episode:4,服選び
おはこんばんにちは。アネモネNRです。
第4話です。
以上。
「……と言うように、この施設は国から直々に支援金を貰って成り立っているの」
クローゼットを下から順に確認しながら、その度に衣服を出しながら、彼女、マリーはこの施設の事について説明してくれた。
「なるほど……つまりは、この国が出来る前から存在していた宗教が、この国が出来てくるのと同時に大きくなって、今ではこの国の政治までにも干渉するようになった宗教の末端の末端が、この『グーラル教会』って言う事なんだね?」
「そう。以外と物覚えが早くて確かるわ」
さて、と一言零して彼女は俺の方へ近づいて来た。どうやら服を選び終わったらしい。
「はい、これが貴方に合いそうな服よ。さっさと着替えてちょうだい 」
そう言われ、胸の前に出される。
「ああ、ありがとう……」
お礼を一つし、出された服を有難く受け取る。
「それよりモミジ、貴方年齢は?」
受け取り、服の確認をしようとした時、彼女は突然話しかけてきた。
「えっ………と……」
あの時、窓の反射で見た椛の体は、ここ最近見た体付きと大差なかっと思う。だったらこの体の年齢は……
「……多分15かな……?」
そう言うと、彼女はふーん、と声を鳴らし、俺を見た。
「だったら私と同じ年齢なのか……だったらそれなりの下着もちゃんとしないとね。それに貴方、生理の周期は?」
「へぁ!?」
思わず裏声が出た。しかし冷静に考えるとそりゃそうかとしか言いようがない。俺だって15年も生きた男だ。それなりの知識も得ている。
それに今この空間には、俺と彼女の2人しかいないのだ。傍から見れば女子同士。だったらそんな話題も上がるのかも知れない。これはそこまで考えてなかった俺が悪い。早くこの話題を変えなければ……!その為にも適当に話を逸らすのが最適だろう。
「いやっあのその……俺も良くは分からないんだよね………」
目を逸らしながらそう言う。
「……自分の体なのになんで分からないのよ……まあいいわ。一個取り敢えず持っときなさい………なんでそんなに顔を赤いのよ……」
「いやこれはそのー……そう!今日は暑いなぁーって!ね!」
「…………今春よ?」
「……………………」
思考が停止した。もう墓穴を自ら掘りたくない。
はぁー、と一つ溜息をつく彼女。
「まあいいわ……だったらさっさと着替えてね」
「…………はい」
「だったら私も、自分の部屋で着替えて来るから……何?」
「あの……その……非常に言いにくいんですけど…………」
「……………何よ?」
「…………この付け方、教えてくれませんか?」
「…………………えっ……は?」
彼女が目を見開き、呆れているその目線の先には……
……彼女自身が渡した、何も装飾がされていない白色の、女性用の上半身用の下着を、これまた顔を先程の比じゃないくらいに赤くさせた、目線を全力で下に向けた俺がいる筈だ。
………死にたい
「マリー!モミジちゃーん!準備は出来たかい!?」
1階のからエルザさんの呼ぶ声が聞こえる。
「……よし…!」
特に意味もなく呟くと、覗いていた窓から離れ、螺旋階段を降りていく。
「ごめんなさいね、リンリがちょっとぐづいちゃってね。けどこれで行けるわよ……てモミジちゃん、あなた随分男の子らしい格好をしているわね……」
「はは……これが一番気に入ったので」
乾いた笑顔が俺から零れる。
エルザさんが驚くのも無理はないだろう。
今の俺の服装は、黒色のズボンに灰色のジャケットを着ている。それに髪も左横に1本で結んでいる。あの部屋に置いてあった鏡を見ても、さながら美少年のようなその格好は、元の体も持ち主、椛がどれほどのモノだったのかを物語っている。
「でもシスター、それを選んだのも髪を結んだのも私のおかげよ」
後ろからカツン、と音がする。振り向くと、動きやすさを重視したのか、それでもまだ幼さをのこす服装を来た彼女、マリーがいた。
「全く……この子、下着の付け方も分からなかったのよ?今までどんな人生を過ごしてきたのよ……」
悪態をつく彼女を、エルザさんが和ませる。
「まあいいじゃない、マリー。この子の生まれ故郷では、元々下着を付けない文化、又は別のモノを付ける文化なのかも知れないのよ?」
日本はそんな無法地帯じゃありません。と1人で心の中でつっこむ。
「そうかしら?そんな国があるなんて信じられないわ。それに……まあいいわ。この話はこれで終わりにしてあげる。」
顔を膨らませ、俺を睨む彼女は、けれどもそれにも飽きたのか、直ぐに顔を戻した。
「さぁシスター、早くやる事やってしまいましょう」
そう言う彼女の顔は、どこか嬉しそうに笑っている。それを見たエルザさんも、彼女の態度に安心した、笑みを浮かべている。
「そうね、けれどもその前にこの子の為にも役場に向かわないとね」
さあ行きましょう、とエルザさんはステンドガラスがはめ込まれた扉を開いた。
「……っ!」
正直、俺も楽しみではあった。
窓辺から見える街は、俺の好奇心を確かに掻き立てた。それだけでも充分だった。恐らく俺の今の顔も、自分では隠しているつもりだが、どこかニヤついている筈だろう。
初めて味わう異世界。存分に目に焼き付けよう。
episode:4,END
注意、この小説は35億もいる内の男の想像を文字に起こしたモノである。
もう一度、今話での出来事は全て想像である。