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発情中のうさぎメイドは狼騎士に食べられちゃう?!  作者: つきのくみん
第4章 ラフィールが守りたいもの
80/88

80 さまざまな違いを乗り越えて愛し合う

レナが気が付きます!

落ち着いた環境で、読むこと推奨(⁎⁍̴̛ᴗ⁍̴̛⁎)

 ついに痺れを切らした(ラフィール)は、レナの鎖骨さこつ辺りを鼻先で強く押した。狼との友情を信じて、彼女は促されるままに横になる。


 風呂敷越しの地面は、快適な寝台からは遠くかけ離れていたけれど、すっかり野うさぎ生活に馴染んでいたレナは、ほとんど抵抗を感じなかった。


 獣型のラフィールの体長は、レナの膝上から頭の先と同じくらい。ほっそりとした白い脚が狼の尻尾の下、後ろ脚の間をなまめかしく通っていた。


 レナは両腕を伸ばし、ラフィールの頬にそっと触れる。


 長老や父レオナールが見たら、卒倒しそうな光景だなんて、どこか他人事のように考えながら。


 レナを敷く狼の瞳には、カタリナによく似た女性が映っていた。


 才気煥発さいきかんぱつなカタリナ。

 決断力があり、時として周りが驚くことも平然とやってのけた、敬愛すべき姉。


(領主館へ戻ったら、またお姉さまを探しましょう。もし会えたら、そのときは――)




 レナが里を出たいと言ったとき、長老に訳知り顔でさとされた。


『たしかに若い娘にとって、この里は退屈であろう。それはわかる。外の世界に出たいと夢に見るかもしれん』


『カタリナは少々お転婆が過ぎたのじゃ。その結果……どうやら悪い男に連れ去られた可能性が高い……。もうカタリナは……きっと戻っては来ないじゃろう……』


(きっとお姉さまは私と一緒 ――恋をして里を出て行ったんだわ。そして長老やお父さまは、そのことに薄々気が付いていた)


 それならそれで構わない。レナは姉探しをやめるつもりはまったくない。


(もしお会いできたら、お姉さまとたくさんお話がしたい)


 ただそれだけ。


 しかし気がかりなのは、里に残される大切な人たちのこと。


「カタリナに続いてレナまで」と心配をかけるのは本意ではない。


(お手紙を書いて、私の無事を知らせるしかないけれど、そもそもラビアーノにお手紙は届くのかしら?)


 ラビアーノは迷いの森の隠れ里。その存在は一般には知られていない。


 でも里に出入りを許されている、一部の行商人たちなら?


(例えば、ロバのおじさんとか……)


 ロバのおじさんはカタリナの噂を、里に持ち込んだ張本人。領主館のあるウォルフの街に来る可能性は大いにある。


「きゃ!」


 ――なんて悠長に余所事よそごとを考えていたら、首筋を大胆に舐められた。そのまま流れるように、耳に舌先を突っ込まれる。


 まるで「こっちを見ろ」と、言わんばかりに。


 敏感なところを攻められて、自然と速くなる脈拍と既視感が、レナを激しく追い立てていた。


 狼の正体に気がつくまで、あと少し――。


「こんな体勢だと、ラフィールさまのお仕置きを思い出してしまうわね」


 上がる吐息の隙を縫い、レナは切なげに呟いた。

 薄桃色に頬を染め、羞じらう笑みは美しい。


 虚をつかれたラフィールは、はしばみ色の瞳に心を探った。


「私ね、実はラフィールさまのお仕置きが大好きなの。意地悪で強引なのに、愛されていることを実感するから……」


「きゃ、言っちゃった」と、レナは手の平で顔を覆う。


 だってそれは、とっておきの秘密。


 指の隙間から、ラフィールだと知らないままの狼を引き寄せて、レナは小さな声でお願いする。


「狼さんがラフィールさまにお会いしても、今言ったことは絶対に内緒よ?

 だってお仕置きにならないって、バレてしまったら、もうしてもらえなくなってしまうでしょ?」


 レナは悪戯いたずらっぽく微笑んで、指輪が輝く人差し指を唇に押し当てた。


「――なんてね。あなたがどんなに賢くても、人の言葉は喋れないわね。

 あ、舐めないで……。くすぐったいから……。噛むのはもちろんダメよ……?」




 可愛いレナは罪深い。


 別れの熱を持て余し、かぐわしい発情香で哀れな雄を惑わした。


 レナの無防備な魔性に、誘われない雄はいない。


 人型のレナは、獣型のラフィールに舐められていたが、それは荒い息のもとでやや拙速に行われた。


 でもすべてを完全に知り尽くしたように、ただひたすらに丁寧に的確にでられたとき――


 レナはようやく、その行為の意味を知る。


「ラフィールさま……?」


 かの人の名前を呼べる悦びに、哀しみで詰まっていた胸が震える。


「ラフィールさま……!」


 レナは思わず叫んでいた。


「ずっとお会いしたかった……!」




  * * *




(もっとスピード落としてください!)


 風を切る音と激しい揺れ。目まぐるしく変わる景色。


 雪と森と空が無秩序に入り乱れ、酔いそうになりながら、獣型のレナは声ならぬ声で叫んでいた。


 昨夜最終的に人型を保てなくなったレナは、寒さと底をついた体力を補うため、獣化して眠りについた。


 そして今朝起きたときには、既に身体からだの自由が風呂敷によって、幾重いくえにも厳重に奪われていた。


 ラフィールが風呂敷入りのレナをくわえて走り出すやいなや、すぐに最高速度に突入してしまったので、レナは怖くて今さら人型になんて戻れない。


 戻ったら最後、木か地面に打ち付けて、痛い思いをすることがわかりきっているから。


 顔だけ外に出すことが許されたのは、呼吸を考えてくれてのことらしい。


 ――ちなみにレナを背中に乗せてゆっくりと帰る選択肢がラフィールになかったのは、早く領主に自分の無事を知らせたかったことと、レナを逃したくなかったから。


 変化へんげの丸薬には避妊効果があったけれど、レナは現在何も飲んでいない。


 でも昨夜だけで命が実るとも限らない。


 レナを領主館に閉じ込めて、1日でも早く――。

次からエピローグ(最終章)に入ります。もうしばらくお付き合いくださると、うれしいです<(_ _*)>

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― 新着の感想 ―
[気になる点] まだ読んでる途中なんですが! えっ ちょっと! 昨夜だけで命が実るって!昨夜?! え! お外で! 昨夜、最終的に人型を保てなくなったって! 狼さんのまま?!まま?!?!?!? いや…
[良い点] ようやく気付きましたね!( ´∀`)/~~ よかった~。 これからたっぷりラフィールにお仕置きされるのかな?楽しみです。 風呂敷に入って、ラフィールに運ばれているレナ、可愛すぎです!!!…
[良い点] レナ! 大分遅かったけど気づいてくれた-!! お仕置き……本人に言っちゃうとか、羞恥で死ねますね!(//∇//) ラフィールは満足しましたかねーw あれ? でも人型には戻ってないんですよね…
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