二、白球のプリンス編②
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二、白球のプリンス編②
さあ、遂に試合前だ。会場たる球場にやって来たぞ。ここで試合前、主人公に対し、ヒロインが御守りを渡す。その場面に私、涼香も立ち会うことになる訳だ。そう。あそこだ。バスを降りて直ぐ、球場の屋根の下。行ってやろうじゃないの。私は歩を進める。
「瑛大。これ」
「美幸。これ。お前が作ってくれたのか?」
いいシーンじゃないか。虫唾が走る。世の少年達はこのシーンに憧れ、野球を始めるのだろうな。この涼香はこれを見て、焦りを感じ、試合に勝ったら主人公に告白する意思を固める。でも、試合は負けだ。フラグは折れる。可哀想な噛ませ犬じゃないか。そんなんじゃ駄目だ。私は必ずこの試合に勝たせる。
「あら。有賀さん」
あら、有賀さんじゃないんだよ。こっちに気が付くのはいつもヒロインだ。この性悪どもめ。そうやってマウントを取ろうとしてるんだろうがよ。そうはいかねえよ。でも、ここは我慢だ。試合が終わってから、じっくりと痛めつけてやる。
「瑛大さん。今日の試合よろしく頼みますわ。そしてこの試合、絶対にうちが勝ちますわ」
「うん。よろしく! こっちも負けないよ」
主人公らしい言い返しだ。だから好かれるんだろうね。でも、勝つのは私だよ。絶対にね。君のハートを射止めるのは私だよ。この性悪じゃない。
「瑛太。球王に負けないで」
「ああ、勝つよ。そして美幸を甲子園に連れて行くよ。見てて」
そう上手くはいかさねえよ。さあ、試合といこうか。
もうすぐプレイボールだ。状況を確認しておこう。この試合は本来負け試合だ。やる前から神の意志で決まってる。でも、それは私の介入で曖昧になった。運命はたゆたっている。向こうが有利に変わりはないがね。
瑛太のいる学校は玉田高校。弱小私立の汚名を背負っている。ここまで来たのが奇跡だと言われているが、それは作品の都合上だ。ここまでくるチームが弱いわけ無いし、何より主人公のいるチームということもあり、やたら設定の強い選手が揃っている。もともといいものは持ってるってやつだ。
つまり、玉田高校は普通に強いのだ。ライバル校で設定も適当なうちに比べてももう向こうが強そうな感じだよ。まあそれはよくあることだ。
実力的にこっちが圧倒的なら。一応、作品的にはそういう描写だが。実際はそうじゃないのだから、運命をひっくり返すのはなかなか難しい。でも、だからこそ面白いのだ。やりがいがあるのだ。これをやり切ったとき、あの性悪ヒロインがどんな顔をするか楽しみだ。
さあ、試合前練習だ。皆、気合が入っているな。戸惑いもあるみたいだが、まあ、今日の監督は私なのだから仕方もないだろう。
私の作戦は実に簡単だ。ここに来る前にもう渡しておいた。相手の弱点。それを徹底的に調べ上げたノートを。それの通りに選手には動いてもらう。私は以前から、この作品には目を付けていた。私の前の持ち主も好きだったからね。令嬢の扱いには腹が立ったものさ。
だからリサーチは完璧だ。これで悪魔たるヒロイン率いる悪の集団玉田高校野球部を叩きのめすのだ。
さあ、そろそろ試合開始だな。
見せてやるよ。ヒロインという存在を憎む私の力を。
続く。
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