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戦場

何個目かの魔石が割れただろうか。



ミューズからもらった守りの魔石がキラキラと砕け散っていく。


「念の為と思って持ってきたが、凄い効果だ」

お守り代わりと思っていたが砕けてしまうのはとても切ない。


せっかく愛する人からプレゼントされた物なのに。


しかし、もしもここで命を落とす事になれば二度と会えないと気持ちを切り替える。


命を奪い合うのが戦場だ。

死ぬ気はないが、どうなるかなどわからない。


屋敷に置いておくより身につけてミューズの事を想っていたかった。




戦況は良くはない。


魔法大国と呼ばれるあちらの攻撃は強力だ。


範囲の広い多体相手の攻撃魔法が多いのだ。


こちらも魔術師はいるが、防御壁を張るのが精一杯で、攻撃に転ずることは出来ない。


ティタン達騎士団が攻め入るも一進一退の攻防だ、寧ろ僅かに押されてもいる。


同盟国シェスタも騎士と聖女と呼ばれる攻守一体の戦法を用いて戦っている。


守りや回復に特化したものが多いので、ムシュリウのような広範囲の攻撃魔法に両国共苦戦を強いられているのだ。


(魔法にて頂点に立ちたいという国だったが、こんな早く仕掛けてくるとは)


不穏な噂は聞いていたが、戦争を仕掛けるとは思っていなかった。


不意にあちらの騎士団が逃げるように後ろに下がった。


「何だ?」


揺動か罠であろうと思うが、追いかけるか否か一瞬迷った。


魔術師団が並んでいるのが目に映る。




「はっ?」

眼前に突如現れた炎はティタン達を飲み込むことなく、見えない壁に遮られた。


熱さを感じることも、傷を負うこともない。


ティタンの持つ魔石も欠けることなく自分の懐にある。


「ティタン様!」

何もない空から声がした。


ティタンが見上げると認識阻害の魔術が剥がれ、上空にはグリフォンに乗ったミューズが両手を突き出してこちらを見ていた。


防御壁を張っているのは明らかだ。


急に現れたグリフォンに部隊から困惑の声が上がる。


「あれは俺の術師だ!攻撃するな!」

大声で叫ぶと、ミューズの真下まで走る。


ミューズは防御壁を解かぬよう注意を払い、ゆっくりとティタンの元へ下降する。


「何故ここへ来た!ここは戦場だ!」

怒りに満ちた声、ミューズは予想していたとは言え、本気の怒りに怯んでしまう。


「申し訳ございません、遅くなりました」

「そうではない、命を落とすかもしれないのだぞ。なぜあの森で待っていてくれなかったのだ」


ティタンは表情を歪ませ、自分の不甲斐なさに両の手を握りしめた。


戦いなどに参加させたくないのに。


「助けてくれたことは感謝する、しかし術師殿はここから早く去ってくれ。国や民をを守るのは俺たちの仕事だ」


「嫌です」


決意を込め、ミューズはフードを外し、真っ直ぐにティタンを見つめる。


長い金髪は邪魔にならないよう結い上げられ、金と青のオッドアイはティタンを見つめている。


白い肌に整った顔立ち。

どよめきが走るのをティタンは苦々しく思った。


「私の事はミューズとお呼びください、そしてあなたの配下に加えてください。攻撃も防御も回復も行えます。ご命令があれば何でも致します、ですのでどうかお側に仕えさせてください」


恭しく礼をすると、ミューズの手から金色の粉と放たれる。


騎士たちの怪我は回復し、体が軽くなった。


「あなたが望めばあの炎よりも強いものをあちらに返せます。私は剣にも盾にもなれます。どうかご命令を」


あちらの攻撃が収まり、防御壁も解かれた。


次なる決断を急がねばならない。


「すぐにここを立ち去ってくれ」

思う気持ちは変わらない。


「嫌ですってば。命を落とすかもしれないこの地であなたと離れたくありません。私は貴方と共に生きたいと思いここまで来たのですから。無理ならば私は単独で行きますよ」

「待て!」


すぐにでもグリフォンと飛び立ちそうなミューズを抑える。


「敵を倒すのは俺たちの役目だ。だから俺たちに防御壁を張ってほしい。君は俺の側で常にサポートしてくれ。けして離れるな」


帰らないというならば側に置くしかない。

そして彼女に人を殺めさせるわけにはいかない。


「ついてこい、遅れるなよ」

「はい!」


防御壁と言われたが、身体強化の術もかけ、ブーストしておく。

特にティタンには念入りに防御壁をかけた。


「敵を殲滅する、皆遅れをとるな!」


大剣を手にし、ティタンは駆け出した。



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