もう戻れないぞ
さあいこう
ガチャ
奥の控室であろう扉を開ける。
誰もいない。
残るは廊下の奥だけなのだが、明らかにそこには「EXIT」と書かれている。裏口やん。
おかしいのはかけるくんまで居ないことだ。
控室にいないということは裏口から外に行ったのかな。
うーん。
外に行く前に念のためもう一度控室の扉を開けて中を確認した。
「ひっっ!」
ありえないくらいびっくりした。心臓がきゅっとなった。絶対一瞬止まった。
中には先ほどまでそこに無かったはずの大きな盃のようなものが置いてあった。
色は赤黒く、大きさは僕の背丈ほどある。
思わず口をふさいだ。生臭い
鼻の中に魚のはらわたを詰められてるようだ。気持ち悪い
だのになんでか涎がとまらない
それに大きな音を出してはいけない気がした。
というかさっきまで置いてあったロッカーや控室の小物類が軒並み見当たらない。
あるのは天井にろうそくのようなものと、この盃だけ。
壁も石を積み重ねたような古臭いつくりだ。
歩を進めて盃の中を覗こうと思ったが、途中でやめた。
おかしい。
これは明らかにおかしい。
テレビのドッキリにしてもこんな一瞬で部屋を変えることなんて不可能だ。
それにかけるくんはどこ?
分からなすぎて思考が全然まとまらない。
考えが拡散する。
いいや。
盃の中を覗いて、それから警察にいこう。
高校生が手に負えるものじゃないよ
警察は115?109?あれ、わからない、もっと短めで頼むよ次からさ
一歩、一歩と盃に近づく。
心臓の音しか聞こえない。喉に心臓があるみたいだ。
ドクっドクっ
盃が動いている錯覚に
襲われる。
ドクっドクっドクっ
部屋の空気が一気に冷えている気がする。
寒いはずなのに脂汗が
とまらない
ドクっドクっドクっドクっ
遠い。盃が見えた。
そっと脈打つ盃に触れる
脈打つのは僕か、こいつか
本能がやめろとアラームだ
荒い息づかいの中、
こわい
初めて
だめだ
盃を
もう戻れないぞ
僕は盃をのぞきこんだ
中には
ボアw区のzン死体がころおおg2っていた