2人の非日常 part I
第14話 ~家庭内問題 I ~
神楽坂 桜喜から想像画を受け取った日。
屋敷に帰ると1日中休みだった母親がなんと久しぶりに夕食を作っている。
と宮條さんに聞かされた。
そう、あのシェフ卯月さんが作る料理ではなく母親が作る久しぶりの料理。
“おふくろの味”がするのだろうか?
というか最後に母親の料理を食べたのっていつだっけ?
よく覚えていない。
父親が死んでからは母親は初めは脱力していて何もできずにいた。
母方の祖父母が母親の代わりに色々と手続きや食事を作ってくれた。
因みに父方の祖父母は僕が幼い頃に亡くなっている。
だから最後に母親の作った料理は父親が生きていたに食べたきりだろう。
そんな母親が今日、父親が死んで初めての料理をしており僕は何を作るのかワクワクしていたと同時に少し悲しかった。
宿題や自主やお風呂を済ませある物を持った後、食堂へ行くとスーツ姿ではない私服の母親が料理を机に運んで来た。
僕は大きな机に座る。
そして僕と母親は対になるように座った。相手との距離は約2m (ソーシャルディスタンス並みに)離れている。
宮條さんは僕の隣に座る。
距離は40cmくらい。
「今日はもっと距離を縮めましょ。」
母親がそう言い母親が宮條さんと対になるように座り僕はお誕生日席に追いやられて(三密のようになって)しまったが気にせずに料理を見る。
料理は『豚肉の生姜焼き』、味噌汁とご飯。
––––––– 生姜の辛みが程よく、絶妙で辛すぎず薄すぎず、ちょうどいい生姜の味に、玉ねぎ、キャベツを軽く炒めたものは、シャキシャキとして、焼いているのに新鮮で美味しい。そして豚が、生姜の香ばしい香りが豚肉に染み付き、豚肉に浸していたアゴ出汁が噛むごとに溢れ出し、これが1番美味しい–––––––
フラッシュバック。
父親のいたあの家、あの光景。
僕は母親の表情を窺う。
暗くもなく、明るくもなく、無表情の母親の表情は宮條さんも少し動揺するくらいに不気味だった。
ただ料理を見つめ溜息をしていた。
それが1分続き、誰も何も言わなかったが我に帰った母親が手を合わせる。
「さぁ、稜駿も宮條も手を合わせて。」
僕と宮條さんは言われるがままに手を合わせる。
母親がそれを確認すると、
「いただきます。」
後に僕と宮條さんも続く。
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闇夜。何時かもわからない時間帯。
「ねぇ、これ何?」
ママがそう言った。
そして書類と何枚かの写真が机の上にばら撒かれた。
パパは動揺しながら
「お、俺じゃない。」
ママはパパが持っていた缶ビールを振り落としそれが床に落ちてジワジワと床にビールが広がっていく。
ママもパパもそれを拭こうとしない。
パパはママの目を見つめて、ママは目を逸らす。
「確かに俺のしたことは悪いことだ。弁解の余地がない。」
「認めるのね。あなたが浮気していたこと。」
「本当にすまない。」
「認めるの?」
パパはコクッと頷く。
「ねぇ、私のお腹には赤ちゃんが2人もいるのよ?」
ママはお腹をさすった。
「わかってる。」
パパは俯いたまま席を立ち、洗面所へ行こうとした時、僕はパパに見つかった。
何故ならリビングと洗面所に繋がる廊下から2人の様子を覗き見していたから見つかってしまった。
そして、パパは背の低い僕のためにしゃがんで僕と目を合わせてこう言った。
「パパみたいになるんじゃないぞ。」
僕はコクッと頷いた後走るようにして寝室に戻った。
昨日投稿出来ずに申し訳ありません。
次回もこの続きです。
それでは読んで頂きありがとうございました。




