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陰キャの日常  作者: 陰キャ代表
season 2 第2章 差し伸べる日常
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三佳月家の日常 partⅠ

第17話 ~お宅訪問Ⅱ~


僕は急いで、先にある黒い車に駆け寄った。

そして車のガラスを『コンコン』とノックした。

宮條さんはそれに気が付いて窓を開けて僕に言った。

「どうかしましたか?なぜ車に乗らないのですか?」

「ちょっと、今日は三佳月の家に遊びに行ってくるので、先に帰っててくれませんか?」

「それは構いませんが、お迎えはどういたしましょうか?」

「えっと、美智川の大樹の前に7時に迎えに来てくれますか」

「わかりました。では7時に」

以外にも呑み込みが早く宮條さんはそう言うと窓を閉めて、車がゆっくりと徐行していき学校の門を抜けると屋敷の方に向かっていった。

それから数秒後に

「待ってくだされ、鈴木殿」

三佳月が遅れてやって来た。

「もう宮條さんは行ってしまったのでござるか?」

「宮條さんは宮條殿じゃないんだ」

「殿は目上の者には使わないのでござる」

寧ろ使うべきだろ。

と思いつつ、「へぇー」と言っておく。

「もう宮條さんには伝えたから行こう」

僕がそう言うと「こっちでござる」と三佳月が言い、僕は三佳月について行った。


三佳月の家までの道中は、普通に学校での休み時間の延長みたいなものだった。

他愛もない会話で盛り上がり、陰キャトークを満喫した。

しかしどれだけ話しても三佳月の言う家には到着しなかった。

そしてようやく、美智川の大樹が見えたあたりから僕は異変に気付いた。

「確かにそうだな」

「そう、今まで僕のご飯を作っていたの名前を知らなかったなんてありえない。あの時は、母さんと話すことを放棄するくらいだった」

「それはすごいな。僕はそんなことにはならないからなー」

そう、どう考えてもおかしい。

今の会話なら『確かにそうでござるな』とか『それはすごいでござる。我はそんなことないでござるからなー』になるのが訳の分からない『ござる道』の鉄則なんじゃないのか?

いつの間に『ござる道』を放棄したんだ?

その後、三佳月とぎこちない会話をすること数分

突然三佳月が、

「ようこそ、我が家へ」

一瞬、『わが』という言葉に反応したが語尾がなかった。

そして三佳月が立ち止まった家を見た。

そこは二階建てのボロアパートと言ったら想像がつくだろうか?

屋根は赤色だがところどころ剝げていて、手すりは錆びついていて、まさに貧乏を具現化した家だった。

「僕の家は103号室だよ」

『だよ』という語尾に驚きながら三佳月の後をついて行く。

103号室はどうやら1階らしく、道路からそのまま左から3番目の部屋の前で三佳月は鞄から鍵を取り出して鍵穴に差し込んだ。

そうして扉の鍵が開くと、手前には台所とおそらく洗面所に繋がっているであろう扉そしてその奥には6帖ほどの洋室といった1人2人くらいが住むのにはまぁまぁな家だった。

「さぁさぁ中に入って」

三佳月が家の中に入る。

「お邪魔します」

僕はそう言って三佳月の後に続く。

玄関はとても狭く靴を置くスペースがあるにはあるが他の靴で埋め尽くされている。

「靴は靴の上にのせておいて」

三佳月がそう言ったので

「いやいや悪いよ」

「いや、そんな高価そうな靴を汚すわけにはいかないから。それに弁償なんてできないから」

「そんなことしないよ」

「それでも置く場所がないからそのうえでいいよ」

これ以上、遠慮して時間を潰すのももったいないのでお言葉に甘えた。


入ってすぐの台所の小さいシンクには食器が散乱していた。

そしてそのまま進み、6帖の部屋には床の半分以上が敷布団で埋め尽くされ、今となってはあまり見かけないちゃぶ台がその布団の上に置かれていた。残りの半分は小さいテレビと服の山そこには子供サイズから大人サイズまで様々。

「何人で住んでるの?」

僕はふと疑問に思ったので聞いた。

「5人で住んでるよ」

「へぇー」

正直、驚いた。

ほぼ一人暮らし用の家に5人しかも年頃の中学生もいるというのに。

でも、僕はそれにどう反応するか困った。

取り敢えず、無機質に『へぇー』とは言ったものの、驚くように反応するべきなのか、ちょっと引く感じで反応すべきなのか。

どちらも五分五分なのだ。驚き半分。引き半分。

「母と妹と双子の姉弟で妹の由紀は小6で双子の紀奈と努は5歳」

「そうなんだ」

「そうだよ」

「みんなで一緒にこの敷布団の上で寝てるの?」

「そうだよ。みんなで州の字なって寝てるよ。って州じゃ一画たりないなー」

僕は聞いていいのかわからなかったが、スルーするわけにもいかず。

「お父さんは?」

「父は紀奈と努が生まれる前に離婚したんだ」

三佳月は少し視線が下がった。

「僕と同じ仲間だね」

「そういわれるとそうだね」

そしてもう一つ、僕は聞いていいのかわからなかったが、スルーするわけにもいかず。

「ど、、、」

「あっ、何か飲む?と言っても水道水くらいしかないけど」

「うん、お願い」

話すタイミングが三佳月のほうが早く僕の言葉は段々とフェードアウトしていった、そして言えなかった。

ちゃぶ台の上に水の入ったキャラクターのコップが1つ置かれた。

「ありがとう」

僕はそう言い、敷布団の上に座り、水を飲む。

「あっ、鞄は適当に置いてて」

「わかった」

僕は適当に鞄を置いた。

「そう、それで、、、、」

『ガチャ』

「ただいまー」

「あっ、帰ってきた」

また、遮られてしまった。

そして玄関の方から女の子の声が聞こえた。

おそらく三佳月の妹なのだろう。

そして玄関からの足音は次第に大きくなっていきその正体が明らかになる。

平均的な身長に色褪せた赤のランドセルそして黄色い帽子。

そして三佳月の妹と目が合った。

僕は立ち上がって「お邪魔してます」という。

そして三佳月の妹は僕を無視して

「お兄ちゃんこの人だれ?」

「お兄ちゃんの友達だよ」

「えっ、お兄ちゃんに友達なんていたの?」

「なんだよそれ」

「だってお兄ちゃん学校のこと何にも話さないじゃん」etc...

僕は蚊帳の外でありその間にゆっくりと座り、二人の会話を見守っていた。

「はじめまして、妹の由紀です」

なんだか不服そうな眼差しで三佳月の妹はあいさつする。

「どうも、三佳月の友達の鈴木です」

これは三佳月に『ちゃんとあいさつしろ』と言われたからなのか僕を嫌っているからこうなのだろうか。

その後、あいさつから数秒後三佳月の妹が思い出したかのように言った。

「お兄ちゃん、今日お迎えの当番だよ」

「あぁそうだった。すっかり忘れてた」

時刻は午後4時45分。

西日が窓から差し込み眩しかった。



10月に投稿してかれこれ8月。

約10カ月間もの間投稿していなかったんですね。

正直、実感0です。

前回の投稿が昨日のように思えるというわけではなく、

寧ろ、まだ8ヵ月しか経っていないと思ってしまうのは何故なんでしょうか?


そんな訳で、次回の投稿がいつになるかわからないので、気長にお待ちください。

あと5秒後かもしれないし5年後かもしれません。

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