C1
「おかしいな、竜が減っている」
私は飛竜の谷を眺めながら仲間に伝えた。
「シスが食べ過ぎちまったんだろ」
「お前も後で私の胃の中だよ、アイス」
赤毛のアイスがキャッキャと笑う。
相変わらず緊張感のない奴だ。
村を出た攻撃型は大森林の奥、飛竜の谷へ来ていた。
ここのところ森林のモンスターが活発化しており、ここらを統治していた竜族に何か起きたのではないかと話になっていたのだ。
…予想はあたりのようだ。明らかに竜が数を減らし、被食者側のモンスターが動きやすくなったのだろう。
この地域において生態系の準頂点にいるのが竜だ。
竜が減れば相対的に大森林のボスウルフや草原のカニバルフラワーの増殖に繋がっていく。
「うちらで森林のモンスターを調節した方がいいのかな…」
「そうだな。その前に問題の原因を突き止める必要があるだろう」
わしわしと薄い桜色の毛色をしたアリスの頭を撫でる
「もう、シス姉はすぐそうやって!」
アリスの頭をわしわしするのはやめない。
「一度村に報告に戻るか?」
「そうだな。ただ、幸い攻撃型も揃っていることだ。二手に分かれて主力部隊で谷を軽く見て回ろう。」
部隊を見回す。皆異論はないようだ。
「よし。部隊を2つに分ける。攻撃型になってから50年以上の者は私と共に谷へ向かう。それ以下は一度村に戻って長老様へ報告しきてくれ。」
「あーあたい何歳だっけなー。そんなに生きてない気がするわー」
「お前は黙ってこっち側だ」
「あたいらもおばさんだねー」
アイスと私は村でも年長者に位置するだろう。
長い付き合いだ。私も頼りにしている。
「了解しました…。」
アリスが行きたかったのだろう。むう、とふてくされた顔をしてそっぽを向いている。
「案ずるな。もう幾ばくかでお前もこっち側だ、アリス。村の人間の世話も頼んでいいか?」
「人間なんて放っておいても、、、」
「アリス」
がしっと頭をつかみ、髪の毛をかきまわす。
「人間といえど困っている者を見捨てるのはエルフとしての名誉を捨てるのに等しい。エルフたるもの…」
「高潔たれ、ですよね」
「ふふ、その通りだ」
ぼさぼさになった頭を直してやりながらアリスと目を合わせる
攻撃型になってまだ日が浅いが聞き分けの良い子だ。
「それでは、出発しよう。夜明けには戻る」
私はアイスたちと共に谷に向かって森を抜けた。




