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連勝中の私が唯一勝てないもの  作者: 「」
一章 一年生
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夏休み明けの一コマ

 夏休みも終わりいつもの日常。

 長期の休みが終わっても先輩との勝負はずっと続いている。

 いくら上手くなったとはいえ私のほうが実力は上。

 全戦全勝。

 今日の部活では先輩は何をしてくるんだろうと密かに楽しんでいる。

 そんなことを考えていると後ろから声が。



「夏菜は彼氏作らないの?」



 四限目が終わり給食の時間。

 四人で1グループで席を作っている最中に隣の席でクラスメイトの中では一番よく話す橋田さんだった。

 グループを作るのは他の学校ではどうなんだろう?

 目の前の男子がこちらに興味を示したようだ、気にしてない風を装っているけど丸わかり。



「私はずっと部活だったから」

「部活でも男子いるよね? その中でいい人いないの?」

「いないよ」



 一瞬、先輩を思い浮かべたけれど。

 あれはなんというか変人で面白い人。



「すっごい可愛いのにもったいないよね」

「そう?」

「同じ学年なのに大人っぽいし」

「それは私があんまり人と話すのが得意じゃないからかな、それとも老けてみえるのかも」

「そんなことないよー。私今3年の先輩と付き合ってるんだけど……」



 興味のない話を振ってくるので、相槌を打ちながら適当に流す。

 誰と誰が付き合おうが興味がない。

 好きにしたらいい。

 給食を食べ終わった人から昼休みになるので、私は流し込むようにして食事を終えて席を立つ。



「じゃあ、私行くから」

「うん、また後でねー」



 昼休みの図書室。

 教室が五月蠅くて逃げてきた。



「先輩?」



 学校で静かな場所といえばここしかない。

 ついでに読書も嫌いではないのでちょうどいいと思ったのだけれど、そこで思わなぬ人物の姿が見えた。

 先輩が奥の方で本を吟味している。

 先輩と話すのはクラスメイトより気を使わなくいいからいい気分転換にもなる。

 近寄ってみることにした。

 足音で私に気づいたのか振り返る。



「市ノ瀬か、部活以外で会うの初めてな気がするな」

「そうですか?」



 公園で練習しているのを良く見かけるんだけど。

 私から話かけていないから気づくわけもないか。



「うん、制服姿の市ノ瀬あんまり見ないからちょっと新鮮」

「確かにそうかもしれませんね。私も先輩の制服新鮮ですね」



 日課の勝負も終われば各々解散している。

 お互いに部活以外で会うことはなかった。



「先輩って負け続けてるのによく諦めませんよね?」



 私は素直に気になったことを聞いた。



「僕、負けず嫌いなんだよね。ただ、それだけだよ」

「にしては部活終わりに一人で練習してましたよね? 私と勝負する前から」

「あぁ、あの時は大会で一勝も出来ずに負けたのが悔しくてさ」

「なるほど、本当に負けず嫌いなんですね」

「そうだよ。悪いか」

「いえ、いいと思います」



 今時、珍しいと思う。

 先輩の見た目は特徴があまりなく、影薄いとさえ言える風貌。

 顔はちゃんと見ればイケメンに分類されると思うけれど、直接顔を眺めなければ見逃される。

 バスケをやってるだけあって身体は鍛えられているものの、それは夏服だから分かることで冬服を着れば更に没個性になりそう。

 言ってしまえば普通の人だ。

 ただすごい負けず嫌いなところが個性といえば個性なのかも。



 それから少し雑談をして『また部活で』と別れ、教室に戻った。

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