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連勝中の私が唯一勝てないもの  作者: 「」
一章 一年生
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バレンタイン

 二月十四日。

 うちの学校ではチョコを持ってくることは許可されて、校内で食べなければ良いというスタンスだった。

 そのせいで男子生徒は勿論、女子も浮足立っている。

 私の回りにも興味ないと言いながらそわそわしている男子生徒が何人かいる。

 女子の付き合いもあるので友チョコは持ってきている。

 先輩に上げるかどうかは悩んだ末、こんだけ長い付き合いになり学校で一番仲がいいとも思えるのに渡さないのは変な感じがして準備した。

 少しだけハードになった部活の後、日課を終わらせる。



「これ先輩に」

「さんきゅ」

「軽いですね、一応手作りなんですが」



 こういう時の男子はどぎまぎするものじゃないかと思っていたけれど、先輩の反応は冷めていていつも通り。



「そうなんだ。めっちゃ綺麗なラッピングだったから市販かと思った」

「こんなもんじゃないんですか?」

「どうだろうね。比較対象そんなにないし」



 渡したチョコを先輩は色んな角度で眺めている。

 失敗してるところを探しているようにも見えるが、慣れてしまえばどれも綺麗に包めるので粗捜しをしても無駄だと思う。



「そんなにってことは、何個か貰ったんですか?」

「今年は5つ貰ったよ。これ合わせて」

「ふ~ん。良かったですね」



 もやっとする。

 渡さなければよかっただろうか。



「僕甘いもの結構好きだからね。うれしいよ」



 子供みたいな感想だった。

 いや、中学生の感想というより小学生みたい。

 笑ってしまった。

 私の知る中学生生徒より誰よりも大人っぽいのに変なところで無邪気で可愛い。



「それに市ノ瀬はこういうイベントに興味なさそうだから、もらえてすげぇー嬉しいよ」

「……どういたしまして」



 不意打ちはズルい。

 意識していなくても鼓動が早まる。



「市ノ瀬」



 改めて名前を呼ばれる。

 辺りはもう薄暗く、校内には私と先輩だけ。

 バレンタイン当日。

 運動のあと熱を少し帯びた身体に、冷たい風が頬を撫で心地いい。



「……はい」



 先輩の目は私をしっかりと見据え。



「市ノ瀬の家に今日ごちそうになって良い? 美味しいコーヒーでチョコ食べたい」

「なんなんですか……」

「え、駄目? 突然だったからやっぱり迷惑だよなぁ」

「大丈夫ですけど」



 本当になんなんだこの人。

 もやっとして鞄を先輩の背中にぶつけて下校した。

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