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おもしろくなってきました
本当にあっという間だった。
突如襲ってきた人間たちによって村は火をつけられ、
煌々と燃え盛っていた。
森の暗闇の中で鮮明に殺されていくエルフが目に焼き付いた。
「子供を連れて逃げるのじゃ!森の奥まで!!」
あ、セボスだ。
セボスが走りながら声を荒げている。
額からは血を流し、首にぶら下げたしゃれこうべが割れている。
「長老も早く!!」
「わしはよい!行くのじゃ!!!」
「ハア!ハア!うヴィ」
目の前で走っていたエルフの頭がはじけ飛ぶ。
ああ、ああ。服がきちゃなくなるよ。
もう少し離れてくれたまえ
「村の隅々まで探し出せ。基本は生け捕りにしろ。抵抗する者は殺しても構わん」
頭の先からすっぽりと布で隠れている男が部下へと指示を出す。
それを見つけた僕はゆっくりと
エルフの波に逆らって歩を進めた。
「お主!何をしている!そちらは危険じゃ!!」
セボスが後ろから凄い剣幕で叫んでいる。
ふうむ。
「まだ気づかないとな」
布で怪しさ満点の男の前でセボスに振り返る
「記憶喪失も意外と楽しかったよ」
「――――――――――――――!!!!!!!!!!」
何か叫びながら突進してきたセボスは
僕の目の前でまるで水風船のように膨れ、弾けた。
「探したぞ、カエデよ」
「いや、絶対遅かったよね。普通に2週間近く待ってたんだけど」
セボスだった赤い水たまりから割れたしゃれこうべを拾い上げる。
これちょっとお洒落で欲しかったんだよね
布の妖怪ーーもといサドニカ帝国第二皇子ゾム
僕の愛する人だ。
「許してくれ。王国に用があってな。都合が中々つかなかったのだ」
「あんな場所に行ったの!?」
あわててゾムの首元に顔をうずめ、においをかぐ。
うーん、よきかな
「ただのゾムでした」
「お前に会うのだ。小綺麗にしてきたに決まっておろう…」
「てっきり金くさくなってるものかと」
「ゴルも似たようなことを言っていたな」
「いやだ!あいつと一緒だけは勘弁して!」
鳥肌まみれの腕をゾムのマントの中で温める。
ぬくい...ぐっどすめる...パーフェクトだ...
「皇子!捕まえたエルフ共はどうしますか?」
「袋に詰めておけ。後で奴隷用と外交用とで処分する」
へい!と卑しい顔をして部下がその場を去っていく。
エルフってかわいいしね。
奴隷商もこの数なら相当なお値段で買い取りそうね。
「僕というものがありながらエルフを捕まえるとは。けしからんですな。」
べしべしとスーパーカエデチョップを腹に叩き込む
「心配するな。エルフなんぞに興味はない」
「。。。あ、」
ゾムに突然唇を奪われる。
キスをしながら、
ゾムの背後で燃え盛るオレンジ色がまるでシスの部屋の暖炉のようだと、なんとなく考えながらそっと目を閉じた




