風の波音に、耳を澄まして
十一月も終わりの
晴れた木洩れ日は
どこまでも優しく
小さな陽だまりの中
風にそよぐ
時の流れを見つめて
足元を埋め尽くす
夢見草の色づいた葉
夢は枯れることなく
心の中で色づいて
風の波音に
耳を澄まして
季節は少しずつ
前へと進んでいく
海のように一面に広がる
晴れ渡る空のどこかで
時に降り出す時雨の雫が
時無草の葉を揺らす小径で
華やかな飾り付けが
始まった街中で
銀杏落葉がサラサラと
銀色に揺れる月明かりに
聴こえてくる風の音
それは季節の足音
風の波音に
耳を澄まして
夜空の海には
オリオン座の七つ星が
もうあんなに高く
駆け上がり
地上の樹々は
イルミネーションに輝く
星のなる樹のように
まばゆい光の木立を
すり抜けてゆく風が
やさしく頬をかすめて
風の波音に
耳を澄まして
空のどこかで
冬が風のとびらを開けて
木枯らしとともに
やって来る
気づけば聴こえてくる
風の音
せわしなく過ぎていく
一日一日の時の中で
何気なく過ぎて
しまうものが
あるかもしれない
季節の移り変わりも
波のように寄せては返す
様々な想いも
夢へと繋がるきっかけも
人との出逢いも
誰かの思いやりも
だから
耳を澄まして
心を澄まして
巡りゆく季節が
教えてくれる
一瞬一瞬の大切さ
風の波音に、
耳を澄まして
「夢見草」は桜のことで、「時無草」は季節外れに芽吹く草を表す言葉とされます。また、「木枯らし」は元は秋の始まりを表しましたが、現在は冬を運んで来る風となっています。街のあちらこちらで季節の移り変わりを感じるこの頃ですが、心を澄まして様々なことを感じ、大切にしていけたら、との願いを描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。




