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episode:6,役場

三└(┐卍^o^)卍ズバビュン

「……やっぱ反応はないわね……」


半円球から出される、ホログラムのようなこの街のマップが映し出されるが、俺に近い血液型を持つ人間は、どうやらこの街には存在しないらしい。


……そりゃそうだろう。俺が迷子扱いのはあくまで設定の話であって、俺(もとい椛)の親戚が実際にいる、なんて事は絶対にない。


エルザさんを騙すような事をしていて、良心が痛むが、そんな事を言っているわけにはいかない。


「んーー、この魔法道具はこの国でも最新型だからね……これで反応しないって言うことは……既に元いた国に帰ってしまったのかしら……娘を置いて………?」


眉間に皺を寄せるエルザさん。


「仕方ないか……モミジちゃん、取り敢えずは魔力審査の結果を待ちましょう」


そう言い、空いている椅子を探すと、そこへと俺も一緒に座る。


……それにしてもだ。


周りを見渡す。この真っ白かつ美術館みたいな空間もとい役場にいる人達は人種亜人種関係なく、また受付の人達も十人十色な姿をしている。


これがこの国なのか……ここに来るまで、様々なモノを見てきたが、どれもこれも絵本に描いたようなモノをばっかだった。一番近い例とすれば、某動く城が舞台のアニメの序盤に出てくる街に雰囲気は似ていた。街を走る電車はなかったが……


それでも目を引くモノばかり。見ているだけでも楽しかった。


「……そう言えばエルザさん、マリーさんはなんで郵便局へ?」


特に役場へ用事がないマリーは、この裏手にあるこの街唯一の郵便局へと行っているのだ。


「そうね……マリーはね、この国一の魔術学園からの入学書が届くのを待っているのよ」


「魔術学園……?」


「そう、魔術学園…………」


結果を待っている間、エルザさんは魔術学園について説明してくれた。


魔術学園とは、この国特有の制度らしく、未来あるこの国の子供達の中から、魔術特性がある子供を、一つの施設へ集め、そこで約4年間、この国を代表する『魔法剣士』になる為、莫大な知識を付け、同時に戦士としての剣術を磨き上げる。それが目的の施設。それが『魔術学園』


勿論、それはあくまで『選ばれた子』だけの特権であって、才能を見いだせなかった子供は学園への入学は許可されない。


それを判別する為この国の役場には、魔術特性の有無を確認する為、15になる年の始めに審査を受ける事が国民として義務付けられている。


そしてその結果は、郵便局から手紙として届くのだ。


「マリーはああ見えてね、竜と人の混血なのよ。竜の血を引く者は必ず強い魔術特性が出るから、その自信からかしら、彼女はこの国で一番の魔術学園、『シンセルス魔術学園』へと申請を出したのよ」


「竜との混血………」


「そう、竜の血……元々この国はね、最初こそは人種の方が圧倒的に多かったの……だからなんでしょうね、昔は亜人種の迫害が酷かったわ……40年前、今の国王が港が開港して、様々な亜人種が入ってくるようになって、そういう迫害は殆ど無くなったわ。けれど……」


「……けれど?」


「今でも貴族の人達が持つ、亜人種に対する迫害はまだ存在するの。国一番の魔術学園になんか、殆どの人が貴族の人達なの。勿論この街からも、シンセルスへ入学した人達はいるわ。人種亜人種関係なく、ね……けどね……やっぱ亜人種の子がね、迫害の影響で途中で挫折しちゃうのよ……………なのにあの子はシンセルスへと申請書を出したわ。勿論あの子だって承知の上よ……自分の夢を叶える為に……」


「夢……ですか……」


「そう、あの子には夢があるのよ……とびきり大きな夢が……」


「……………………」


何も言えなかった。


言葉を探したが、何も思いつかなかった。


亜人種がある世界なのだ。混血も少し考えれば容易に想像もついた筈だ。それに迫害も。


確かに彼女の瞳は、竜族特有で、瞳孔が縦長になっている。


それでも彼女は……あの時、玄関で見せたあの表情は、夢を追いかける子供の目をしていた。


俺の知っている世界史では、昔どれほどの人達が、同じ人によって、貶され、石を投げつけられ、迫害され、その先にある結末を知っている。


だからこそ、俺は今こんなにも言葉に出来ない怒りによって、震えているし、その迫害が国全体に巡っているこの現状に、恐れ、恐怖している。


異なる二つの感情、それが俺の体を駆け巡る。歯ぎしりを勝手にしてしまう。


……けれども俺は知っている。


……中途半端な同情は、余計に人を傷付けてしまうと。


『番号54番の札を持っているかた、検査の結果が終了しました。検査室までお願い致します』


突然、魔法道具からのアナウンスが流れた。それにこれまで集中していた意識がいっきに散らばる。


「私たちの番ね、モミジちゃん、いきましょうか」


どうやら俺たちの番号らしく、俺たちは最初に受けた検査室へと向かった。



「結論から言いますと、彼女の魔術特性は……未知数です」


「未知数?そんなのあるのかい?」


呼び出された個室。俺の担当の職員が最初に言い出したのは、あくまで保護者として付いて来たエルザさんと職員、二人の表情を見るに、どうやら直ぐには解決しない問題らしい。


「まずですね、モミジちゃんでしたっけ?彼女からの血液に含まれる『魔力球』がですね……平均の5倍はあるんですよ……」


「…っ!5倍……ですか…!?」


「はい、『魔力球』の平均値は100~115なんですよ。これは体内の血液の2割程なんですよ。なのに彼女の『魔力球』は約5倍。つまり、血液全てが『魔力球』で埋め尽くされているんですよ……」


「待ってください……だったこの子……」


「ええ、本来なら生命活動が出来ない状況。つまり生きられないんです。」


「……………………」


エルザさんが唾を飲む音が聞こえる気がする。俺も本日2度目の冷や汗が滲み出る。


「ですから、『潜在能力』の方を確認した所………これも信じられませんが………彼女には、潜在能力が三つ、ありました」


「三つって、そんな事が有り得るの……?」


「事例がある訳ではありませんが、本来一つの体に一つしか存在しない潜在能力を複数所持する世代が現れてもこの世代、充分に有り得ます……」


「…………そうなんですね……」


ふぅー、とあれ程大きく見えたエルザさんが、今では額に汗を滲ませ、一回りしぼんだように見えるのは、恐らく気のせいではないだろう。


俺はまだ理解が追いつかない話だったが、かなり重要な事を話していた事は確かだった。後でお礼を言っておかないと。


しかしここで、目の前の職員さんから、誰も想像しなかった事が話される。


「あのですね……シスターさん、彼女、モミジさんの魔術特性は確かに未知数ですが、それでも彼女の存在は、その能力から見ても、この国にはとても必要だと思います。自分はあくまでこの役場のいち職員。こんな事を勧める権利はどこにもありませんが、彼女、まだ学園への申請書、何処にも出していないんですよね?」


「えぇまぁ、はい」


唐突な話題に驚くエルザさん。俺も何の事かと聞く耳を立てる。


「シスター、彼女は……」


しかし次の瞬間、俺はその言葉を聞き直す事になった。


「彼女は、シンセルス魔術学園へと入学し、その才能を開花させるべきです」


episode:5,END

_| ̄|Σ・∴'、-

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