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森の魔術師は王国の騎士に求婚される  作者: しろねこ。


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20/20

婚姻、そしてこれからは。

「綺麗だ、ミューズ。ずっとこの日を待ちわびていた」

ヴェールを上げ、うっとりと妻になる人を見つめる。




あれから1年、ようやく正式な夫婦になるのだ。




白いドレスにはたくさんの刺繍が施されており、宝石が散りばめられている、時間をかけて丁寧に作ったのが見て取れた。


キレイなオッドアイは少し潤んでおり、僅かに震えていた。

「ありがとう、私もとても嬉しいわ」




怒涛の一年がすぎ、ミューズの生活も人生もガラリと変わった。


パーティ後は領地経営を学ぶため、まずはひと通り基礎知識を身につけようと家庭教師を増やし、みっちりと勉強した。


女主人としての屋敷の仕切り方も覚える必要があった。


ティタンも領主になるための勉強と、時折護衛騎士としてエリックに付き添い外交に出ていた。

一応第二王子という地位であるからだ。


ラドン達の裁判がすすみ、夫妻は極刑が決まった。

スフォリア領は王家が管理し、然るべき後ミューズに渡すと手続きが取られる。


エリックとレナンがミューズに少しでも良い状態で引き渡す為に尽力し、スフォリア領地の経営をもり立てていった。


将来の国王になるための勉強の一環としても兼ねている為、体のいい練習地となった。


その内にレナンが懐妊。次代の後継者ということで大いに喜ばれた。


「ティタンの婚約者が決まるまではと思っていたがとても嬉しいよ」


その時のエリックの笑みは何も含みを持たせず、心からの笑顔だった。


過保護すぎるくらいレナンを守り、甘やかし、今から子煩悩が期待される行動だった。




スフォリア邸を追い出される事になったカレンには幾ばくかのお金を渡し、修道院、もしくは隣国にて平民になるかを迫った。


どちらも嫌だと駄々をこねるカレンだが、両親の処刑を知ると修道院を選んだようだ。


令嬢としての贅沢を覚えた後、また横暴過ぎる振る舞いをしていた身としては平民として、市井で働きたくないようだ。


カレンの我儘な性格を考慮し、更生を願って有名な修道院に行くことが決定された。


その後しばらく王家宛にやっぱり嫌だ、義姉のもとに行かせてくれと懇願する手紙が来たが全て無視された。


脱走を試みたそうだが、それを堺にぷつりと手紙が来なくなったようだ。




亡くなったリリュシーヌのお墓に手を合わせたり、ミューズのために立てられたお墓を見に行く。


「自分の名が刻んであるって不思議…」

複雑な表情になってしまう。


「そういえば、不思議に思ったのですが、貴族の話で墓を掘り起こしたって話されてましたね。その方のおかげで私が死んでいないとわかったのなら、是非お礼がしたいのですが」


ティタンは苦笑いをしてしまう。


「まさかそんな事になっているとは思ってなかったようだよ。君が幸せになればそれでいいって話していた」


自分の歪んだ思いはさすがに伝えられなかった。




今日の結婚式には師匠であるジュエルも来てくれていた。末席にてひっそりと見てくれていて視線が合うと小さく手を振ってくれた。


サミュエルの姿はない。


「メッセージを預かったわ」

近くを通った際にこっそりと耳打ちされ、思わず涙ぐむ。


孤独な子ども時代の大事な友達、彼にも幸せになってほしい。




「それでは誓いのキスを」

誓いの言葉は交わしたので、あとはメインだけ。


今日はヒールの高い靴を履いているが、やはりティタンの背は高い。

「失礼する」

「えっ?」

ふわりとミューズの体が浮き、横抱きに抱えられた。


壇上でしかも長身のティタンが抱えたので、より周りのものからも見えやすくなった。


ジュエルが幻影魔法でキラキラとした光の粒子を二人の周りに浮かばせる。


日の光を反射し、幻想的な、印象に残る光景だ。


「一生離さないからな」

「私もよ」

微笑みあい、ゆっくりと唇を重ね合わせる。




歓声と心からの祝福に囲まれ、二人は幸せな今を手放すまいと誓いあった。





完結いたしました、ありがとうございます。



誤字、脱字報告ありがとうございます!


知識不足、表現不足などございますが、ここまで読んで頂き感謝致します。



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