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連勝中の私が唯一勝てないもの  作者: 「」
二章 二年生
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新学期

 今日から新学年。

 いつもより早く起きる。

 制服に着替えてから、鏡の前に座る。

 寝起きだからというわけでもなく眠そうな目。

 タレ目がそうさせている。

 いつの間にか出来ていた目の下の黒子。

 父さん譲りのこの赤茶色の髪をミディアムボブにしている。

 元々は癖がなく真っ直ぐ伸びていたが、最近母さんと出掛けて毛先だけパーマを当てた。

 私の髪質はすぐ解けるらしくヘアアイロンなども買ってもらった。

 髪をブラシにかけ整える。

 まだパーマは効いてるようで、ゆるいウェーブが掛かったような形になっている。

 あとはリップだけを付けて準備が整う。



「どう母さん?」

「うん。ばっちり」



 母さんがいうのなら大丈夫。

 朝食を済ませて学校に向かう。

 校舎前の広場に生徒が群がっていてクラスの張り出しに一喜一憂している。

 二年A組。

 名字のおかげで、すぐに見つかる。

 あとは……。

 三年B組が先輩のクラス。

 先輩を探して三年の教室に向かっていた。

 教室に入ろうとする人の良さそうな三年生の女子を一人捕まえる。



「すみません、先輩を呼んでもらえますか?」

「え?」



 なんだろう。

 困惑しているのが見て取れた。



「あの、先輩を」

「どの先輩?」

「……柊先輩です」



 そりゃ伝わるわけないよね。

 女子生徒が先輩をつつき私を指差す。



「どうした市ノ瀬?」



 自覚してしまったからだろうか。

 わずかに心臓の鼓動が早まるのを感じる。



「えっと」


 

 少し言葉に詰まっていると。



「市ノ瀬、イメチェンした?」

「はい。少しだけですが、変でしょうか?」

「いや、すげぇ似合ってて可愛いと思う」

「……そうですか。素直な感想ありがとうございます」



 見た目を褒められるのは嬉しいのだけど、要件はそれだけじゃない。



「たまには私から勝負を挑もうと思いまして」

「いいけど、何すんの?」

「いつもの1on1なんですけど、期末テストの時と同様に今回負けたほうが何でも言うことを1つ聞くっていうのでどうでしょうか?」

「ん?」

「鈍いですね」

「いや、ベタだなって」

「最初に先輩が言い出したんでしょ……」



 話の腰を折られてしまったけれど、こういう会話も楽しい。



「たまには何か掛けないと真剣勝負って感じならないかと思いまして、先輩負け続けですし」

「……うっ」

「それでいいでしょうか? 今日も私が勝つと思いますけど」

「そこまで言うなら。今日は僕が勝つから」

「がんばってください」



 では、と要件を伝えたので足早に自分のクラスに戻る。

『すげぇ似合ってて可愛いと思う』

 思い出して顔が熱くなる。

 先輩の姿を振り払いながら席に着いた。

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