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コミュ障ソロハンター生活  作者: ネームレス
開拓都市ヴェルト
4/7

みなさん初めましての人は初めまして。もしかしたらいるかもしれな知ってるよと言う方はこんばんは。ネームレスです。

この度は嬉しい事が起きたのでこの場で報告しようかと思います。

なんと、先日投稿した読ませる気のない活動報告に「読みました」とのコメントをいただきました。こういう時、どういう対応をしたらいいのか分からなかったのでこの場を使って感謝を。

やはり読んでる人がいるというのは嬉しい物で、舞い上がってしまいました。

読者の皆様への最大の感謝をはエタらず、今の更新頻度を守ってきちんと物語を完結させることだと思います。まだまだ始まったばっかりのコミュ障ソロハンター生活ではありますが、これからもお付き合いください。


ひゃっほーい!

「とりあえずお前の装備を整えよう」


 ラクはギルドから出て早々、アイに言い放った。


「今の装備じゃダメなんですか?」


 アイはそう返す。駆け出しようではあるが、アイもまた全身装備はそろえている。しかし、ラクは首を振るう。


「それ、メタルシリーズだろ?正直、弓使いと相性が悪いんだよ」


 メタルシリーズ。モンスターの素材を一切使わない、伝統的な一般装備である。しかし、クセは無いが良くも悪くも初期装備である。


「装備の力を引き出すにしても、せいぜい身体能力上がるくらいだろ」


 装備の力を引き出す。それは言葉通りの意味だ。

 この世界は生命力で満ちている。モンスターにも、植物にも、鉱石にさえ、自らの存在を主張するかの如く生命力の暴力を振るう。

 そこに着目したのが人間だった。数多くの試行錯誤の果て、その[死してなお衰えない]その生命力を自らの力へと変える術を手に入れた。

 それこそが今に伝わる加工技術である。しかし、武具へと変わって人間の力となったその生命力もただ人では扱うどころか引き出す事も出来ない。大なり小なり、その力を引き出して、自在に操る事ができる人間。それこそがハンターなのだ。


「弓矢は矢そのものに力を乗せる事は出来ない。威力を出すには弓矢自体を巨大化させるか、裏技だけど、矢をモンスターの素材で作るか、だ。まあこれはコストがめちゃくちゃかかるからおすすめしない」

「なんでですか? コストはかかるかもしれないけど、強力な奥の手はあったほうがいいんじゃ?」

「無いに越したことはないけど、そんなの用意するより立ち回りで前衛のサポートして武器振るってもらった方が早い」


 弓矢と言う武器はどこまで行っても主役にはなれない武器であった。ラクはそれを承知で使っているが、目の前の少女はどうか。弓矢のメリットは[前衛よりは安全な場所に位置取りができる/前衛が壁になってくれる]というくらい。それ故に、味方からのヘイトも集めやすい。なにかしくじれば大抵は弓使いのせいにされるし、実際[なにか]をなくすためにいるのだから当然ともいえる。

 ラクが弓矢を使い続けているのは、自分の一番の才能がこれだと確信しているからであった。今更他の道を模索するのもめんどくさいし、新しい人間関係の構築もしたくない。ハンターであれば、底辺の中ではそこそこ名が売れているという自負もある。ぶっちゃけ、ながされるままにここにいる。

 だが、アイはどうか。目の前の少女なら、生傷の絶えないこんな荒っぽい職以外にも生きる道なんていくらでも__


「となると、必要なのは隠密とか索敵とかみたいなのが得意のモンスターの装備ですかね師匠」

「え? あ、うん」

「この辺りとなると何がいいでしょう。あ、参考までに師匠の装備にはどんなスキルが?」

「あー、視覚強化と隠密が少し・・・いや、ハンター続けるの?」

「いや、この会話の流れで流石にちょっと意味が分からないです」


 はぁ? とでも言いたげな感じに顔を歪めるアイ。美少女が怒気を放つとそれなりの迫力があり、ラクはたじろいだ。


「私は、一番凄いハンターになるんです。これは師匠に会う前からの私の目標です。まあ、師匠にあった今は多少の軌道修正こそしましたが、根本は変わりません。だから、覚悟してくださいね師匠」


 トン、と軽い身のこなしでアイはラクとの距離を詰めた。一瞬の事で、ラクはわずかにアイを見失ってしまう。目の前にはさらさらとした長い髪。そして、耳元の熱。


「わたし、しつこいですから」


 ささやくような声に脳が震える。思考の空白。その間にアイはラクの前方を歩いていた。


「さ、行きましょう師匠」


 太陽の光が彼女を照らし、振り向きざまにたなびく髪は輝いて、その中でも一切の陰りを見せない彼女の笑顔はラクの目にしっかりと焼き付いた。


「・・・分かってやってるだろ絶対」

「わたし、結構本気なので」

「お前が思うほど大した人間じゃないよ俺は」

「わたしがどれだけ思ってるか知ってるんですか?」

「知らないし、知りたくない」

「いつか思い知らせてあげますよ」


 打てば響くようにアイは言葉を紡ぐ。折れたのはラクだった。


「とりあえず、今日は解散。俺の装備が帰ってくるのは三日後だから、それまでに準備をしよう。お前の装備がどんなのがいいかとか」

「あ、わたし絶対かわいいのがいいです!」

「お前いい加減にしろよ」


 ◆


「まあ、とりあえず、だ。どっちにしても俺の装備が返ってくるまではクエストにも出れないから明日になったら武具屋に行って相談に乗ってもらおう。というわけで解散」


 そんな言葉をアイに投げかけて約十数分。


「お前どこまでついてくる気だ」

「そろそろ師匠の家を把握しとこうかと」

「・・・」

「・・・」

「いやマジで帰れ」

「絶対に嫌です」


 ラクは逃げ出した。

 しかし振り切る事ができない。


「待ってくださいよ!」

「ほんとプライベートにまで顔出すんじゃないよ!」

「いいじゃないですか! 美少女を合法的に部屋に連れ込めるチャンスですよ!?」

「人の往来でそういう事を叫ぶんじゃない!」

「だったら少し待ってくださいよー!」


 そうやって始まった鬼ごっこだったが、そう長くは続かなかった。さすがに駆け出しハンターに負けるような鍛え方はしていない。ラクは無理矢理アイを引きはがして逃げ延びた。


「はぁ、はぁ。ここまで来ればさすがに追ってこないだろ・・・」


 呼吸を整え額の汗をぬぐう。今日一日オフのはずだったのに、どうしてこうなったのか。虚無感と疲労感に苛まれながら、帰路についた。

 しかし、残念ながら鬼ごっこはアイの方が一枚上手だった。


「あ、お帰りなさい」

「なんで?」


 ラクが寝泊まりしてる宿の前にアイは座っていた。


「ふふーん。残念でしたね師匠!」

「いや、どうやって」

「近所の人が教えてくれました」

「個人情報ェ・・・」


 がっくりとラクは肩を落とす。今日はもう寝たい。そんな欲求が沸き上がるが、残念ながら目の前には自称弟子。このままでは気苦労で倒れてしまう。

 そんな風に露骨に落ち込むラクをみたアイは、さすがに申し訳なくなったのか。


「・・・すいません。部屋に上げるのがそこまで嫌だとは思いませんでした」

「いや、普通嫌だろ。赤の他人上げるの」

「私まだ赤の他人判定な事が今日一番ショックなんですけど」


 はぁ、とため息をついたアイは真面目な顔をしてラクを見た。


「なら、この辺りで安めの宿ってありません?」

「いや、家に帰れよ」

「それは、そのぅ」


 アイは普通に家があったはずだ。両親ともに健在で、家から通っているといつかのタイミングで聞いてもないのに聞かされた気がすると、ラクは記憶を掘り起こす。しかし、アイの反応は悪い。何かを隠すかのように。


「・・・もしかして家出か? もしくは追い出された?」

「・・・勝手にハンターになったら怒られました」


 だろうな、と。ラクは思う。

 ハンターは義務ではない。あくまでも仕事である。わが子をかわいく思えばこそ、説得もせずハンターになることを了承する親などそうはいない。

 それを勝手に決めれば、そりゃあ怒られるだろう。


「どうすんの」

「どうしましょう」


 こいつ、こんな状態でさっきの話聞いてたのか。そうラクは思った。

 アイが弓使いとして一人前になれるかどうか。それもまた、クエスト受けた今、ラクの責任の下にある。

 悩む。悩み、悩み、悩み・・・またしても肩を落とす。


「わかったよ。部屋にあがれ」

「・・・いいんですか?」

「明日。朝一で両親を説得しに行くぞ」

「・・・ハイ!」


 笑顔だけでもいろんな表情があるもんだ。コロコロと表情を変えるアイを見て、ラクは厄介な拾い物をしたと、何度目かもわからないため息をつくのであった。


 数分後、半ばゴミ部屋と化したラクの部屋を見て雷を落とす弟子の姿がそこにはあった。

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