表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰キャの日常  作者: 陰キャ代表
season 2 第2章 差し伸べる日常
97/98

三佳月家の日常 partⅡ

第18話 ~お宅訪問Ⅲ~


「もし、彼が家に残っていたらどうなっていたんでしょうね?」

白ワンピースの女性がそう言った。

「何も変わらないわよ」

そう答えたのは白のウエディングドレスのような大きなドレスを纏った女性だった。続けて、

「でも、たしかに興味はあるわ」

「でしょ。だから見てみませんか?」

「みたいけれども、余計なことしなくてもいいんじゃないかしら。彼の選択したことを尊重しない?」

「ただ、見るだけですから!その世界はそれで終わりなんです。彼が家にいるという選択をしただけで、その世界は核でも隕石でも何でも降らせて終わらせればいいんです」

「そう」

白ワンピースの言うことにウェディングドレスはしばらく考えた。

「あなたはどう思う?」

彼女は白スーツに聞いた。

「そのようなことをしても、何も影響は出ないと思われます。手順も簡単ですし」

と言い、そしてまたウェディングドレスは考えた。

だが初めよりは短く、次に言った言葉は、

「見てみましょう」だった。


-----------------------------------------------------------------------------------------------


時刻は4時45分。

三佳月は立ち上がって僕にこういった。

「稜真君、ぼく双子のこども園にお迎えに行かなきゃならないんだけれど一緒に来てくれない?家に1人でいてもあれだろうし」

僕はその誘いに乗るつもりで答えようとしたが、またしても三佳月の妹が邪魔をした。

「いや、家に居てもらいなよ。折角ここまで長い道のりを歩いて来たんだから」

「それは、稜真君は歩かなくてもいいけど、ぼくには歩けと?」

「いつものことじゃない。お客さんに歩かせるなんてよくない!」

「由紀の客じゃないだろ。だから指図するな」

おっと、これはバチバチに燃え上がってきている。

早々に僕の意見を言ったほうが良い気がする。


「僕は三佳月に付いて行くよ」

「そうなの」

「うん。そうすることにするよ」

僕は三佳月の妹にそう言った。

そして、着火寸前の爆弾を阻止することができた。


「じゃあ行こう、稜真君。鞄は置いたままでいいから」

「うん」

「じゃあ由紀、晩御飯の支度頼んだ。そういえば、稜真君は晩御飯食べてく?」

「僕は大丈夫だよ」

「そう。じゃあ先に外で待っててくれる。お迎えの用意するから」

お迎えの用意とは、何かわからないがとりあえず僕は席を立ちが玄関の方へ行き『お邪魔しました』といい外で待つことにした。

それから1分もしないうちにショルダーポーチを持った三佳月が部屋から出てきた。

「じゃあ行こう」

「うん」

また三佳月について行くことになった。

その間、僕は気になったことをいくつか話した。

「妹と仲いいね」

「仲が良かったように見える?喧嘩しかしてないけど」

「僕には兄弟がいないから、羨ましいけど」

「羨ましがられても困るけど」

「近しい年齢の人と一緒に暮らすっていうのが僕にとってはどういうものなのかわからない」

「それはさすがに大げさに考えすぎだよ。別に普通だよ。多分、1人とあまり変わらない」

「それはどうかな?」...

又、僕が一番聞きたかったことも邪魔されずに聞けた。

「そういえば、『ござる道』はどこいった?」

「あぁ、『ござる道』」

彼の声は先ほどの元気を失っていた。

「やっぱり、家族の前では普通のお兄ちゃんでいたいから。変なことで迷惑かけたくないし、それに恥ずかしい」

「2つ質問があるけど聞いてもいいかな?

やっぱり自分自身でも『ござる道』は変ってわかってたんだ。2つ目はなんで恥ずかしいこと学校では恥じずにできるの?むしろ学校のほうがよっぽど恥ずかしいと思うけど。それにそれが迷惑だと思うのなら僕にもそれ布教しなくていいよ」

「どさくさに紛れて、文句を言ったでござるな!布教の何が悪いでござる!信者を増やすことが『ござる道』繁栄の唯一の手段でござるよ!」

三佳月はいつもの倍元気な声で喋った。

「繁栄って。誰もそんな新興宗教団体に興味なんかないと思うけど」

「この世界は広いのでござる。きっとどこかに信者が眠っておられるでござる」

「もうその『ござる道』宗教はこれにて解体で」

「なんででござるかっ!もしや貴様、裏切ったでござるなっ!解せぬでござる!」

「そもそも味方じゃないし。それに、前みたいに普通に喋ってくれる方が気が楽だし、楽しい」

三佳月は少し驚いたように、

「そ、そうでござるか。では一応検討しておくでござる」

 そして僕たちは懐かしの美智香和こども園にやって来た。

ここに通っていたのはもう9年も前のことだ。

今も当時の面影はあり今となっては少し古臭い感じだ。

「懐かしいなぁー」

「稜真君はここに通ってたの?」

「うん、そう。あっ!この壁の落書きまだ残ってる!」

「一緒に中に入る?」

「うん!」

その後、三佳月の双子の姉弟と歩いて来た道を戻り、あのぼろ臭い家に戻ってきた。

その間、やはり三佳月の姉弟も仲が良く手を繋いで『おうた』を歌いながら家に帰っていく。

僕はこの三佳月家のいつもの日常のかけらを見ていて、なんて幸せで楽しい家族なんだろうかと思った。

そして幸せに貧困なんて関係ないとも思った。



時刻は4時45分。

三佳月は立ち上がって僕にこういった。

「稜真君、ぼく双子のこども園にお迎えに行かなきゃならないんだけれど一緒に来てくれない?家に1人でいてもあれだろうし」

僕はその誘いに乗るつもりで答えようとしたが、またしても三佳月の妹が邪魔をした。

「いや、家に居てもらいなよ。折角ここまで長い道のりを歩いて来たんだから」

「それは、稜真君は歩かなくてもいいけど、ぼくには歩けと?」

「いつものことじゃない。お客さんに歩かせるなんてよくない!」

「由紀の客じゃないだろ。だから指図するな」

おっと、これはバチバチに燃え上がってきている。

早々に僕の意見を言ったほうが良い気がする。


「僕は家に残るよ」

一瞬、自分でも何を言っているのか理解できなかった。

「そうなの」

「うん。そうすることにするよ」

僕は三佳月の妹にそう言った。

そして、着火寸前の爆弾を阻止することができた。


「じゃあお兄ちゃんいってらっしゃい」

「う、うん」

三佳月は僕の発言に驚いたのか、少し動揺しながら服の山からショルダーポーチを発掘して出ていった。

何故、僕は家に残ったんだろうか?

自分でも納得できない訳の分からないことが起きたことを考えていたのだが、それよりも憂慮すべきことがあった。

それは、三佳月の妹と二人きりということだ。

なんでこんな気まずい方を選んでしまったのだろうか。

しかし、そんな心配をしていたのは僕だけだったらしく三佳月の妹は台所であの狭いシンクに押し込まれている食器を洗いだした。

無言で。

あの子は何も感じなないのだろか?

ただ座っている時間が体感1時間あったが、沈黙が破られる瞬間が訪れた。

「お兄さんはお兄ちゃんと仲いいんですか?」

食器を洗いながら視線は台所。

まるで独り言のように呟いたその言葉に僕は彼女の方をみて答えた。

「まぁ、そこそこ」

「ふーん。いつから?」

「さぁ?初めはさん付けだったけどいつの間にかこうなっていた」

「『いつ』って聞いてるの」

「わからない。中学に入ってからだとは思う」

「じゃあ知らないんだ」

「何を?」

「お兄ちゃん、小学校でいじめに遭ってたの」

「どういうこと?」

そんな話、一度も聞いたことがない。

「お兄ちゃんが小学3年生の頃、うちの両親の離婚で突然、貧乏になったの。このアパートに引っ越してきてお腹の大きいお母さんと3人で暮らしていたの。その時、お母さんは働けなかったから生活保護を受けて援助してもらったけどまだお金が足りなくて、いろんなものを売って何とかお金をつくって紀奈と努を育てる環境を整えたの。その時、どんなものでも売ったの。売れるものは全て売った。お兄ちゃんはいつの間にか着る服が2着だけになっていた。しかもほぼ肌着同然。それを2日に1回ローテーションしていく。

2日も同じ服を着ているのよ。そりゃ、周りの人たちからいじめられるわよね。それから3年後、なんとか今の落ち着ける状況になったの。貧乏なのに服が多い理由はこういう訳。お母さんがお兄ちゃんに泣きながら謝っていたのをいまだに覚えてる」

僕は何もできなかった。

この話を聞いて、僕はこれから帰って来る三佳月になんて声をかけるのか自分自身わからなかった。

「それって、いまもいじめが続いる?」

「多分、一部では。でもこのことを知らないってことはお兄さんは別の地区の人なんだね。私たちの地区のほうが子供の数が少ないし、小学校6年生のときには家計もあの時よりはマシになっていたから中学校で合併するときにそんないじめも消えているかもしれない」

「そっか。お兄ちゃんは大丈夫なんだよね。無理してない?」

三佳月の言動はただの中二病だと思っていたんだが、もしかしたら何か自己防衛みたいなことで自分を封じ込めて周りから避けさせているんじゃないんだろうか?

「僕にはわからない。今まで見てきた三佳月が全部無理しているのかもしれない。でも僕の見た限りでは、そんなこと1ミリも思わなかった」

僕の口から『ござる道』のことを言っていいのだろうか?

わからない。

三佳月が学校のことを話したがらないのは何故なんだ?

わからない。

何1つ思い浮かばないわけじゃない。

けれど、それらすべてが間違っていると思う。

この答えは三佳月にしかわからない。

 「ただいまー」

考えていると、玄関の方から子供の無邪気な声と共に三佳月の声がした。

「おかえり、お兄ちゃん」

そして、僕は、、、、


-----------------------------------------------------------------------------------------------


「どうしますか?どの終末シナリオで行きますか?核ミサイル、宇宙人侵略、ハルマゲドン?」

白スーツは、誰に向かってでもなくそう言い放った。

「ちょ、ちょっと待って」

ウェディングドレスがそう言う。

「すみません」

白ワンピースが涙目でウェディングドレスに謝っている。

「あなたのせいじゃないわ。私だって見たいって言ったんだから」

「でも、でも、、、、」

ウェディングドレスはまたしばらく考えたのち、

「このままじゃダメかしら」

「ダメではありませんがおススメはしません」

冷徹。

「このままでお願い」

冷酷。



2つの世界線はちょっとわかりにくいですかね?


それでは失礼いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ