B3
兄上との鍛錬が終わり、2人で汗を流した後は帝国への挨拶の為に王家正装に身を整えた。
ちなみにゴーレムは兄上が破壊してしまったものの、核となる部分が残っていたそうなので修復は可能だとか。俺の修行相手がいなくなることはなかったので一安心だ。
「もうそろそろあのアホ共がやってくるな。」
「兄上、あまり大声でそのようなことは…。」
「ハハ↑本当のことを言ったまでだが、確かに控えなくてはなあ」
兄上は威風堂々としているがその反面歯に衣着せぬ部分が多々ある。親睦会でもそのような点がでなければ良いのだが…
城門前で出迎えようと兄妹で待ち構えていると
「お兄様!来ましたわ!」
エラの声と共に巨大な竜が王城前の広場に続々と舞い降りた。
おおよそ15体ほどだろうか。
どれもが俺一人では瞬殺されてしまうだろうランクの高いドラゴンたちだ。
その姿は荘厳であり、圧倒的であった。
3体の竜の上には玉座が備え付けられており、内2つには忌々しい2人が鎮座していた。
第二皇子ゾムと第三皇子ゴルだ。
「ようこそおいでくださいました、サドニカ帝国の皆々様。」
エラがスカートの裾をひらりとつまみ、丁寧にお辞儀をする。
だが奴らは聞く耳持たずだ。
「あーあー、相変わらず金くさいきったねえ城だなー!」
「見てくれだけは一丁前の国だからな。お前がつつけば直ぐに粉微塵だろうさ。」
でっぷりと脂の乗った巨体を持つゴル、そして顔まですっぽりと布で隠し、ゴルとは正反対にボディラインがまるでわからないゾム。
2人は思い思いに罵詈雑言を吐きながら竜から降りてきた。
俺は自分でも驚くほどの殺意をもって2人を睨みつけた。
「お二方程度の未熟な腕前ではかえって指が折れてしまうでしょうね」
エラが驚いた様子でこちらを振り返った。
兄上は何も言わずニヤリと笑った。
「へーー、どこの、誰かさんが、なんだってー?」
ゴルが恐ろしい形相でこちらへ歩を進める。
顔は見えないが恐らくゾムも似たような表情だろう。
「肉に埋もれて耳が聞こえないようですね。俺が言ったんです」
その瞬間ゴルは勢いよく突っ込んできた。
「やめろ」
しかし、ゾムの一声で俺の目の前でピタリと静止した。
「面白いことを言うじゃあないか。聖剣を引き抜いただけで一人前気取りか。」
ゾムがゴルに何らかの魔法をかけたのだろう。ゴルは青筋を浮かべながら止まっている。
「今日の親睦会は有意義なものにしようぞ」
そう言い残し、帝国の者たちを連れて兄弟は中へと入城していった。
ゴルはまるで風船のようにゾムの周囲を静止しながら浮かんでいた。
「ハハ↑流石は我が弟だな。豪胆であったぞ」
兄上が笑いながら肩を組む。
エラもなんだかホッとしている様子だ
反対に自分はなぜあそこまで激情に駆られていたのかが理解できずにいた。
俺は2人には何度も会っているはずだ。
どうしてあの2人を見ると。。。
ズキズキと痛む頭に手を添え、俺は兄上の腕の中で歯を噛みしめていた。