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episode:2,椛

おはこんばんにちわ。アネモネNRです。

第2話です。

本当に何書けばいいか分かりません。

青山 もみじと言う人間を一言で表すと、行動・性格が俺とは真逆の人間であり、俺との関係性を聞かれると……やはりここはただの親友と答えるべきだろう。


まず前者の方から。


俺は元々人と話す事が苦手だ。もっと言うと、俺は人と話す事を極力避けるように日頃徹底している。と言ったら、俺が極度のコミュ障だと思ってしまう人が沢山いるだろうが、俺がコミュ障かと聞かれると、それは否定するだろう。


極力会話を避けようとしていると言っても、それは俺とはあまり関わりを持っていない人間に対しての事で、別に俺は昔馴染みの人達だとそれなりの会話は出来る。


と言うか俺は元来のアニメandゲームオタクだ。それ系統の話になるとそれなりにマウントは取れる。それくらい、俺は饒舌になる時もある。


しかしそれは、あくまで小さな輪の中での関係であって、さながら俺は井の中の蛙なのだ。


そんな俺に小学生時代から、毎日付き合ってくれる唯一の存在が椛なのだ。


初めて話掛けられた事を俺はまだ覚えている。


小学1年生の時、当時としては珍しく、休み時間の全てを教室で絵本を読む事に費やしていた俺に対し、ある日突然話し掛けて来たのがアイツなのだ。


最初こそは、『本を読むのを邪魔しに来たウザイ存在』だと思っていたが、その日以降、毎日のように話掛けてくるそのその存在に、いつか俺は少しずつ、けれども確実に心を開いて言った。


そこからの6年間、俺の隣にはいつもアイツの存在がいた。


勿論その6年間と言う当時としては莫大な時間の中で、それなりの人数の友達と呼べる存在も増えた。


けれどもそれは、やはりアイツの存在が大きかったと言わざる得ないだろう。


これは小学四年生の時に知ったが、アイツは同性異性年上年下関係なく、俺みたいな奴がいると、率先して話に行ったらしい。


それに親の片方に外国人がいる影響か、彼女は身長こそは平均より少々下だったものの、あまりにも整った顔立ちは、男女問わず人を惹き付けた。


ルックスも良く、性格も良い。そんな姿は、周りの同級生達の心何かに刺さったらしく、いつの間にか、アイツは学年トップの人気者になっていた。


勿論、心を奪われる男子も少なくなく、アイツの告白された回数は、片方の指では収まらないだろう。下手をすれば2人分の両手でも収まらないかも知れない。


そんな中、俺はと言うと、いくら小学六年生の思春期真っ盛りの中でも、アイツを異性として見た事はこの時は一度もなかった。


なんて言ったって、アイツは俺が唯一本音を言える存在でもあり、今の俺を俺として成り立たせる、大切な存在なのだ。そんな奴を俺はどうしても異性として見ることは不可能だった。


そんな存在に告白する男子の中には、学年トップを争う程にイケメンの男子もいたし、アイツの次に性格が良い男子もいた。当時は学校のクラブ活動にも所属していたせいか、年上も年下も関係なくアイツは告白された。


しかしアイツは、告白する男子に対し、その場に適切な言葉を使って全員断って行った。


勿論、男女問わず逆恨みをされる事を少なくはなかったが、そこはアイツの人望が厚いおかげだろう。アイツに関する問題は一つも起きなかった。


何故アイツが全員断っていったのか、その理由が判明するのはそこから3年後の時だった。


その後、中学に入学アイツは、そのポテンシャルを1年生の時から存分に発揮していた。


成績優秀で、先生達からの評価も良く、生成表はいつも学年一位。部活は当時としては珍しい弓道部に入っていたアイツは、勿論の事、大会でもいつも上位に入り込んでいた。


まるで絵に描いた様な優等生。


それに対して、俺はどうだったのかと言うと……中学に入って、クラスが倍に増えた事にうろたえ、とっくの昔に治っていま筈のコミュ障が再発していた。


コミュ障が再発した俺は、クラスの人達とも全く馴染めず、Theぼっち感が体から滲み出ていた筈だ。


しかし俺にはアイツがいた。


アイツは文武両道と言う多忙な中でも、俺との関係だけは途絶えないように、家が近所同士だったせいか、アイツは毎朝、俺の家に来てはインターフォンを鳴らし、俺と一緒に学校に行ってくれた。


そんな何ともない事が、いつしか俺にとって一番の楽しみになっていた。


いつしかアイツの存在は俺にとって、必要不可欠な存在になっていた。


そしていつしか、アイツは俺たちが通っている中学校の先頭に立つ存在、生徒会の会長になっていた。


着実に人と人との輪を広げるアイツと、逆に輪を縮めてしまう俺。


全く真逆の存在同士だと、当時中2の俺は薄々感じていた。


少しアイツと距離を置こう。そう考えていたある日、本当に何もない日に、俺はアイツに放課後呼び出され、告白された。


あの時の事は今でも鮮明に覚えている。


秋の夕方。ここ数日では珍しく季節風が強く、やけに紅く輝く太陽が落ちている中、生徒会長を決める時の総選挙の演説の時でさえ堂々としていたアイツが……



手元の指を強く握りしめ、全てを呑み込む様な深く、けれど見た時にどこか安心させられる瞳をうろつかせ、声を震わせながら、紅い太陽にも負けない程に顔を染めて、生まれつきの特徴的なブロンズの髪の毛を、学校の規則の影響で、いわゆるポニーテールと呼ばれる結び方になっている髪を、太陽の光の影響で、紅色に染まりながら、季節風になびかせながら、ずっと前から好意を寄せていたことを告げた。


今まで見ていた姿とは全く異なるその姿に、俺は無限とも思える程に、彼女の姿に初めて釘付けになった。


アイツの事を、この時から初めて『異性』として見るようになったんだと思う。


ある意味、その時からやっと俺はアイツと、『親友』と呼べる存在同士に慣れたのかも知れない。




そんな、俺が俺として成り立たせる為の影響になった存在が、本来俺がいるべき場所に、髪色は違えど立っていた。




「なんで……椛が………?」




窓に写る、あまりにも現実離れしたその光景に、俺はあの時よりも目を見開いた。表面上の水分が乾いていくのを感じながらも、瞬きも忘れ、その異様な光景に釘付けにされた。


眼前に広がるたった一つの情報。そこで俺は瞬間的に、これこそ本当に頭が焼き切れる程に混乱した。


目の前の窓には椛が。


俺の姿は少しもない。


何故、俺が写るべき場所に椛がいるのか。


もし、目の前にいるのが本当に椛なら、俺は今何を見ているのか。


息遣いが徐々に荒くなる。俺が胸を膨らませながら呼吸をするのと同時に、目の前の椛も、やはり胸を上下にしながら呼吸をする。


震える手を顔に持ってき、その指で実際に触ってみる。


しかし、最早当たり前の様に、反射した椛は、俺の動きに完璧に合わせて来る。


「どうなってんだよ……これ……」


息を吐くように呟いた声には、最初こそは気づかなかったものの、少し高いこの声色は、完全に椛の声そのものだった。


気がついたら、目の前の椛は、現実の彼女が確実にする事がないくらに、あまりにも酷い顔になっていた。


俺はそれに驚き、表情が和らいでいくのを感じる。そしてそれに完全に合わせながら、椛の顔も、眉間に少しの皺を残しながらも、和らいでいった。


思わず、自分の右手を見る為に頭を下げる。


微妙に震えているこの右手が感じるこの感覚。震えるせいで周りの空気が少し揺れる感覚。手のひらから滲み出る汗の感覚。俺が今感じている感覚だ。


「俺は本当に……椛になってるのか……?」


顔上げ、唇の動きとその声を聞き、それぞれを確認しながら、俺はその現状を唾を飲み込むのと同時に呑み込む事が出来た。


……到底信じれる状況ではない。


……けれども、俺が今五感を感じられているのは確か。


……だったら、もう無理矢理にでも信じ込むしかない。


今、椛の体には俺が居て。


今、俺の意識は椛にある。


今はそれしか分からないが、それと同時に今はそれでいいと思う。


それに、一旦状況を整理してみると、意外と精神的にも軽くなってきた気がする。


はぁ、と一つため息をし、俺は窓の窪みに腰を掛ける。


「しっかしこれ、どうなってるんだ……?」


俺が椛の体になっている事は、一万歩程譲って理解した。


けれども、肝心のどうしてこうなったのかがまだ分からない。


その場で色々と考えてみるが、どうもオカルトチックな考えしか浮かばない。思わず唸り声を上げてしまう。


と、そこで不意に何かを思い出した。


確か1年ほど前に読んだ本の中に、丁度今の俺と似た様な状況になってしまった人を描いた小説があったのだ。


その内容として、交通事故にあった母親と子供の内、数日後、母親の方が息絶えたと思ったら、子供の意識が母親の意識になってしまった。という設定だった筈だ。


これが俺の状況だと仮定すれば、俺が死ぬ時、近くに椛がいた……?


息が詰まる。そんな可能性があるというのを考えた途端、心臓が潰れそうになる。


……いや、それはない。あの時、周りには俺しかいなかった。強いて言うならトラックを運転していたドライバーだろうか?


いやけれど、あの事故では当たり所の問題上、死ぬまでの衝撃があったのは、俺だけだと考えられる。


……だったら近くに、俺と同時刻でお亡くなりになってしまった人がいたって事なのか?だったらそれは椛と言うことになる。


けれどもそれは有り得ない。俺と椛は帰り道は同じでも、塾まで同じと言うことではない。


だったら何らかの目的であの近くにいたのか……?


…………いや、いつの間にか椛が死んでしまった説で思考が進行しているが、それはあまりにも非人道的ではないだろうか。それにそう考えるのも自分にとってもキツい。


……だったらあの場所で、他にヒントはなかったのか?周りは暗闇。見えるモノと言っても、トラックのライトに照らされた道ぐらいしか…………


………あれ?俺、なんか忘れてない?何か大切な事を……もう少しで思い出しそうなのに……後ひと押しが全然出てこない…………


「てかここは何処なんだ……?」


思い出せないモノをずっと考えても仕方ないので、気分転換に窓の外を見る為に後ろを振り向いた。


「目が覚めたのかい!?」


少し低く、それなりの年を重ねた人の特徴的な声に、俺は振り向くのを半ば自動的に止め、声の方に素早く顔を向ける。


そこにいたのは、まるで協会のシスターみたいな服装をした、褐色の肌と金髪が特徴的な、一言で言えば、『勝気と優しさを足して二で割った様な雰囲気』のおばさんが、口元の端を吊り上げながら俺の方を見ていた。


episode:2,END

特になし。

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