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発情中のうさぎメイドは狼騎士に食べられちゃう?!  作者: つきのくみん
第2章 恋する気持ちを通わせて
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26 未来のない恋はしたくない

 領主の館で働く年若い女たちにとって、中央棟及び西棟は出会いのチャンスに溢れている。挨拶から始まる恋もあるし、食堂で給仕をすれば自然と親しくなることもあるだろう。


 けれどレナはそんなことにうつつ抜かしている場合ではないと、責任感に顔をキリリと引き締めた。


「いえ、私は仕事に集中いたします。ラフィール隊長にお会いしたい気持ちはありますが、それよりも今は少しでも早く、一人前のメイドになりたいんです」


 これにはメアリ婆さんもぐっときた。興奮ぎみにレナの華奢な肩をつかんで揺らす。


「アンタ、若いのになかなか見所があるよ! いや、さすが堅物のラフィールが連れてきた子だね。うんうん、アタシだって人様の幸せを邪魔したい訳じゃないさ。アンタたちの恋もちゃんと応援するからね!」

「アンタたちの恋? 私と……誰のですか?」

「またまたっ。とぼけるんじゃないよ! 結構良い雰囲気だったじゃないか。ラフィールのこと、まんざらでもないんだろ?」


 レナはキョトンとしている。その様子を見たメアリ婆さんは、認識の差に気がついた。


「……つかぬことを聞くけどね。レナはラフィールとどうこうなりたいとかいう希望はないのかい?」

「えっと……?」


 メアリ婆さんはもどかしくて仕方ない。お節介の本領が爆発する。


「恋人になりたいとか、そういう気持ちがあるのか聞いてるんだよ!」


 明け透けに言われ、レナの顔が一気に紅潮した。


「そ、そんな、まさか、とんでもないですっ」


 そうして一気に我に返る。


 うさぎのレナと狼のラフィール。

 越えられない種族の壁に、偽りの姿をとっていることへの罪悪感。


 ラフィールと自分が恋仲になるなんて、想像さえもできなかった。


 彼のことは信頼できると思っている。けれども里全体の問題に関わるため、うさぎの獣人であることは明かせない。

 母親の悲劇は彼女の心にトラウマを残していたし、徹底的に教え込まれ、長年にわたり醸成じょうせいされてきた肉食の獣人に対する恐怖心は、一朝一夕いっちょういっせきで消えるものではない。


(もしラフィール隊長のことを、本気で好きになってしまったら……)


 未来のない恋はしたくない。

 レナは首を緩く振った。今ならまだ諦められる。


 メアリ婆さんのお節介は、動き出していたレナの恋心を急速に停止させた。花を咲かせるときを待っていた淡い気持ちは、育てられることなく日陰にポツリと移された。


「私がラフィール隊長と、そういう仲になることはないと思います。絶対に……絶対に……ありえません……」


 みずからに言い聞かせたレナは、未来から目をそらすようにそっと顔を伏せた。メアリ婆さんはやれやれとでも言いたげに、大きく溜め息をついた。


「何やら事情がありそうだね。まぁ、アンタたちはまだ若いんだから、焦ることなんてないさ」

「はい」 


 それからレナは姉カタリナのことについて相談した。当然のように、うさぎの獣人であることは伝えない。

 

「カタリナって名前のアンタに似た子? うーん……見たこともないし、聞いたこともないね。いたら目立つと思うんだけど。

 どちらにせよ、私もラフィールが知らないってことは、この館の使用人ではなさそうだね。出入りしている業者か客人か。ここには大勢の方がみえるから、さすがに全員は私も把握していないし」

「そう、ですか……」


 しょんぼりとしたレナを見て、メアリ婆さんは努めて明るい声を出した。


「これからは私も、アンタのお姉さんのことは気にかけておいてやるから、そんなに落ち込むんじゃないよ。さ、診察を受けておいで。後で制服と一緒に医務室に迎えに行ってやるから」

「はい、わかりました」


 ほとんどない荷物を置いて、レナは診察を受けるため、1階にある医務室に向かった。




 * * *




 医務室は東棟の中でも日当たりの悪い場所にあった。病は気からというが、こんな暗い雰囲気だと治るものも治らないんじゃないかと、レナは思いながら歩を進める。


 倉庫になっている部屋の前を通りすぎ、医務室と掲げられた札を確認すると、レナは右手を胸の位置まで持ち上げた。


 コンコンコン


「こんにちはー」


 しばらく待ってみたが、何の応答もない。


 コンコンコン


「入ってもよろしいでしょうかー?」


 耳をすませても扉に耳をくっつけても、何も聞こえてこなかった。


 ノックと声かけを繰り返し、さすがにおかしいと思ったレナは扉のノブに手をかける。


(鍵はかかっていないみたい)


 簡単に回りそうな気配に、レナは改めて息を吸った。少し大きな声を出す。


「あの……レナと申します。メイド頭のメアリ様に言われ、こちらで働かせていただく前に診察を受けることになりました。入ってもよろしいですか?」


 ガチャリ


「失礼します……」


(すごく、散らかっているわ……)


 部屋は薬草と消毒の匂いで満ちていた。散乱した書類と机から離れた場所に残された椅子。

 余程慌てていたのか、何か緊急事態が発生したのか。或いはその両方か。


「先生はいらっしゃいませんか……?」


 静まり返った診察室はひどく不気味だった。人の気配がまるでしない。


(あら? また扉が……)


 意味深に開いている扉は、レナを静かに呼んでいた。


「……先生?」


 おずおずと室内を覗き込む。どうやらこの部屋は調剤室のようだ。


「!」


 やがて目に入った光景に、レナは言葉を失った。


 床に溜まった真っ赤な液体。

 散らばった硝子ガラスの破片と、そこに横たわる痩せぎすの老人。


 この館唯一の医師の無残な姿に、レナは慌てて駆け寄った。

長老「レナはラフィールへの想いに蓋をしてしまったようじゃ。しかし恋は障害があればこそ燃え上がるというぞ! ラフィール様、そうでございましょう?」

ラフィ「ああ、俺は諦めない」

長老「ラフィール様、貴方こそ真の男です! レナをどうぞ嫁にもらってやってください(土下座)」

レナ「長老……なんか……いつもと違いますけど……?」

長老「ワシは狼が怖いんじゃ!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] メアリ婆さんも知らないなんてレナちゃんのお姉さんは、どこに居るんだろう……。 仕事をしっかりやりたいというレナちゃんに、お節介してしまうメアリ婆さん(≧∇≦)キャー メアリ婆さんもレナちゃ…
[良い点] ちょっと最近読めていなかったので、最新話まで一気読みさせていただきました! 相変わらず面白かったです。 お節介が裏目に出たりするのもあるあるですね(笑) 細かな部分の表現が美しいなー、と…
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