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発情中のうさぎメイドは狼騎士に食べられちゃう?!  作者: つきのくみん
第3章 結ばれてもすれ違う想い
50/88

50 熱さの理由

肝心のシーンなんですけど、文字数の目算を誤ってしまい、最後の最後からやっと始まる感じです(= =)すみません……。

お詫びに明日も更新します。

 レナの気持ちを尊重したのか、ラフィールは意外にもあっさりと、はめたばかりの指輪を外した。


 小箱の中に指輪が消える。

 その瞬間、レナは胸がつかえて苦しくなった。それはきっと、大切な恋人の気持ちを踏みにじった罰なのだろう。


「お前の葛藤は、俺も理解している。そんなすぐには決められないよな」

「はい……」

「返事を待つ権利を与えてくれたら、今はそれだけで充分だ。まだ時間はある。里に帰るまでの間にゆっくりと考えてほしい」

「わかり……ました……」


 ラフィールはどこまでも優しく、レナを丸ごと包み込んだ。意気地もなく、わがままな彼女のことを一言も責めずに。


 その優しさに、嫌われる勇気もないレナは心から安堵した。


 罪悪感に囚われた恋心は、タイミング良く与えられた安心感に忽ち均衡バランスを崩してしまう。


 ラフィールは再び、結婚指輪マリッジリングの入った小箱を半ば強引に握らせた。すると彼の想定通り、レナは思い詰めた様子ながらも、今度はすんなりと受け取ってくれる。


「指輪は渡しておく。俺と生きることを決めたなら、そのときこそ、指輪をはめて永遠を誓ってほしい。そしてお前の悩みも何もかも、()()()を俺に話すんだ。

 俺たちが……いや、俺たちの大切な人たち全員が幸せになれる方法を、2人で一緒に探していこう」

「ラフィールさま……」


 誰かが笑えば誰かが泣く。誰かが勝てば誰かが負ける。明るい月にも暗い場所があるように、光があれば必ず影は付きまとう。全員が幸せになれる世界なんて在りはしない。

 けれど「自分たちにとって大切な人たち」と限定すれば、難しいがきっと不可能ではないと、ラフィールは考えられるようになっていた。

 レナの能天気とも言える純粋さに、すっかり影響されてしまったのかもしれない。


「薬が無くなる前に、お姉さんが見つかるといいな」


 ラフィールはレナに、心からの励ましの言葉を贈った。


「はい。早く会いたいです」


 姉カタリナは未だ見つからない上、有力な手掛かりさえもない閉塞した状況。


 目下の心配事がなくならないと、自分の恋愛まで気が回らないレナの事情もラフィールには理解できた。


「改めて確認するが、両親も()()()()()()()なんだよな?」


 含みをもたせた表現にも、レナはまったく気が付かず、ラフィールの肩に頬を寄せて見上げていた。


 油断するとレナはすぐに甘えん坊になってしまう。ラフィールもそんな彼女をどこまでも甘やかしまうのだから仕方がない。


「はい。両親とも同じです」

「そうか」


 ラフィールがわざわざ確かめたのには理由があった。


 異種族間で子をなした場合、子どもはどちらか一方のみの種族の特徴しか引き継げない。それは同時に、同一種族同士の婚姻ならば、子どもは必ず両親と同じ種族になることを意味していた。

 つまりは両親がレナと同じうさぎの獣人なら、彼女の姉もまた然りということだ。


 そしてもう少し先の話にはなるが、レナの両親もうさぎなら ―― 尤も母親は既に亡くなっているようだが ―― 結婚に際して一悶着が起こりそうな予感がした。

 7歳離れた狼とうさぎのカップルなんて、うさぎが悪い狼に騙されたとしか、世間的には思われないような気がする。


(どこにも行かせないけどな)


 そう思ったのは、これで2度目か。


 ラフィールは寄り添って話すレナを見た。この温もりは、絶対に逃がさない。


「姉とは顔もよく似ていると言われていました。あ、でも姉の方が、瞳も髪ももう少し色が濃くて……」

「お前と似ているんだな?」

「はい」


 ラフィールの目の前にはレナの犬耳がある。


「お姉さんにも、お前と同じ持病はあるのか?」

「持病? 風邪は引いていますけど……」


 レナは目をぱちくりして聞き返す。


「おい、しっかりしろよ。持病があるって説明したのはお前だろう? まさかその()()を忘れたのか? 俺は、お姉さんも里の秘伝の丸薬を飲んだ状態で、外の世界に出たかを聞きたいだけだ」

「わ、忘れてません! えっ……と……丸薬は長老が保管していたし、嵐の日に突然いなくなってしまったので、丸薬は飲めずにいるはずですが……」

「お姉さんがここにいるって、行商人から聞いたんだろ?」


 レナは頷く。


「里に出入りしていたロバの行商人のおじさんから聞きました。でも私が知る必要はないからと、あまり詳しくは教えてもらえなくて……。わかっているのは『狼の領主さまの館で見た』という、ただそれだけなんです」


 あまりに乏しい情報に、ラフィールは愕然とした。ついでにレナの間抜けさにも。


(ありふれた犬の女ならともかく。うさぎの獣人、しかもレナに似たとんでもない美人が狼ばかりのこの館にいたら、絶対に俺の耳にも入るはずだ。

 それなのにメアリ婆さんもゴードンの爺さんも、館にいる人間は誰もそんな話を聞いたことがない。噂がそもそもデマだったか、よほど厳重に管理されている秘密がたまたま漏れたのか……。どちらにせよ、お姉さん探しは難航しそうだな……)


「ラフィールさま?」

「いや、無謀だなと思っただけだ」

「私も……今となっては……そう思います……。勢いでここまで来ちゃったんですけど……」

「本当に、お前を保護したのが俺たちで良かったな。他の男ならもう喰われて、どこかに売り飛ばされていたぞ?」

「はい……」


 レナは身体を震わせて、ただでさえ寄り添っていた身体をさらに強く密着させた。


 レナの部屋で2人きり。ここなら邪魔は入らない。


 脅かすつもりはなかったが、怯える姿が可愛くて、ラフィールはレナを向かい合わせて抱きしめた。首筋に顔を埋めると一段と発情香が近くなる。


「レナ。どうして身体が熱いか教えてやろうか?」


 ラフィールは悪戯っぽく耳元で囁いた。吐息をわざと吹き掛けて。

ラフィ「レナ、そこに座れ」

レナ「何ですか? ラフィールさま(╹◡╹)」

ラフィ「残念だが説教だ。お前な、持病()()を忘れるなよ。他の奴にもうさぎだってバレるぞ? ついでに俺が気づいていることにも早く気づけ」

レナ「はい……(しょんぼり)」 キラリ☆

ラフィ「……俺が贈った指輪、はめているんだな」

レナ「あΣ(゜Д゜〃) 1人のときにだけ、こっそりはめていたのに……。外すの、忘れちゃった……」


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