。

 普段は王立時計台で魔術の研究に取り組んでおり、滅多なことで外には出てこない。


「エリザベス様から、緊急の依頼があったからよ。『嫌な予感』が止まらないってね。あなたたちは、ずいぶんと大事にされているらしいわね」


 私は、感激して涙ぐんだ。

「エリザベス様、ありがとうございます」


 リリカも同じように感涙していた。

 そこで私は、大事なことに気が付いた。


 そうだ、控室に残った仲間たちはどうなったのだろうか。

 それに、第三王女様の身柄が心配だ。


「今すぐ公爵家の控室に行きましょう!」


 私たちは、気絶した男たちを会場の職員達に任せて、公爵家の控室に向かった。

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