A6
コツコツと城内を歩く。
おいらお腹減ったんだよね。
ここはサドニカ帝国城内。
王国はどうか知らないがここは赤を基調とした装飾に彩られ、鎧や武具も廊下に備え付けられている、いうなれば豪華絢爛な武器庫のような城だ。
「やっぱり鎧ってかっこいいなあ。おいらも着れるんじゃろか」
ゾムが会議中はこちとらやることがない。
早くおわらんかなと思いつつ、最近は城内散歩にはまっているのだ。
「!?」
バチイ!と鎧に触れた手が勢いよくはじかれる。
「いいった!!なにこれ」
触れた箇所から紫の魔法陣が現れ、またすぐ見えなくなった。
どうやらこれらの装備は盗人防止の結界が施されてるみたいだ。
ふうむ。
おいらも冒険者デビューできるかとおもったのに
ダダダダダと城の警備が走ってきた。
「先ほど結界に反応があったのですが…。」
「ほんとにごめんなさい。ぼくです…」
「カエデ様でしたか、中には触れたものを攻撃するものもございますので十分にお気を付けください。」
「はい、、、すみません。」
めっちゃいたたまれない。
口では優しくてもこのガキ何してるんだ感が警備の方から感じる。
こっち見ないで…
警備に白い目で見られていた時。
「ギエン様!お帰りでしたか!」
凄い勢いで警備がひれ伏す。
内心でドキッとした。
「・・・」
廊下から部下を引き連れて歩いてくる男は何も発さない。
僕はいつもこの人が現れると目が離せなくなる。
サドニカ帝国第一皇子―――ギエン=サドニカ
金色の髪をもち、翡翠の色をした双眸。
優美な面持ちとは裏腹に滅多に自分の内を明かさない。
ここサドニカ帝国は皇子を決闘で決める。
ゾムもゴルもどちらも帝国分家でありながらその強さを誇示し、皇子の地位まで上り詰めた。
だが、この人は違う。
帝国本家の血筋を引きながら、他の追随を許さないほどの強さをもつ。
サドニカの最高傑作…。
「・・・」
目の前でこの男は立ち止まった。
後ろには帝国軍最強部隊―――通称ギエン部隊がいる。
いつもそうだ、
どうしてかわからないけどこの人の顔を見ると目が離せなくなる。
「あ…。」
これは畏敬なんだろうか。それとも恐れなんだろうか。
わからない。
声を出そうにもうまく言葉が出ない。
何を伝えたかったかわからなくなるのだ。
「・・・」
ギエン、様は何も言わず横を通り過ぎていった。
ギエン部隊の栗毛の女性がこちらをひと睨みしてきたが、
自分はそれを意に介さず、その場に立ち尽くした。
この気持ちは何なんだろ。
ぎゅっと胸を押さえつけながら、
僕は後ろからギエン様の耳飾りを眺め続けた。
「・・・」
廊下の隅でその様子をゾムは何も言わず見ていた。




