B2
「ハッ!ハッ!ハア!」
竹刀を片手に魔道人形へ何発も叩き込む。
ゴーレムは何も語らず、致命傷となるだろう部位への攻撃を的確に防ぐだけで俺に対して攻撃はしてこない。
「まだレベルが上がらないか…。」
このゴーレムは特別製なのだ。対する相手にあわせて自身のレベルを最適化することが出来る。
今は休眠中のクマのような見た目で目を閉じている。
体表もクリーム色だ
見る限り、俺はまだレベル20といったところだ。
エラなら恐らくだが60前後。
兄上なら。。。
「朝から感心だな。カケル」
急な声に吃驚しながら振り返る。
そこにはミドラ第一王子―――俺の兄上が目と鼻の先にいた。
「ふふ、相も変わらず見事な腕前です。あといつもながらお近づきが過ぎます…。」
「ハハハ↑愉快愉快。大切な弟が汗水たらしておるのだ。よく労うのも兄たるゆえだ。」
「距離の近さは労いとは関係ないですけどね。いまは汗臭いのでなるべく離れて欲しいです…。」
ハハハア↑とまた豪快な笑い声を上げながら俺の肩を組む。いつも思うが兄上は距離感が近すぎるのだ。
「弟よ、だがまだまだ鍛錬が足りぬぞ。」
その瞬間視界が大きく揺れ、目の前に巨大な刀が振り落とされていた。
「なっ!!」
刀の持ち主はゴーレムだった。先ほどまで何もしなかったはずのゴーレムが目を赤く見開き、刀を両手で構えこんだ姿でこちらの動きを窺っている。
鎧のようなものに身を包み、体表が薄く朱色に染まっている。
こんなゴーレムは見たことがない…!
それに
いま、俺は兄上が引き込んでくれなければ死んでいた
その事実に火照ったからだが一瞬に冷え切った。
「今日は特に大事な日だからな、もっとお前には上を目指してもらわねば」
兄上は何事もなかったかのように話を続けている。
「カケル、竹刀を借りるぞ」
「は、はい!」
俺は慌てて竹刀を渡そうとしたが既に兄上の手にあった。
いつとったんだ…。
「さあて、
久しぶりにやるかあ」
刹那、ゴーレムの頭部が俺の目の前を舞った。