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発情中のうさぎメイドは狼騎士に食べられちゃう?!  作者: つきのくみん
第4章 ラフィールが守りたいもの
77/88

77 狼の愛情表現とうさぎの誤解

想像は自由です( ˘ω˘ )

 指輪を奪われ、うちひしがれていたレナに与えられたのは――


(きゃっ?!)


 身を任せていた、夢の先。


 狼の顔がゆっくりと近づいて、レナの背中を舌でなぞる。


 驚いて振り返ると、そのままの勢いで仰向あおむけに転がされた。

 他の部位よりも一層柔らかな天鵞絨(ベルベット)の腹の、自分では普段触らないようなところまで、ざらりとした熱い舌に塗りつぶされる。逃げようと四つん這いになれば、後ろ脚を押さえられ、尻尾しっぽの辺りを散々にもてあそばれた。


(私は今、何をされているの……?)


 狼が目覚めたとき、レナは「死」を覚悟したのに。


 それなのに、子どもが与えられた飴玉を、いつまでも舌の上で転がして味わうように、牙を突き立てられることもなく、長いこと舐められているのはなぜなのか。


 大好きな人と同じ匂い。

 まぶたを下ろせば、レナは彼に愛されている夢を見る。


 身体の奥にともされた火は、容易たやすくレナの小さな身体からだを支配して――


(どうして私のことを食べないの……?)


 疑問が彼女の中でくすぶった。


 自分(レナ)はうさぎ。彼は狼。

 その彼が、もはや無抵抗のご馳走を、食べないでいてくれるという摩訶不思議。


(もしかして……これって……)


 戸惑うレナが思い至ったのは、ある1つの可能性だった。


(毛繕けづくろい……?)


 もしレナの声が狼に届いていたならば、彼はがっくりと肩を落として、こう呟くことだろう。


 ――『それは違う』と。 




 綺麗好きのレナは、朝晩かかさず雪の上で転がって清潔を保っていた。

 人間としてのお洒落しゃれには、ちょっぴりうといところもあるけれど、野うさぎとしては全力で、毛繕いを頑張っている自負もある。


 しかし本来群れで生きる狼にとって、毛繕いは身だしなみを整える目的のほかに、仲間との絆や信頼関係を築くため、積極的に行うべきものらしい。


(この子は、私が治療してあげたことを知っているんだわ。『ありがとう』の気持ちを、私に伝えようとしてくれているのね)


 恐怖は潮が引くように、あっという間にやわらいだ。


(この狼さんは、本当に可愛いわ)


 狼は怪我から生還したばかり。


 それでも一対の琥珀には、レナが持ち得ない強さと自信を宿していて――。


 レナはどうしようもなく、その瞳に惹かれてしまった。


(ラフィールさまと、同じ色……)


 トクントクン……


 鼓動の主張に慌てたレナの、とびきり可愛いうさぎ耳が、感情を受けて繊細に揺れ動く。


 パクッ!


(え……!)


 狼に耳の先端を食べられた。


 咥内こうないの熱さを敏感な感覚が拾うから、おかしくなってしまいそう。


 狼と恋人ラフィールとを結びつける糸はプツリと切れて、レナは何も考えることができなくなった。


(もう終わりにして……!)


 狼の鼻を前脚で、タシタシと何回か叩いてみる。


 すると狼は名残惜しそうにしながらも、要求をすんなりと受け入れてくれたのだから助かった。


 そして落ち着くとまず考えてしまうのは、ラフィールからもらった指輪のこと。


(ねぇ、狼さん。指輪をどこに隠したの……?)


 言葉の代わりに見つめてみても、狼は知らぬふりを決め込むだけ。


(仕方ないわね……)


 レナは指輪が見つかるまで、しばらく狼の側にとどまることを決意した。




 * * *




 日毎ひごとに狼は回復し、寝ている時間よりも起きている時間が多くなった。


「おはよう」から「おやすみなさい」までの大半を、指輪探しとお世話をしながら、レナは狼と共に過ごしている。


 狼も、フラりと外に出たとしても、すぐにまた帰って来るといった具合で、まだ本調子とはいかないようだ。


 ――しかしレナは知っている。


 狼がなこそこそと、レナの地図を勝手に広げていることを。


 ちなみにレナはそんなとき、地図を挟んで仁王立ちし、不満を示すために後ろ脚をダンダンと激しく鳴らしてみせるのだ。


 大事な地図に悪戯いたずらされては困るし、温かい狼とくっついて眠れないのは、もっとずっと困るから。


 そうするといつも狼は、すぐに地図で遊ぶのを切り上げて、レナと一緒に寝てくれた。


 レナはそんな狼のことが、ますます好きになっていく。


 今のところ、あくまでも愛玩動物ペットとして。


 あってはならない感情を無視するためには、その方が都合が良かったから。


 ――端から見れば完全に、レナの方が狼に飼われている、愛玩動物ペットそのものなのだけど。




 それから新たな問題も発生した。


 狼はレナの何倍もよく食べる。

 院長からのお餞別 ――狼と大切に分け合っていた赤い果実が、早くも無くなりつつあった。


 狼はまだ狩りに出る様子もない。

 レナが彼の代わりに、獲物を捕ってきてあげることも不可能だ。


 なので赤い果実はすべて狼にあげることにして、レナは自分の分を確保するために外に出た。


 雪は夜に降るだけで、この季節特有の弱い日差しが、積もった雪をキラキラと照らしている。


 こんな日は食べ物を探しやすい、とレナは思う。


 静寂の森に雪を踏みしめる音が微かに響き、小さな足跡がお行儀良く列をつくる。


 こんな日は狼にも見つかりやすい、とレナは気を引き締めた。


 幸いなことに洞穴からそう遠くないところで、柔らかい樹皮をもつ貴重な木と、雪の下で暖かい季節を待つ、ほろ苦くて美味しい植物を発見した。


 両方とも、うさぎのレナの好物だ。


(毛皮が白ければ良かったのに……)


 雪に浮かぶ身体を残念に思いつつ、レナはせめて木に同化しようと、淡い茶色の背中を太い幹にくっつけた。


 モシャモシャモシャモシャ……


 レナは必死に食べ物を頬張った。味わっている暇はない。


 何回も食べ物を求めて外に出るのは危険だから、今日1日分の栄養を、まとめて摂取したかった。


 さっさと食事を済ませて安全な場所 ――彼が眠る洞穴に帰らなければ。


(う……コホコホッ……欲張って、口に入れすぎちゃった……)


 余裕がない食事時間の最中でも、レナは気づいてしまったある事実に、少しショックを受けていた。


(赤い果実の方が美味しかったかも……。狼さんとシェアしたから……? ケホッ……)


 大好きだったはずの植物が、肉風味の果実に負けた。


 その信じられない変化に、レナはほんのりと感傷的な気分になる。


(ゴホゴホ……)


 レナが涙目になって咳き込んでいると、ふと頭上から視線を感じた。


 恐る恐る顔を上げる。


 愛玩動物(ペット)の彼以外の狼がいたら、今度こそ食べられておしまいだ。


(あ……!)


 ――そこには、レナより大きい、真白い1羽の野うさぎがいた。

レナ「獣型とはいえ、夜中に地図で遊んじゃダメですよ」

ラフィ「現在地と帰り道を確認していた」

レナ「わかりましたか?」

ラフィ「(首を横にふる) お前がいつも邪魔してくるから、まったく集中できなくてな。『毛繕い』発言も微妙だったし……。これはもう、お仕置きを増やすしかない」

レナ「ところでその……お仕置きって、何ですか……?」

ラフィ「俺から離れられなくするだけだ。そんなに怖いことはしない、我慢は沢山させるけどな」

レナ「R15な予感がします……((( ;゜Д゜)))」

★ 本編では、レナは黒い狼がラフィールだと、まだ気が付いておりません。


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― 新着の感想 ―
[良い点] んっ、今度はうさぎ登場とな?? 続きが気になるじゃないですか。 それにしてもレナ、鈍すぎですね。毛繕いってw まさかこんなところにそんな、という気持ちが真実から遠ざけるのでしょうか。 ラ…
[良い点] きゃーーーー! レナちゃんを舐め転がすラフィールさんっ! レナちゃんがまだ気づいてないのがまたよきです……っ(///∇///) うさぎ姿のレナちゃんのアレコレも超かわいい! これはもう…
[良い点] キャー!O(≧∇≦)O 狼がうさぎをもふもふするの図、とても良かったです!! レナが不満を示しているシーン、ラフィールが地図を見ているところ、ラフィールの鼻をてしてししているレナ、木に同化…
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